0気になる判例平成15年以前

2014.09.14

不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失の損害賠償請求

最判平成12年9月7日判時 1728号29頁は、

不法行為によって扶養者が死亡した場合に、被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害賠償が請求できることを前提に、その賠償額については、「相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と当然に同じ額となるものではなく、個々の事案において、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続する期間などの具体的事情に応じて適正に算定すべきものである。」とした。

通常は、被扶養者は被害者の相続人となるので、被害者の逸失利益を相続するとの構成となろうから、扶養利益の喪失はあまり問題にはならないと思われるが、本件では、被害者には多額の債務があったことから、被扶養者=相続人は、相続放棄をしており、扶養利益の喪失が直接に問題となった。

私は、この構成による請求に経験なかったが、近時の下級審裁判例でもこの構成を前提として、賠償額を論じるものがいくつかあることから、当ブログでも紹介することとした。相続放棄事案のほか、内縁の妻事案などで同様の問題がでてくると思われる。

事案の概要

1  被上告人乙川花子は、乙川太郎と婚姻し、同人との間に、被上告人乙川春子及び同乙川夏子被上告人らは、事件当時、その生活を太郎に依存していたところ、太郎は、●年●月●日に殺害されたが、上告人は、右殺害行為の実行前に、その正犯から依頼を受けて偽装工作をすることを約束し、これにより、右殺害行為を容易にした。
2  太郎は、事件前年には年780万円の収入を得ていたが、他方、約48億円の負債を抱えていた。太郎の相続人である被上告人らは、相続の放棄をした。
3 被上告人らは、上告人に対し、太郎から受けることができた将来の扶養利益の喪失等の損害についてその賠償を求めた。

原判決東京高裁平成10年10月28日判決 平10(ネ)1818号)は、
上告人は太郎の殺害行為の幇助者として不法行為責任を負うとした上で、「太郎が殺害されることがなければ、被上告人らは、太郎の収入の一部を扶養料として享受することができたといえるが、太郎の約48億円にものぼる債務が太郎及びその家族である被上告人らの生活に影響を及ぼしたであろうことも否定できないから、扶養権侵害による損害額の算定の基礎としては、死亡時前年度の年収780万円をそのまま用いるのは相当でなく、賃金センサス平成四年第一巻第一表・産業計・企業規模計・学歴計・男子労働者の平均年収額544万1400円を用いるのが相当である。太郎は、満67歳に達するまでの36年間は就労可能であったものであり、その間は少なくとも右金額程度の収入を得ることができたはずであり、その間の同人の生活費として、同人が世帯主であることを考慮して右収入額の三割を控除し、ライプニッツ方式により中間利息を控除して計算すると、太郎の死亡による逸失利益は、6300万円余となる。そして、被上告人花子は、太郎の妻として、その二分の一の3150万円余について、また、被上告人春子及び同夏子は、太郎の長女及び二女として、右逸失利益の各四分の一の各1575万円余について、それぞれ扶養利益を喪失したものと認めることができる。(数字等は一部省略)」

最高裁判決判旨(原判決破棄差戻)

1  不法行為によって死亡した者の配偶者及び子が右死亡者から扶養を受けていた場合に、加害者は右配偶者等の固有の利益である扶養請求権を侵害したものであるから、右配偶者等は、相続放棄をしたときであっても、加害者に対し、扶養利益の喪失による損害賠償を請求することができるというべきである。しかし、その扶養利益喪失による損害額は、相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と当然に同じ額となるものではなく、個々の事案において、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続する期間などの具体的事情に応じて適正に算定すべきものである。
2  これを本件についてみるに、原審は、太郎の前記債務の負担状況にかんがみ、扶養利益喪失による損害額の算定に当たり、同人の死亡時前年度の年収780万円をそのまま用いることなく、前記賃金センサスによる平均年収額を用いるべきであると判断しているが、太郎の債務負担額が約48億円にも達していることにかんがみると、なおこれを是認することはできない。また、太郎の逸失利益全額をそのまま被上告人らの扶養利益の総額とし、これを被上告人らの相続分と同じ割合で分割して、各人の扶養利益の喪失分とした点、並びに被上告人春子及び同夏子については、特段の事情がない限り、太郎の就労可能期間が終了する前に成長して扶養を要する状態が消滅すると考えられるにもかかわらず、右扶養を要する状態の消滅につき適切に考慮することなく、扶養利益喪失額を認定した点は、前記1に判示した事項を適正に考慮していないといわざるを得ず、扶養利益喪失による損害額の算定につき、法令の解釈適用を誤ったものというべきである。(数字は一部省略)

2007.10.13

債権譲受・回収と弁護士法及びサービサー法

弁護士法72条は、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」とし、同法73条は、「何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によって、その権利の実行をすることを業とすることができない。」として、債権回収の委託を弁護士・弁護士法人以外の者についてはこれを禁じ、また、債権を譲り受けて行使することを業として行うことを禁じている。
また、債権管理回収業に関する特別措置法は、同法2条1項に定める特定金銭債権については、「法務大臣の許可を受けた株式会社」に限って、「弁護士又は弁護士法人以外の者が委託を受けて法律事件に関する法律事務である特定金銭債権の管理及び回収を行う営業又は他人から譲り受けて訴訟、調停、和解その他の手段によって特定金銭債権の管理及び回収を行う営業」(同法2条2項)を行うことができるものとして、そして、同法3条は、「債権管理回収業は、法務大臣の許可を受けた株式会社でなければ、営むことができない。」弁護士法72条、73条の例外を定めるとともに、特定金銭債権の管理回収業について弁護士または弁護士法人以外は、法務大臣の許可を受けた債権管理回収業者(サービサー)に独占させている。
ところで、債権譲渡を受けて、これを行使するとの例は、従来からあり、その場合と弁護士法73条や債権管理回収業に関する特別措置法3条に違反しないかが問題となる。

この点について、最高裁判所は、特定金銭債権以外の例(ゴルフ場運営会社に対する預託金返還請求権の例、債権管理回収業に関する特別措置法の適用ない事例)について、下記のように述べて、弁護士法73条の適用についての限定解釈を示した。

最判平成14年1月22日民集56巻1号123頁 判時1775号46頁

「弁護士法73条の趣旨は,主として弁護士でない者が,権利の譲渡を受けることによって,みだりに訴訟を誘発したり,紛議を助長したりするほか,同法72条本文の禁止を潜脱する行為をして,国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずることを防止するところにあるものと解される。このような立法趣旨に照らすと,形式的には,他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為であっても,上記の弊害が生ずるおそれがなく,社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合には,同法73条に違反するものではないと解するのが相当である。」
「ゴルフ会員権の売買には,ゴルフ会員権市場ともいうべき市場が存在し,その市場において多数の会員権の売買が日常的に行われていることは公知の事実である。そして,ゴルフ会員権の売買等を業とする者が,業として,上記市場から,会員権取引における通常の方法と価格で会員権を購入した上,ゴルフ場経営会社に対して社会通念上相当な方法で預託金の返還を求めたものであれば、・・・利益を得る目的で会員権を購入していたとしても,上記の見地から同条に違反するものではないと解される場合もあるというべきである。」

また、特定金銭債権については、下級審の判決例ではあるが、
東京地決平成16年11月12日季刊サービサー8号8頁は、特定目的会社(SPC)が特定金銭債権である貸金債権を譲りうけた後、債務者に対して、破産申立(債権者申立)をした事案について「債権管理回収業に関する特別措置法3条は、債権管理回収業は、法務大臣の許可を受けた株式会社でなければ、営むことができない旨規定しているが、同法は、金融機関等の有する貸付債権等(特定債権)の処理が緊喫の課題となっている状況にかんがみ、許可制度を実施することにより弁護士法の特例として債権回収会社が業として特定金銭債権の管理および回収を行うことができるようにするとともに、債権回収会社について必要な規制を行うことによりその業務の適性な運営の確保を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的として定められた法律であるところ(同法1条参照)、弁護士法73条は、弁護士でない者が、権利の譲渡を受けることによって、みだりに訴訟を誘発したり、紛議を助長したりするほか、同法72条本文の禁止を潜脱する行為をして、国民の法律生活上の利益に弊害生ずることを防止する趣旨の規定であるが、形式的には、他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為であっても、譲受人の業務内容、当該権利の譲受けの方法・態様、権利実行の方法・態様等の事情からして上記弊害が生じるおそれがなく、社会経済的に正当な職務の範囲内にあると認められる場合には、同法73条に違反するものではないと解されるから、このような場合には、債権管理回収業に関する特別措置法3条の趣旨にも反しないと解される。」とした。


2007.10.09

内縁関係と被害者側の過失

本年 被害者側の過失に関する新判例が出ているので、紹介する。

「被害者側の過失論」は、古典的には、過失相殺能力のない幼児等が被害者の損害賠償請求案件において、幼児に対する監督義務者の過失(例 目を離した。手をつないでいなかった等。)を被害者側の過失として過失相殺するための技法として論じられていたところと思う(最判昭和34年11月26日民集 13巻12号1573頁参照)。
判例理論は、幼児等に留まらず、「被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にある者の過失、すなわちいわゆる被害者側の過失をも包含するものと解される。」として、身分上、生活関係上、一体をなすとみられる関係にある者の過失をも被害者側の過失として過失相殺を認め、夫婦で同乗中の運転者夫の過失を、相手方と被害者妻との関係で、被害者側の過失として、過失相殺の対象とした(最判昭和51年3月25日民集 30巻2号160頁参照)。
これに対し、「自動車同士の衝突事故による損害賠償額を算定するに当たり、被害者と恋愛関係にある被害自動車運転者の過失を被害者側の過失として斟酌することは、許されないとしていた(最判平成9年9月9日判時 1618号63頁)。
また、職場の同僚の運転について、被害者側の過失とみることについては、これも否定した例がある(最判昭和56年 2月17日判時 996号65頁)。


最判平成19年4月24日判タ1240号118頁は、内縁関係の場合について、被害者側の過失論を適用した。すなわち、「内縁の夫の運転する自動者に同乗中に、第三者の運転する自動車との衝突により、傷害を負った内縁の妻が、第三者に対して損害賠償請求をする場合に、その賠償額を定めるに当たり、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる。」としたものである。

2007.10.07

有責配偶者からの離婚請求

有責配偶者からの離婚請求
① 旧判例 有責配偶者からの離婚請求を認めず。
② 判例変更
最判昭和62年9月2日民集41巻6号1423頁
有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によつて精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできない。
有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦が36年間別居し、その間に未成熟子がいないときには、相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、認容すべきである。
最判平成16年11月18日判時1881号90頁
有責配偶者である夫からの離婚請求において、夫婦の別居期間が、事実審の口頭弁論終結時に至るまで約2年4か月であり、双方の年齢や約6年7月という同居期間との対比において相当の長期間に及んでいるとはいえないこと、夫婦間には7歳の未成熟の子が存在すること、妻が、子宮内膜症にり患しているため就職して収入を得ることが困難であり、離婚により精神的・経済的に苛酷な状況に置かれることが想定されることなど判示の事情の下では、上記離婚請求は、信義誠実の原則に反するものといわざるを得ず、これを認容することができない。

2007.10.06

不動産の値下げ販売をした場合の販売者の責任

売主の説明義務違反により慰謝料請求権を認めた例補充

不動産の値下げ販売をした場合の販売者の責任について、これを認める判決はあまり見当たらないといってよい。これに対し、先に紹介済みの最判平成16年11月18日民集58巻8号2225頁 判時1883号62頁は、慰謝料のみとはいえ、これを認めた点で、画期的ともいえる。
そこで、以下、値下げ販売との観点で、判例を整理してみた。

不動産の値引き販売の販売者の責任の法的根拠
① 値引をしない合意を否定した例
・ 大阪地決平成5年4月21日判時1492号118頁販売業者の担当者に、「値下げなど、資産価値を下げるようなことは絶対にしない。」等の言辞があったことは認められるが、それは、当時の地価の異常な高騰を背景とし、顧客に対する売買契約の誘引として、楽天的な価格動向の見通しを述べた単なるセールス・トークであり、販売業者において、将来の不動産市況の変動の有無にかかわらず、顧客との売買単価を下回る価格では他の区画 を分譲しないとの一方的な不作為義務を負担する旨の意思表示とみるには余りにも内容が曖昧であり、このような合意が成立したものと解することは到底できない。
・ 東京地判平成8年2月5日判タ907号18頁
販売業者の営業担当従業員の「値下げしない。」との発言などの言動は、いずれも、個々の顧客らとの間で、不動産市況の変化により不動産価格が下落したとしても、販売業者の当初設定価格を下回る価格で他の戸を分譲しないという不作為義務を販売業者が一方的に負担する旨の意思表示をしているものとみるにはあいまいすぎる言動というほかなく、これらをもって、売買契約締結に当たり、値引き販売をしないという合意、又は、値引き販売をした場合にはXらに損失を補償するという合意が成立したとは認められない。

② 信義則による余波効を否定した例
・ 大阪地決平成5年4月21日判時1492号118頁分譲住宅の売買契約の余後効は、この契約の信義則上の義務と観念されるが、これをわが民法においても承認するとしても、その価格が市況により変動することが予定されている市場性のある商品の売買契約において、その余後効的義務の内容として、当該商品の売買契約締結後(契約終了後)に、他の同種同等の商品をそれ以下の代金で売買することにより、間接的にその財産的価値を減少させることのないようにすべき義務まで包含するものと解することは到底できない。

・ 東京地判平成8年2月5日判タ907号18頁
一般に、不動産の価格は、需要と供給の関係で決まるものであり、不動産市況によって価格が変動することは自明の理ともいうべきことであるから、マンションの販売業者に、売買契約締結後に不動産市況の下落があってもなお当該販売価格を下落させてはならないという信義則上の義務があるとは認められない。

③ 値下げする可能性についての説明義務違反否定例
・ 大阪地判平成10年3月19日判時1657号85頁宅建業者である被告らにおいて、宅地建物取引業法に規定する重要事項の説明義務を負うものであることはいうまでもないことであるが、それ以上に不動産売買契約において売主側に信義則上の保護義務というものが観念されるとしても、不動産の価格が近い将来急激に下落することが確実で、そのことを専門の不動産業者である売主側のみが認識し、現に大幅な値下げ販売を予定しているのに、買主側には右事実を一切説明しないか、あるいはことさらに虚偽の事実を申し向けて不動産を高値で販売したというような事情があるのであればともかく、このような事情がないのに、売主において売買契約締結以後の地価の動向や将来の値下げ販売の可能性等につき、当然に買主に説明すべき法的義務があるとは考えられず(不動産の価格が需要と供給の関係や経済情勢等により変動するものであるだけに尚更である。)、右説明をなさなかったとしても、説明義務違反等の責任を負うものとは解し難い。

最判平成16年11月18日民集58巻8号2225頁 判時1883号62頁の事例の特徴
賃貸マンションの建替計画にあたり、賃借人らに賃借権を消滅させ、「優先購入条項」(書面あり)つき売買契約により売買した。
  ↓
 現実には、一般公募を当面せず。
  ↓
 一般公募の際には、大幅値下げ。
  ↓
 慰謝料請求のみ認める。
 

2007.10.03

サブリース契約と借地借家法32条

借地借家法32条1項は、
「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」
とする。この規定によれば、仮に賃料増額に関する合意があらかじめあったとしても、当該賃料についての増減請求権は失われないことになる。
いわゆるサブリースの契約では、 賃借人は、賃貸人よりも不動産や金融に精通しており、賃貸人も不動産の賃貸業を営むというよりも、投資の一形態として、銀行から融資を受けるなどして土地上に建物を建て、これを賃借人に賃貸し、賃料から金利や租税・諸費用を控除した額を利回りとして受け取るという投資的な側面が強く、この関係に借地借家法32条を適用させることには、疑問もあるところである。

これに対し、最高裁判所は、次のとおり、サブリース事案といえども、借地借家法32条の適用があるものとして、賃料自動増額条項がある場合でも、賃料の減額請求ができるものとした。


最判平成15年10月21日民集57巻9号1213頁 判時1844号37頁不動産賃貸業等を営む甲が、乙が建築した建物で転貸事業を行うため、乙との間であらかじめ賃料額、その改定等についての協議を調え、その結果に基づき、乙からその建物を一括して賃料自動増額特約等の約定の下に賃借することを内容とする契約(いわゆるサブリース契約)についても、借地借家法32条1項の規定が適用されるとした。

2007.10.01

超過利息と貸金業法

利息制限法の制限利息を超過する利息について、その元本充当の可否をめぐり、同法制定以来、判例の進化発展がみられた。
近時は、貸金業法によるみなし弁済規定と、利息制限法超出資法未満の高金利(いわゆるグレーゾーン金利)を合意した場合における、元本充当が主要な争点となってきていた。
この点に関し、下記⑤にみるような、画期的な最高裁判所判決があり、これをうけて、貸金業法は改正されて、グレーゾーン金利は撤廃されることとなった。そこで、貸金業法改正に至るまでの、利息制限法の制限利息に反する金利での貸付について、判例・法律の考え方を以下概観する。

①旧判例(後に②で変更される。)
超過利息を残存元本へ充当することは結果においてその返還を受けたと同一の経済的利益を生ずることになるから、利息制限法1条2項、4条2項に照らして許されない(最判昭和37年6月13日民集16巻7号1340頁)。

②判例変更
制限超過の利息、損害金は、利息制限法1条1項、4条1項により無効とされ、その部分の債務は存在しないのであるから、その部分に対する支払は弁済の効力を生じず、債務者が利息、損害金と指定して支払っても、制限超過部分に対する指定は無意味であり、結局制限超過部分は、元本が存在するときは、民法491条によりこれに充当される(最判昭和39年11月18日民集18巻9号1868頁)。

③元本充当の結果過払が生じた場合の処理
利息制限法1条2項、4条2項の規定は元本債権の存在することを当然の前提とするものであり、元本債権が既に弁済によって消滅した場合には、もはや利息、損害金の超過支払ということはあり得ないから、計算上元本が完済となった後に支払われた金額は、債権者の不当利得となる(最判昭43年11月13日民集22巻12号2526頁、最判昭和44年11月25日民集23巻11号2137頁)。

④みなし弁済
  貸金業法43条1項により、利息制限法の制限利率を超過して無効となる弁済であっても、同法17条書面(契約書面)と18条書面(受取書)の交付がなされ、任意になした弁済については、例外的に有効とした。

⑤ 期限の利益喪失条項とみなし弁済
最判平成18年1月13日民集60巻1号1頁 判時1926号17頁ⅰ 貸金業法18条1項により貸金業者が弁済を受けたときに交付すべき書面の記載事項についての内閣府令(貸金業法施行規則15条2項)は、法の委任の範囲を逸脱しており、無効である。
ⅱ 債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときに、当然に期限の利益を失する旨の約定は、利息制限法1条1項の趣旨に反し、無効である。
ⅲ ⅱの約定の下でなされた制限超過部分の支払は、特段の事情がない限り、任意性がない。


⑥貸金業法の改正によるグレーゾーン金利の廃止へ(平成18年12月)。
具体的には、
ⅰ みなし弁済制度の廃止(施行から2年半以内)
ⅱ利息制限法所定の制限利率(15%~20%)と出資法所定の上限利率(20%)の間の金利での貸付けについては、行政処分の対象とする。
ⅲ 日賦貸金業者及び電話担保金融の特例の廃止
など。
金融庁のサイトに改正の概要が掲載されている。


⑦超過利息分の元本充当による不当利得返還請求と悪意の受益者
最判平成19年2月13日判時1926号67頁)貸金業者に対する過払金返還請求の事案で、商行為である貸付に係る債務の弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において、悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は、民法所定の年5分と解するのが相当であるとされた。

2007.09.22

抵当権に基づく妨害排除請求

不動産に抵当権設定がなされた後、抵当権設定者(不動産の所有者)が、当該不動産を他人に賃貸借などして、占有させる場合がある。このような場合、かつては、抵当権詐害目的の詐害的な短期賃貸借については、これを解除請求することで、競売後に短期賃貸借として保護されないこととし、その後短期賃貸借保護制度を廃した現行法では、賃貸借期間の長短に拘らず、対抗関係により引渡命令等により、明渡を請求することができる。また、しかしながら、抵当不動産の占有自体が、抵当物件の評価を下げ、競売による換価自体が阻害されるような場合に、抵当権自体による賃借人等の占有の排除ができるかについては、論点が残っていた。

1 旧判例の立場
  妨害排除請求 不可
● 抵当権者は、民法395条但書の規定により解除された短期賃貸借ないしこれを基礎とする転貸借に基づき抵当不動産を占有する者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として又は抵当権設定者の所有物返還請求権の代位行使として、その明渡しを求めることはできない(最判平成3年3月22日民集45巻3号268頁)。 なお傍論で抵当権自体に基づく妨害排除請求も認める。
 
2 判例変更
  代位行使認める。
  ● 第三者が抵当不動産を不法占有することにより、競売手続の進行が害され適正な価額よりも売却価額が下落するおそれがあるなど、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済請求権の行使が困難となるような状態があるときは、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対して有する右状態を是正し抵当不動産を適切に維持又は保存するよう求める請求権を保全するため、所有者の不法占有者に対する妨害排除請求権を代位行使することができる (最判平成11年11月24日民集第53巻8号1899頁)。

3 判例発展
直接請求認める(最判平成17年3月10日民集50巻2号356頁 判時1893号24頁)。
①占有権の設定に抵当権妨害目的が認められ
②その占有により、抵当不動産の交換価値の実現が妨げられ抵当権者の優先弁済権の行使が困難となる
場合に、占有が不動産所有者との関係で、適法である場合であっても、妨害排除請求としての占有状態の排除を認め、抵当権者が直接自己に対する抵当不動産の明渡請求をすることを認めた。但し、抵当権者は賃料相当の損害を被るものではないとして、損害賠償請求は否定した。

4 民事執行法による保全処分との関係
  なお、民事執行法にもとづく保全処分においては、従来から、このような場合の占有排除を認めていた。3の判例は、これを本訴において認めた点に意義がある。

2007.09.18

取得時効と登記の判例

取得時効と登記に関しては、
「時効完成後の第三者に対しては、時効取得者は、登記なくして対抗できない」とするのが、判例の原則であった。
また「時効完成前の第三者との関係は、当事者関係なので、時効取得はこの第三者に主張できる。」
そして、「時効の起算点を動かすことはできない。」
「但し、時効完成後の第三者が登記手続を経た時点から、再度時効期間が経過した場合は、占有者は新たな時効取得を主張できる。」等の判例原則もある。

下記 1は、再度の時効取得に関する、2は、時効完成後の第三者が背信的悪意者である場合に関する最近の判例。
司法試験等の勉強の際の定番論点に関する最近の判例であることから紹介。

1 最判平成15年10月31日判時1846号7頁
取得時効の援用により不動産の所有権を取得してその旨の登記を有する者は、当該取得時効の完成後に設定された抵当権に対抗するため、その設定登記時を起算点とする再度の取得時効の完成を主張し、援用をすることはできないとされた例

2 最判平成18年1月17日民集60巻1号27頁 判時1925号3頁
① 実体上、物権変動があった事実を知る者において、同物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって、このような背信的悪意者は、民法177条に言う第三者には当たらない(従来の判例理論のとおり)。
② 甲が時効取得した不動産について、その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権の移転登記を了した場合において、乙が、当該不動産の譲渡を受けた時点において、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存するときは、乙は背信的悪意者にあたる。
とされた例

2007.09.17

借地権売買における瑕疵担保責任

近時、借地権売買において、土地の瑕疵を売主である旧借地人が負担するべきかが争点となる事案があった。

借地権売買といえども、有償取引であり、有償契約の総則的意味のある民法の売買の規定の適用もあり、瑕疵担保責任の規定(民法570条)が適用あるとの主張も時折みられるところである。

しかしながら、この点について、判例(最高平成3年4月2日判時1386号91頁)は、次のように述べて、借地権の売主の土地の瑕疵担保責任を否定した。

「建物とその敷地の賃借権とが売買の目的物とされた場合において、右敷地についてその賃貸人において修繕義務を負担すべき欠陥が右売買契約当時に存したことが後に判明したとしても、右売買の目的物に隠れた瑕疵があるということはできない。」

「けだし、右の場合において、建物と共に売買の目的とされたものは、建物の敷地そのものではなく、その賃借権であるところ、敷地の面積の不足、敷地に関する法的規制又は賃貸借契約における使用方法の制限等の客観的事由によって賃借権が制約を受けて売買の目的を達することができないときは、建物と共に売買の目的とされた賃借権に瑕疵があると解する余地があるとしても、賃借権の修繕義務の履行により補完されるべき敷地の欠陥については、賃貸人に対してその修繕を請求すべきであって、右敷地の欠陥をもって、賃借権の欠陥ということはできないから、買主が、売買によて取得した賃借人たる地位に基づいて、賃貸人に対し、右修繕義務の履行を請求し、あるいは賃貸借の目的物に隠れた瑕疵があるとして瑕疵担保責任を追求することは格別、売買の目的物に瑕疵があるということはできないのである。」

「なお、右の理は、債権の売買において、債務の履行を最終的に担保する債務者の資力の欠如が債権の瑕疵に当たらず、売主が当然に債務の履行について担保責任を負担するものではないこと(民法569条参照)との対比からしても明らかである。」

すなわち、借地権売買の場合における土地の瑕疵・欠陥については、賃貸人が修繕義務または担保責任を負い、借地権の売主は土地については物の瑕疵についての担保責任を負わないとしている。
これに対して、土地の数量不足その他の借地権の権利自体の瑕疵の場合に借地権売主が担保責任を負うのは当然と考えられる。
まとめると
物の瑕疵    賃貸人が負担
権利の瑕疵   借地権売主が負担
が原則と考えるべきか。

2017年3月
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