1気になる判例平成16年

2007.10.17

営業譲渡・事業譲渡と譲渡人の債務の引受

商法17条1項(旧商法26条1項)は、「営業を譲り受けた商人(以下この章において「譲受人」という。)が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う。」と規定しており、商号続用の場合、譲渡人の営業による債務を譲受人が引き受けることを原則としている。これに対し、商号の続用がない場合、債務の承継の有無は、譲渡人と譲受人との間の営業譲渡の契約により定められる。
そこで、商人の商号自体は続用せず、債務は承継しないものとして営業譲渡が行われた場合(このような例は多いと思われる。)、しかし、営業実体は、譲渡人と譲受人でほとんど変わらない場合に、債権者としては、譲受人が債務を引き受けているとの主張をすることが多いであろう。このような主張が認められるかについて、商法17条(旧商法26条)の類推適用の可否との観点で、最判平成16年 2月20日 民集 58巻2号367頁 判時 1855号141頁は、預託金会員制ゴルフクラブの例について、以下のとおり述べて、商法17条1項(旧商法26条1項)の類推適用があるものとした。
「預託金会員制のゴルフクラブの名称がゴルフ場の営業主体を表示するものとして用いられている場合において、ゴルフ場の営業の譲渡がされ、譲渡人が用いていたゴルフクラブの名称を譲受人が継続して使用しているときには、譲受人が譲受後遅滞なく当該ゴルフクラブの会員によるゴルフ場施設の優先的利用を拒否したなどの特段の事情がない限り、会員において、同一の営業主体による営業が継続しているものと信じたり、営業主体の変更があったけれども譲受人により譲渡人の債務の引受けがされたと信じたりすることは、無理からぬものというべきである。したがって、譲受人は、上記特段の事情がない限り、商法26条1項(註 旧商法。新法18条1項に相当。)の類推適用により、会員が譲渡人に交付した預託金の返還義務を負うものと解するのが相当である。」

(追記)2007.10.18
ところで、会社法制定により、会社の場合は、商号の続用は想定できないであろうとして、会社以外の商人における場合と区別して、営業譲渡との用語をやめ、事業譲渡と称することなっている(会社法467条以下)。上記の判例は、会社法制定前のものであるが、会社法制定後の事業譲渡の場合であっても、判例の法理はかわらず、商法17条1項の類推適用はありうると解するので、この点を追記し、表題を「営業譲渡と譲渡人の債務の引受」から「営業譲渡・事業譲渡と譲渡人の債務の引受」に訂正した。

2007.10.15

遺産分割がなされるまでの相続不動産と相続債権の性質

被相続人が相続開始の時において有した不動産を相続人の一人が単独名義に相続登記をし、被相続人の死亡後に相続人の一人が解約し、払戻しを受けた預貯金について、他の相続人が相続分に応じて被相続人の相続財産を相続していると主張して、不動産につき相続分に応じた持分の移転登記手続を求めるとともに、預貯金につき相続分に相当する金額の不当利得の返還を求めた事案について、
 最判平成16年4月20日家月56巻10号48頁 判時1859号61頁は、
「相続開始後、遺産分割が実施されるまでの間は、共同相続された不動産は共同相続人全員の共有に属し、各相続人は当該不動産につき共有持分を持つことになる。したがって、共同相続された不動産について共有者の1人が単独所有の登記名義を有しているときは、他の共同相続人は、その者に対し、共有持分権に基づく妨害排除請求として、自己の持分についての一部抹消等の登記手続を求めることができるものと解すべきである(最高裁昭和35年(オ)第1197号同38年2月22日第二小法廷判決・民集17巻1号235頁、最高裁昭和48年(オ)第854号同53年12月20日大法廷判決・民集32巻9号1674頁参照)。
 また、相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと解される。したがって、共同相続人の1人が、相続財産中の可分債権につき、法律上の権限なく自己の債権となった分以外の債権を行使した場合には、当該権利行使は、当該債権を取得した他の共同相続人の財産に対する侵害となるから、その侵害を受けた共同相続人は、その侵害をした共同相続人に対して不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができるものというべきである。」
とした。

2007.10.13

債権譲受・回収と弁護士法及びサービサー法

弁護士法72条は、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」とし、同法73条は、「何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によって、その権利の実行をすることを業とすることができない。」として、債権回収の委託を弁護士・弁護士法人以外の者についてはこれを禁じ、また、債権を譲り受けて行使することを業として行うことを禁じている。
また、債権管理回収業に関する特別措置法は、同法2条1項に定める特定金銭債権については、「法務大臣の許可を受けた株式会社」に限って、「弁護士又は弁護士法人以外の者が委託を受けて法律事件に関する法律事務である特定金銭債権の管理及び回収を行う営業又は他人から譲り受けて訴訟、調停、和解その他の手段によって特定金銭債権の管理及び回収を行う営業」(同法2条2項)を行うことができるものとして、そして、同法3条は、「債権管理回収業は、法務大臣の許可を受けた株式会社でなければ、営むことができない。」弁護士法72条、73条の例外を定めるとともに、特定金銭債権の管理回収業について弁護士または弁護士法人以外は、法務大臣の許可を受けた債権管理回収業者(サービサー)に独占させている。
ところで、債権譲渡を受けて、これを行使するとの例は、従来からあり、その場合と弁護士法73条や債権管理回収業に関する特別措置法3条に違反しないかが問題となる。

この点について、最高裁判所は、特定金銭債権以外の例(ゴルフ場運営会社に対する預託金返還請求権の例、債権管理回収業に関する特別措置法の適用ない事例)について、下記のように述べて、弁護士法73条の適用についての限定解釈を示した。

最判平成14年1月22日民集56巻1号123頁 判時1775号46頁

「弁護士法73条の趣旨は,主として弁護士でない者が,権利の譲渡を受けることによって,みだりに訴訟を誘発したり,紛議を助長したりするほか,同法72条本文の禁止を潜脱する行為をして,国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずることを防止するところにあるものと解される。このような立法趣旨に照らすと,形式的には,他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為であっても,上記の弊害が生ずるおそれがなく,社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合には,同法73条に違反するものではないと解するのが相当である。」
「ゴルフ会員権の売買には,ゴルフ会員権市場ともいうべき市場が存在し,その市場において多数の会員権の売買が日常的に行われていることは公知の事実である。そして,ゴルフ会員権の売買等を業とする者が,業として,上記市場から,会員権取引における通常の方法と価格で会員権を購入した上,ゴルフ場経営会社に対して社会通念上相当な方法で預託金の返還を求めたものであれば、・・・利益を得る目的で会員権を購入していたとしても,上記の見地から同条に違反するものではないと解される場合もあるというべきである。」

また、特定金銭債権については、下級審の判決例ではあるが、
東京地決平成16年11月12日季刊サービサー8号8頁は、特定目的会社(SPC)が特定金銭債権である貸金債権を譲りうけた後、債務者に対して、破産申立(債権者申立)をした事案について「債権管理回収業に関する特別措置法3条は、債権管理回収業は、法務大臣の許可を受けた株式会社でなければ、営むことができない旨規定しているが、同法は、金融機関等の有する貸付債権等(特定債権)の処理が緊喫の課題となっている状況にかんがみ、許可制度を実施することにより弁護士法の特例として債権回収会社が業として特定金銭債権の管理および回収を行うことができるようにするとともに、債権回収会社について必要な規制を行うことによりその業務の適性な運営の確保を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的として定められた法律であるところ(同法1条参照)、弁護士法73条は、弁護士でない者が、権利の譲渡を受けることによって、みだりに訴訟を誘発したり、紛議を助長したりするほか、同法72条本文の禁止を潜脱する行為をして、国民の法律生活上の利益に弊害生ずることを防止する趣旨の規定であるが、形式的には、他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為であっても、譲受人の業務内容、当該権利の譲受けの方法・態様、権利実行の方法・態様等の事情からして上記弊害が生じるおそれがなく、社会経済的に正当な職務の範囲内にあると認められる場合には、同法73条に違反するものではないと解されるから、このような場合には、債権管理回収業に関する特別措置法3条の趣旨にも反しないと解される。」とした。


共同相続人間の相続人の地位不存在確認

被相続人死亡後、相続人の一人(被相続人の子の一人)Yが、遺言書を隠匿し、又は破棄したとして、数名いる他の相続人の一人Xが、この行為は民法891条5号所定の相続欠格事由に当たると主張し、Yのみを被告として、Yが被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴訟を提起したとの事案で、Yは、Yだけではなく、他の相続人をも被告とすべきであるとして、訴訟手続を争った。この事案について、
最判平成16年 7月 6日民集 58巻5号1319頁 判時 1883号66頁は、次のように判示して、Yの主張を認め、このような場合は、固有必要的共同訴訟であり、Xは、相続人全員を被告として訴訟すべきであるとした。すなわち、「被相続人の遺産につき特定の共同相続人が相続人の地位を有するか否かの点は、遺産分割をすべき当事者の範囲、相続分及び遺留分の算定等の相続関係の処理における基本的な事項の前提となる事柄である。そして、共同相続人が、他の共同相続人に対し、その者が被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは、当該他の共同相続人に相続欠格事由があるか否か等を審理判断し、遺産分割前の共有関係にある当該遺産につきその者が相続人の地位を有するか否かを既判力をもって確定することにより、遺産分割審判の手続等における上記の点に関する紛議の発生を防止し、共同相続人間の紛争解決に資することを目的とするものである。このような上記訴えの趣旨、目的にかんがみると、 上記訴えは、共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要するものというべきであり、いわゆる固有必要的共同訴訟と解するのが相当である。」。

2007.10.11

控訴審における離婚附帯請求

最判平成16年6月3日判時1869号33頁
①離婚請求の原因である事実によって生じた損害賠償請求の反訴及び離婚請求に附帯して行う財産分与請求は、控訴審において提起する場合でも相手方の同意を要しない。
②上訴審が、離婚請求に附帯してなされた財産分与請求について違法であるとして差戻す場合、離婚請求部分も差戻すことが相当である。

2007.10.10

婚姻外男女関係

結婚していない男女の関係の解消に関する判例。うーん。

最判平成16年11月18日判時1881号83頁
婚姻外男女関係について、婚姻及びこれに準ずるものと同様の存続の保障を認める余地がなく、この関係の存続に関し、何らかの法的な義務を負うものと解することはできず、法的な権利ないし利益を有するものとはいえないとして、男性が、女性に対してこの関係を突然かつ一方的に解消し,他の女性と婚姻するに至ったことについて女性が不満を抱くことは理解し得ないではないが慰謝料請求権の発生を肯認し得る不法行為と評価することはできないとした例

2007.10.07

交通事故による損害賠償請求権の消滅時効

交通事故被害者は、自賠責保険に対して、被害者請求がなしうるが、自賠責保険は、因果関係や有無責、後遺障害の程度について、保険料率算出機構(旧・自動車保険料率算定会)に認定を求め、その結果に従うことになる。ところで、被害者が後遺障害の等級に不満があるなどする場合には、保険料率算出機構の認定に対して、異議申立を行うことができるが、異議申立を繰り返すなどする間に、相当期間が経過する場合がある。
ところで、民法724条は、不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅するとされている。そこで、かように異議申立等をしている間に、相当期間経過した場合に、損害賠償請求権が時効消滅していないかが問題となる。

最判平成16年12月24日判時1887号52頁は、この点について、
「交通事故による後遺障害に基づく損害賠償請求の消滅時効について、遅くとも症状固定の診断を受けたときには、損害及び加害者を知ったときというべきであり、自動車保険料率算定会の等級認定の時期は結果を左右しないとした。」

有責配偶者からの離婚請求

有責配偶者からの離婚請求
① 旧判例 有責配偶者からの離婚請求を認めず。
② 判例変更
最判昭和62年9月2日民集41巻6号1423頁
有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によつて精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできない。
有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦が36年間別居し、その間に未成熟子がいないときには、相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、認容すべきである。
最判平成16年11月18日判時1881号90頁
有責配偶者である夫からの離婚請求において、夫婦の別居期間が、事実審の口頭弁論終結時に至るまで約2年4か月であり、双方の年齢や約6年7月という同居期間との対比において相当の長期間に及んでいるとはいえないこと、夫婦間には7歳の未成熟の子が存在すること、妻が、子宮内膜症にり患しているため就職して収入を得ることが困難であり、離婚により精神的・経済的に苛酷な状況に置かれることが想定されることなど判示の事情の下では、上記離婚請求は、信義誠実の原則に反するものといわざるを得ず、これを認容することができない。

2007.10.06

不動産の値下げ販売をした場合の販売者の責任

売主の説明義務違反により慰謝料請求権を認めた例補充

不動産の値下げ販売をした場合の販売者の責任について、これを認める判決はあまり見当たらないといってよい。これに対し、先に紹介済みの最判平成16年11月18日民集58巻8号2225頁 判時1883号62頁は、慰謝料のみとはいえ、これを認めた点で、画期的ともいえる。
そこで、以下、値下げ販売との観点で、判例を整理してみた。

不動産の値引き販売の販売者の責任の法的根拠
① 値引をしない合意を否定した例
・ 大阪地決平成5年4月21日判時1492号118頁販売業者の担当者に、「値下げなど、資産価値を下げるようなことは絶対にしない。」等の言辞があったことは認められるが、それは、当時の地価の異常な高騰を背景とし、顧客に対する売買契約の誘引として、楽天的な価格動向の見通しを述べた単なるセールス・トークであり、販売業者において、将来の不動産市況の変動の有無にかかわらず、顧客との売買単価を下回る価格では他の区画 を分譲しないとの一方的な不作為義務を負担する旨の意思表示とみるには余りにも内容が曖昧であり、このような合意が成立したものと解することは到底できない。
・ 東京地判平成8年2月5日判タ907号18頁
販売業者の営業担当従業員の「値下げしない。」との発言などの言動は、いずれも、個々の顧客らとの間で、不動産市況の変化により不動産価格が下落したとしても、販売業者の当初設定価格を下回る価格で他の戸を分譲しないという不作為義務を販売業者が一方的に負担する旨の意思表示をしているものとみるにはあいまいすぎる言動というほかなく、これらをもって、売買契約締結に当たり、値引き販売をしないという合意、又は、値引き販売をした場合にはXらに損失を補償するという合意が成立したとは認められない。

② 信義則による余波効を否定した例
・ 大阪地決平成5年4月21日判時1492号118頁分譲住宅の売買契約の余後効は、この契約の信義則上の義務と観念されるが、これをわが民法においても承認するとしても、その価格が市況により変動することが予定されている市場性のある商品の売買契約において、その余後効的義務の内容として、当該商品の売買契約締結後(契約終了後)に、他の同種同等の商品をそれ以下の代金で売買することにより、間接的にその財産的価値を減少させることのないようにすべき義務まで包含するものと解することは到底できない。

・ 東京地判平成8年2月5日判タ907号18頁
一般に、不動産の価格は、需要と供給の関係で決まるものであり、不動産市況によって価格が変動することは自明の理ともいうべきことであるから、マンションの販売業者に、売買契約締結後に不動産市況の下落があってもなお当該販売価格を下落させてはならないという信義則上の義務があるとは認められない。

③ 値下げする可能性についての説明義務違反否定例
・ 大阪地判平成10年3月19日判時1657号85頁宅建業者である被告らにおいて、宅地建物取引業法に規定する重要事項の説明義務を負うものであることはいうまでもないことであるが、それ以上に不動産売買契約において売主側に信義則上の保護義務というものが観念されるとしても、不動産の価格が近い将来急激に下落することが確実で、そのことを専門の不動産業者である売主側のみが認識し、現に大幅な値下げ販売を予定しているのに、買主側には右事実を一切説明しないか、あるいはことさらに虚偽の事実を申し向けて不動産を高値で販売したというような事情があるのであればともかく、このような事情がないのに、売主において売買契約締結以後の地価の動向や将来の値下げ販売の可能性等につき、当然に買主に説明すべき法的義務があるとは考えられず(不動産の価格が需要と供給の関係や経済情勢等により変動するものであるだけに尚更である。)、右説明をなさなかったとしても、説明義務違反等の責任を負うものとは解し難い。

最判平成16年11月18日民集58巻8号2225頁 判時1883号62頁の事例の特徴
賃貸マンションの建替計画にあたり、賃借人らに賃借権を消滅させ、「優先購入条項」(書面あり)つき売買契約により売買した。
  ↓
 現実には、一般公募を当面せず。
  ↓
 一般公募の際には、大幅値下げ。
  ↓
 慰謝料請求のみ認める。
 

2007.10.05

暴力団組長の使用者責任(抗争事例)

民法715条1項は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」としている(使用者責任)。
そこで、暴力団の構成員が行った犯罪行為について、使用者責任の規定を利用して、階層的に構成される暴力団の上位者である組長等に損害賠償責任を負わせることができないかが問題となる。

この点につき、暴力団という組織体の特殊性から,①公序良俗に反する違法な活動であっても民法715条の「事業」に含まれるか、②暴力団構成員のいかなる行為が暴力団組長の事業と関連性を有するのか,③暴力団の構成員とその上位者との間の指揮監督関係をどのような場合に認めるのか。上位者が構成員の所属していた下部組織の組長ではなく、その上部組織の組長であった場合にも指揮監督関係を認めてよいのか等の点が解明される必要がある。

最高裁判所は、この点について、次のように判示して、上位組織の組長等に使用者責任を認めた(最判平成16年11月12日民集58巻8号2078頁 判時1882号21頁)。
「階層的に構成されている暴力団が、その威力をその暴力団員に利用させることなどを実質上の目的とし、下部組織の構成員に対しても同暴力団の威力を利用して資金獲得活動をすることを容認していたなど判示の事情の下では、同暴力団の最上位の組長と下部組織の構成員との間に同暴力団の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業について民法715条1項所定の使用者と被用者の関係が成立している。」
「階層的に構成されている暴力団の下部組織における対立抗争においてその構成員がした殺傷行為は、同暴力団が、その威力をその暴力団員に利用させることなどを実質上の目的とし、下部組織の構成員に対しても同暴力団の威力を利用して資金獲得活動をすることを容認し、その資金獲得活動に伴い発生する対立抗争における暴力行為を賞揚していたなど判示の事情の下では、民法715条1項にいう「事業ノ執行ニ付キ」されたものに当たる。」

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