2気になる判例平成17年

2008.11.30

建築基準法施行令1条1号の「一の建築物」とは(その3)

標記論点について
建築基準法施行令1条1号の「一の建築物とは」(その2)にさかのぼるが 次の判例もエキスパンションジョイント接続建物例で、一の建築物性を肯定している。


東京地判平成17年11月21日 判時 1915号34頁判タ1255号190頁(肯定)

 (1) 《証拠省略》によれば、本件建物の形状等について、次のとおりの事実を認めることができる。
 ア 本件土地は、東芝府中野球場跡地である。その形状は、南北方向に長い長方形に近い形であるが、南側の境界線の方が北側の境界線より三割ほど長く、下辺の少し長い台形とも表現しうる。そして、本件土地の北側約五分の三が準工業地域、南側約五分の二が第一種中高層住居専用地域である。本件建物の敷地面積は二万七二二三・六四m2であり、そのうち建築面積は一万一九八五・一七m2である。
 イ 本件建物の概要は以下のとおりである。
 建築面積 一万一九八五・一七m2
 建ぺい率 四四・〇二%
 延べ面積 建築物全体
 六万九八四九・四五m2
 ・地階の住宅の部分の延べ面積 二二・三七m2
 ・共同住宅の共用の廊下等の部分の延べ面積 四四六八・六一m2
 ・自動車車庫等の部分の延べ面積 一万〇九五九・一八m2
 ・容積率対象の延べ面積 五万四三九九・二九m2
 容積率 一九九・八二%
 最高の高さ 四四・三〇m
 階数 地上一五階
 構造 鉄骨鉄筋コンクリート造
 一部 鉄筋コンクリート造
 ウ 本件建物の全体的な位置関係と形状
 本件建物は、A棟からG棟までの住居棟及び共用棟から成っている(別紙一(平面図)及び別紙二(イメージ図)参照)。住居棟はA棟からD棟までの北棟群とE棟からG棟までの南棟群に分けられる。北棟群と南棟群は、直接には接続していない。共用棟は、北棟群と南棟群の両者に直接に接続している。
 北棟群(A棟からD棟まで)は、概ね本件土地の中央より北寄りに位置し、凹字形を形成している。すなわち、A棟は、本件建物の敷地の北東部分から本件建物の敷地の東側の縁に沿うような形でその縁の南北方向の中央部付近までの部分に位置し、D棟は、本件建物の敷地の北西部分から、本件建物の敷地の西側の縁に沿うような形でその縁の南北方向の中央部付近までの部分に位置し、B棟及びC棟は、A棟とD棟の南端を結ぶように、東西方向にまっすぐに並んでいる(B棟が東側、C棟が西側)。A棟は、北端は四階建てで、南に行くにつれて階段状に階数が増え、南端は一〇階建てである。D棟は、北端は三階建てで、南に行くにつれて階段状に階数が増え、南端は九階建てである。B棟は、東端は一〇階建てであり、西に行くにつれて階段状に階数が増え、中央部で一五階建てとなるが、さらに西に行くと階数が減り、C棟との接続部分、すなわち西端は一四階建てである。C棟は、B棟との接続部分、すなわち東端は一三階建てであるが、西に行くにつれて階段状に階数が減り、西端は六階建てである。全体的には、東西方向に立っているB棟及びC棟の中央部分(中央部分はB棟にあたる。)がもっとも高く、一五階建てとなっており、その部分から両端に行くにつれて階段状に階数が減る形状となっている。
 南棟群(E棟からG棟まで)は、概ね本件建物の敷地の中央より南寄りに位置し、横線の方が長いL字型を形成している。すなわち、G棟は、本件建物の敷地の西側の縁の南北方向のほぼ中央部分からその縁に沿うような形で本件建物の敷地の南西端部分までに位置し、F棟及びE棟は、G棟の南端から、東西方向にまっすぐに並んでいる(E棟が東側、F棟が西側)。G棟は全部九階建てである。F棟は、西端は七階建てであり、東に行くにつれて階段状に階数が増え、E棟との接続部分、すなわち東端は一五階建てである。E棟は、F棟との接続部分、すなわち西端は一三階建てであるが、東に行くにつれて階段状に階数が減り、東端は五階建てである。全体的には、東西方向に立っているE棟及びF棟の中央部分(中央部分はF棟にあたる。)がもっとも高く、一五階建てとなっており、その部分から両脇に行くにつれて階段状に階数が減る形状となっている。
 A棟からG棟までの本件建物の住居棟部分を全体的にみれば、本件土地の中に、凹の字形のもの(A棟からD棟)が上、L字型のもの(E棟からG棟)が下に、直接には接続せずに並んでいることになるが、その中間部分に二階建ての共用棟が南北方向に建っており(L字型の縦線部分に相当するG棟の東側に、G棟に並行して建っている。)、B棟(凹の字型の底辺部分に位置する。)とF棟(L字型の横線部分に位置する。)とに接続している。また、共用棟は、G棟にも一階部分のみで接続している。
 北棟群の凹の字型に囲まれた部分には、三階建ての駐車場棟(自走式、収容台数は五九四台)があり、B棟及びC棟(凹の字型の底辺部分に相当する。)、共用棟並びにE棟及びF棟(L字型の横線部分に相当する。)に囲まれた部分には、「エフガーデン」と名づけられた中庭等がある。
 エ 各棟の接続状況
 接続する各棟は、全てエキスパンションジョイント(建築物、構造物の接続方法の一つで、構造体を物理的に分離しておくことによって、構造体が相互に力学上影響を及ぼしあわないようにする接続方法。棟と棟との間に直接応力を伝えることが危険な場合に、これを遮断して構造上の安全性を高める技法の一つ。)により接続されている。
  (ア) A・B棟間(接続部分の階数は、A棟は一〇階建て、B棟は一〇階建て。)
 渡り廊下による接続である。
 すなわち、A棟とB棟とは、南北方向に伸びる屋外に開放された各階の渡り廊下において、エキスパンションジョイントを用いて、一階から一〇階までの一〇層で接続されている。渡り廊下の長さは五・八m、幅は二・〇mであり、両棟の壁面は渡り廊下の長さと同程度離れている。各階の渡り廊下の側壁は人間の大人の腰の高さまであり、外壁面と同じ素材で覆われている。渡り廊下部分においては、両棟の構築物は幅一〇cmから三〇cm程度(階層により異なる。)離れており、エキスパンションジョイントを用いて結合され、床及び天井のみにエキスパンションジョイントカバー(エキスパンションジョイント部分を設けることにより生じた間隙について、建物の使用上支障のないようにするための仕上げ材)を施してある。
  (イ) B・C棟間(接続部分の階数は、B棟が一四階建て、C棟は一三階建て)
 共用廊下及び外装(エキスパンションジョイントカバー)による接続である。
 すなわち、B棟とC棟とは、共用廊下によって三層(一階から三階まで)で接続されている。共用廊下の幅は二・〇mである。両棟間の壁心は七〇cmの距離があるが、両棟に袖壁が設けられ、袖壁間は二〇cmの距離になっている。両棟間の接続方法はエキスパンションジョイントであり、エキスパンションジョイント部分の間隙は、一階から三階までの共用廊下の床、天井及び壁面のほか、四階部分以上の外壁面の間隙も全てエキスパンションジョイントカバーにより覆われている。
  (ウ) C・D棟間(接続部分の階数は、C棟が一三階建て、D棟が九階建て)
 渡り廊下による接続である。
 すなわち、C棟とD棟とは、南北方向に伸びる屋外に開放された各階の渡り廊下によって九層(一階から九階まで)で接続されている。渡り廊下の長さは六・五m、幅は二・〇mである。もっとも、この渡り廊下の西側の縁のうち南寄り部分は、C棟からせり出している避難階段部分と密着しており、避難階段部分の壁が渡り廊下の西側の縁の南寄り部分の壁のようになっている。この壁のある部分の距離は四・二mであるから、渡り廊下の距離からこの部分を差し引いた場合には、渡り廊下の距離は二・三mになる。各階の渡り廊下の側壁は人間の大人の腰の高さまである。渡り廊下部分においては、両棟の構築物は幅一〇cmから三〇cm程度(階層により異なる。)離れており、エキスパンションジョイントを用いて結合され、床及び天井のみにエキスパンションジョイントカバーを施してある。
  (エ) B・共用棟間(接続部分の階数は、B棟が一四階建て、共用棟が二階建て)
 B棟と共用棟とは、二層(一階と二階)の渡り廊下(屋外に開放されていない)で接続されている。これらの渡り廊下は、共用棟内の内部廊下につながる。渡り廊下の長さは五・六五m、幅は三・一mである。
  (オ) 共用棟・G棟間(接続部分の階数は、共用棟が二階建て、G棟が九階建て)
 共用棟とG棟とは、一層(一階)の渡り廊下(屋外に開放されていない)で接続されている。この渡り廊下は、共用棟内の内部廊下につながる。渡り廊下の長さは約三・四m、幅は一・九mである。
  (カ) 共用棟・F棟間(接続部分の階数は、共用棟が二階建て、F棟が一五階建て)
 共用棟とF棟とは、二層(一階と二階)の渡り廊下(屋外に開放されていない)で接続されている。これらの渡り廊下は、共用棟内の内部廊下につながる。渡り廊下の長さは六・四m、幅は二・〇mである。
  (キ) E・F棟間(接続部分の階数は、E棟が一三階、F棟が一五階建て)
 共用廊下及び外装(エキスパンションジョイントカバー)による接続である。
 すなわち、E棟とF棟とは、共用廊下によって三層(一階から三階まで)で接続されている。共用廊下の幅は二・〇mである。両棟間の壁心は八〇cmの距離があるが、両棟に袖壁が設けられ、袖壁間は二〇cmの距離になっている。両棟間の接続方法はエキスパンションジョイントであり、エキスパンションジョイント部分の間隙は、一階から三階までの共用廊下の床、天井及び壁面のほか、四階部分以上の外壁面の間隙も全てエキスパンションジョイントカバーにより覆われている。
  (ク) F・G棟間(接続部分の階数は、F棟が一三階建て、G棟が九階建て)
 渡り廊下による接続である。
 すなわち、F棟とG棟とは、各階の屋外に開放された渡り廊下によって九層(一階から九階まで)で接続されている。渡り廊下の長さは五・六五m、幅は二・〇mである。もっとも、この渡り廊下の西側の縁のうち南寄り部分は、F棟からせり出している避難階段部分と密着しており、避難階段部分の壁が渡り廊下の西側の縁の南寄り部分の壁のようになっている。この壁の距離は四・二mであるから、渡り廊下の距離からこの部分を差し引いた場合には、渡り廊下の距離は一・四五mになる。各階の渡り廊下の側壁は人間の大人の腰ほどの高さまである。渡り廊下部分においては、両棟の構築物は幅一〇cmから三〇cm(階層により異なる。)離れており、エキスパンションジョイントを用いて結合され、床及び天井のみにエキスパンションジョイントカバーを施してある。
 オ 設備等
 本件建物の居住者が共通して使用することが予定されている設備として、共用棟の一階に防災センター、サロン、パーティールーム、ミニコンビニ、クリーニング庫及びアトリエがあり、共用棟の二階にAVシアター及び防音室がある。また、B棟の一階にメールコーナー(郵便受け)、キッズルーム及び託児室があり、C棟の一階にゲストルームがある。
 エントランスは、メインエントランス一箇所、サブエントランス三箇所、合計四箇所に配置されている。メインエントランスは、本件建物の敷地の西側から入り、C棟とG棟との間を通って行って突き当たる共用棟の部分にある。サブエントランスは、A棟の南東側部分、B棟のC棟寄り部分及びE棟の北東部分にある。なお、本件建物の住居棟各棟の一階部分には、各所に非常口が設置されているが、実際はこれらの各非常口が日常出入口として用いられている。
 電気、ガス、給排水設備についても、本件建物全体につき全体を一つの系統とする一体の設備としてシステム化され、各設備ごとに配給領域を分割し、管理上の観点を加味した分岐施設の合理的な配置がされている。
 電気の引込み及び電気機械室については、電気の引込み位置がE棟のサブエントランス付近に二箇所配置され、電気機械室はA棟内、D棟付近、E棟付近及びG棟付近の四箇所に配置されている。
 給水の引込み及び受水槽については、給水の引込み位置が本件建物の敷地北西角とE棟の北側の二箇所に配置され、受水槽(一つ)は駐車場棟の北側に配置されている。
 排水枡については全部で七箇所あり、本件建物の敷地の東側に四箇所、西側に三箇所配置されている。
 ガスの引込みについては全部で五箇所あり、本件建物の敷地の北東角に一箇所、敷地の西側に等間隔に四箇所配置されている。
   (2) 以上のとおりの現況にある本件建物が、一の土地に建築することが許される「一の建築物」(建築基準法施行令一条一号)にあたるかどうか(一建築物一敷地の原則に違反するかどうか)を検討する。
 建築物がいかなる場合に「一の建築物」(建築基準法施行令一条一号)にあたるかということは、建築基準法、建築基準法施行令その他の関係法令には、具体的に定められていない。
 ところで、建築基準法施行令一条一号によれば、原則として「一の建築物」の概念によって建築基準法上の「敷地」の個数が決せられる(すなわち一建築物一敷地の原則)。そして、建築基準法における「敷地」という概念は、敷地の接道義務(建築基準法四三条一項)や容積率制限(建築基準法五二条)等、建築物の用途、規模、形態を都市計画的な観点から支障のないものとし、もって地域環境の保護、向上を図ることを目的とする規定(集団規定)における中核概念の一つとされており、登記簿上の土地の個数のとらえ方等とは必ずしも同一ではない。
 そうであれば、建築基準法上の「敷地」の個数を決する要素となる「一の建築物」にあたるか否か(建築物の個数決定)の判断基準も、原則として建築基準法を適用し、実効あらしめるための独自のものであって、民法、不動産登記法その他の法令にいう建物の個数を定める基準と一致するとは限らない。
 以上によれば、ある建築物が「一の建築物」にあたるか否かについては、建築基準法の趣旨を踏まえて、社会通念に従い、個々の事案ごとに判断していくほかない。そして、構造、機能、使用目的を異にする多様な形状の建築物が、多様な技術のもとに建築されている現代においては、個人の主観により判断が区々になることを防ぐ見地からも、専門的及び技術的見地から、「一の建築物」にあたるという一応の合理的な説明ができるものについては、その説明が社会通念上とうてい容認できないとか、建築基準法の趣旨、目的に明らかに反するなどの特段の事情のない限り、これが「一の建築物」にあたるものと判断するのが相当である。
   (3) 上記に述べたことから、本件建物について検討する。
 ア 外観上の一体性及び構造上の一体性について
 前記認定事実によれば、A棟からD棟までの北棟群は、それぞれ各棟が順次連接しており、接続部分はエキスパンションジョイント及びエキスパンションジョイントカバーにより結合されているから、構造上の一体性があると言い得る。E棟からG棟までの南棟群も同様に、各棟が順次連接しており、エキスパンションジョイント及びエキスパンションジョイントカバーにより結合されているから、構造上の一体性があると言い得る。本件建物が北棟群と共用棟のみから成る建物であるとすれば、北棟群と共用棟は、共用棟の全ての階において結合されており、構造上の一体性があると言い得る。同様に、本件建物が南棟群と共用棟のみから成る建物であるとすれば、南棟群と共用棟は共用棟の全ての階において結合されており、構造上の一体性があると言い得る。
 一五階建ての北棟群と南棟群は、直接接続されておらず、両者がいずれも二階建ての共用棟に接続されていることに伴い、間接的に接続しているにとどまるものである。本件共用棟のような低層の建物を用いて間接的に接続させていくという手法を用いれば、高層棟群がどれだけ離れていても、また、低層棟の数や高層棟(群)の数が無限に増えていっても、全体として一の建物になるというのでは、場合により社会通念に反し、また、建築基準法その他の建築関係法令の趣旨、目的に反することになるとも考えられる。
 しかしながら、本件建物は、一の低層共用棟の両側に二個の高層棟群があるというにとどまるものであって、形態としていささか異例であるとはいえ、社会通念に照らしてなお了解可能な範囲に踏みとどまっており、本件全証拠によっても、接道義務、建ぺい率、容積率制限、日影規制などの具体的規制内容が敷地を基準として定まる建築関係法令の実質的な趣旨、目的に抵触するといえるほどの事態を引き起こしていることを認めるには足りないところである。
 したがって、本件建物は、全体として構造上の一体性を何とか保っているものということができる。
 また、A棟とB棟とは各階の渡り廊下によって一〇層で接続され、B棟とC棟とは、エキスパンションジョイントカバーを含む外装及び三層の共用廊下で接続され、C棟とD棟とは、各階の渡り廊下によって九層で接続され、B棟と共用棟(二階建て)とは、地上部二層の共用廊下で接続され、共用棟とG棟とは地上部一層の共用廊下で、共用棟とF棟とは地上部二層の共用廊下で接続され、E棟とF棟とは、エキスパンションジョイントカバーを含む外装及び三層の共用廊下で接続され、F棟とG棟とは、各階の共用廊下によって九層で接続されており、中庭(エフ・ガーデン)から見れば、全体が一連のものとしてつながっていることが視認できる(但し、B・C棟の裏側にあたるD棟を除く。)から、外観上の一体性はあるというべきである。接続部分はすべて地上にあり、渡り廊下による接続については全ての階にわたりされていることからすれば、側壁が腰の高さくらいまでしかないことを考慮しても、なお外観上の一体性を損なうものとまでは言い難い。
 イ 機能上の一体性について
 前記認定事実によれば、A棟からG棟までの住戸と管理棟が一体となって一の共同住宅として機能しているというべきである。電気や給排水施設についても、付属建築物であるポンプ室及び電気室の建築設備について、電気系統、給水系統についてそれぞれ配給領域を分割し、管理上の観点を加味した分岐施設の合理的な配置がされ、その全体が一つの系統として計画されており、建築物の内外にかかわらず、一体的に管理又は使用される建築設備を利用者が共用しているものといえる。以上によれば、本件建物には、機能上の一体性もあることになる。
   (4) 原告らは、エキスパンションジョイントにより接続されただけでは建築物の外観上の一体性、構造上の一体性及び機能上の一体性があるとはいえないと主張する。
 しかしながら、エキスパンションジョイントによる接続も、構築物を結合して一体化させる方法の一つとして、今日の建築において多用されているものであり、また、建物全体の構造耐力、耐震機能、安全性を向上させながら、国民の様々な需要に応じた多様な建築物の建設を可能にするものでもあって、このようなエキスパンションジョイントにより接続されただけのものについて一律に外観上、構造上、機能上の一体性を否定することは、かえって国民の生命、健康及び財産の保護を図るという建築基準法の趣旨(建築基準法一条)を害するおそれがある。エキスパンションジョイントによる接続により、エキスパンションジョイントカバーとあいまって当該部分は一応一体化するのであるから、通常は構造上の一体性があるものと判断し、外観上の一体性や機能上の一体性を欠く場合や、一の建築物に該当するという判断が社会通念又は建築基準法の趣旨、目的に明らかに反することとなる場合に限り、一の建築物にあたらないものと判断するのが相当である。
 これに反するかの東京都建築審査会における裁決例(甲四一の二)もあるようであるが、当裁判所の採用するところではない。
 また、原告らは、エキスパンションジョイントによる接続では建築物の一体性は確保されないことの論拠として建築基準法施行令八一条二項を挙げる。
 しかしながら、同条項は、「二以上の部分がエキスパンションジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法のみで接している建築物の当該建築物の部分は、前項の規定(建築物の構造計算の方法を定めた規定)の適用については、それぞれ別の建築物とみなす。」と定めているにすぎない。同条項は、エキスパンションジョイントのみによる接続部分がある建築物であっても全体として一の建築物と解される場合があることを前提として、そのような建築物であっても、建築基準法二〇条二号の規定により政令で定める構造計算に関する規定(建築基準法施行令八一条以下)の適用については、エキスパンションジョイントにより接続されていない別々の建築物とみなしてこれらの規定を適用することを定めたにすぎない。建築基準法及び同法施行令において、エキスパンションジョイントによる接続の方法を採った場合には当然に別の建築物となるという考え方が採用されているのであれば、同法施行令八一条二項において「別の建築物とみなす」という表現を用いる必要はないものと考えられる。したがって、この点に関する原告らの主張は採用できない。
 また、原告らは、本件建物のような一五階建ての建物が、そのうちエキスパンションジョイントを用いて共用棟と二層(渡り廊下で接続されているB・C棟間及びE・F棟間においては三層)で接続されているだけでは、一体性は認められない旨主張する。
 確かに、一体性があるというためには、建物の高さ(階数)が増えるごとに接続されるべき層数がこれに比例して増加するとしたほうが社会通念により適合するともいえる。
 しかしながら、高層建物が地階部分だけでしか接続されていない場合に一体性があるとすることは社会通念にあまりに反するといえようが、二層又は三層で接続されている場合については、「一の建築物」が建築基準法上独自の概念であるという前提にも照らし、接続される層数が少ない場合に一体性があると判断することが明らかに社会通念に反するということは困難である。なお、本件建物については、二層による接続部分は高層の住居棟と二階建ての共用棟との接続部分であるし、三層による接続部分(B・C棟間及びE・F棟間)は、四層目以上についてはエキスパンションジョイントカバーにより間隙部分は覆われているから外観上の一体性は確保されているといいうるし、渡り廊下による接続の場合(A・B棟間、C・D棟間及びF・G棟間)には、九層か一〇層による接続がされていることについては前記認定事実のとおりである。したがって、この点についての原告らの主張も採用することはできない。
 上記に関連して、原告らは、本件建物の建築確認処分についての審査請求事件において建築審査会が違法と指摘したB・C棟間やE・F棟間の壁心間の距離は、袖壁を設けることによっては何ら是正されていないともいうが、外観上の一体性は見た目の問題であるから、見た目が一体らしく補正されれば、是正されたことになるというべきであって、この点についての原告らの主張も採用できない。
 さらに、原告らは、A棟やG棟の共用廊下が同一階内でバルコニーで寸断され、端から端まで貫通していないこと等を指摘し、本件建物においては共用廊下をバルコニーで寸断する必要はなく、共用廊下をバルコニーで寸断しなければ本件建物に原告らの主張するところの空中廊下(屋外に開放された渡り廊下のこと)は不要であり、この空中廊下がなければ本件建物は一体性を失う等とも主張する。しかしながら、同一階内のあらゆる部分が当該層の共用廊下により連絡していることが一の建築物というための必須の要件であるとはいえないし、屋外に開放された渡り廊下(原告らのいう空中廊下)の部分においてエキスパンションジョイントにより接続されていることが、それだけで建物の一体性を否定されるような接続方法であるとはいえないことも前記説示のとおりである。いかなるデザイン、意匠、設計の建築物を敷地上に建築するか等ということは、建築基準法上適法な範囲内であれば、原則として敷地利用権者の自由な判断に委ねられ、共用廊下を貫通させるか分断するかそれ自体は建築主の裁量に属するものというべきである。したがって、この点の原告の主張はできない。
   (5) 以上のとおりであるから、本件建物は一建築物一敷地の原則(建築基準法施行令一条一号)に違反するものではなく、この点に関する原告らの主張には理由がない。

2007.12.29

中小企業退職金共済による退職金規定を上回る保険金についての返還合意の効力

中小企業退職金共済法にもとづく中小企業退職金共済に加入している企業は多い。この場合、企業の中には、中小企業退職金共済による給付額が、退職金規定で算出される退職金額を上回っている場合に、その差額を退職労働者から企業に返還させるとの合意をしている例がある。
このような合意の有効性については、企業が負担している共済金掛金を給与の一部と考えたとするとその対価としての共済金の一部を変返還させることになり、私は、給与全額払原則(労働基準法24条)との関係での疑問を持っている。
下記高裁裁判例は、同様の事案について、中小企業退職金共済法の制度趣旨に立ち返り、返還合意を無効とした。

東京高判平成17年5月26日労働判例898号31頁

従業員の福祉の増進を図るという中小企業退職金共済制度の趣旨、及び、事業主と勤労者退職金機構の間で退職金共済契約が締結されると被共済者(従業員)及び遺族は改めて受益の意思表示をすることなく当然に機構に対して退職金受給権を取得する(中小企業退職金共済法(平成14年法律100号改正前)5条)、被共済者が退職した場合には機構は被共済者又は遺族に直接退職金等を支給する(同法10条1項)、退職金等の受給権は原則として譲渡が禁止される(同法16条)、国は同制度の運営について各種の財政援助をする(同法10条2項、87条等)、等の規定内容に照らすと、被共済者の利益を保護しようとする同法の各規定は強行規定であると解するのが相当である。
会社と同社を退職する従業員との間で締結された、勤労者退職金機構から中小企業退職金共済制度に基づく解約金として同人に支払われる金額が会社の内規に従って算出した同人の退職金額を上回る差額について同人が会社に返還する旨の合意が、
(1)右合意は右解約金のうち返還対象となる部分について会社が従業員を介して機構からその支給を受けること、又は会社が従業員から当該部分の受給権の譲渡を受けることを約したに等しいものであり、中小企業退職金共済法5条・10条1項・16条及び同法に基づく中小企業退職金共済制度の趣旨を潜脱する強行法規違反である
(2)会社が共済掛金の損金算入等の点で国から一定の財政的援助を受けつつ、右従業員との間で使用者としての立場を利用して退職金共済契約の内容について正しい説明をすることなく本件合意を成立させたこと
等を考慮して、右合意は公序良俗違反にも該当するとして無効とした例。

2007.12.28

元請業者の孫請業者に対する立替払と相殺

請負業者の倒産に際し、注文主には請負代金支払義務が存在している反面、事実上請負の履行が困難となるが、下請等に直接払いすることができれば、現実的な解決ができる反面、請負代金支払義務は残存するので、二重払いの危険がなしとできない。
この点について、予め下請けとの請負契約中に立替払と相殺についての条項を入れることで、予防している例についての高裁判例が存在する。


東高判平成17年10月5日判タ1226号342頁

請負契約約款に立替払約款及び相殺約款がある場合に、下請業者が民事再生手続を申し立てた後に、元請業者が孫請業者らに対し下請業者の有する請負代金債務を立替払して、これにより取得した立替金請求債権を自働債権として下請業者に対する請負代金債務とを相殺することについて、孫請業者の連鎖倒産を防止すること、建築物の品質の同一性を保ち、瑕疵が生じた時の責任の所在を明確化すること等から請負契約約款における立替払約款の必要性を認め、その立替金債権と下請代金との相殺を認める約款を設けることにより、元請業者の二重払いの危険を防ごうと企図することは建設請負工事の施工の実態からある程度避けがたいことで、これらの約款には下請業者の倒産に伴う様々なリスクの顕在化を予め防止する上で相応の合理性があるとして、この約款にもとづいて元請業者が取得した本件の立替金債権は、改正前民事再生法93条4号ただし書き中段の「再生債権者が支払の停止等があったことを知った時より前に生じた原因に基づくとき」に該当し、当該債権と請負代金債務との相殺についても、本件では元請業者の支払停止時の混乱に乗じて不当な利益を得ようとする等の事情がなく、相殺権の行使が権利の濫用に当たらず許されるとした。

2007.10.15

遺産分割と果実の帰属

遺産分割について争いがある場合などでは、被相続人の死亡から遺産分割までの間に相当の日時を経過することとなるが、その間の相続財産たる不動産から生じる賃料の帰属については、従来考え方が分かれていた。共同相続人は、相続開始の時点から遺産分割がされるまで、遺産をその法定相続分の持分で共有することになる。反面、遺産分割の効力は、相続開始の時に遡って生ずる(民法909条本文)とされていることから、元物たる財産を取得した相続人に果実も帰属するとの考え方(遡及的帰属説)と果実自体共有されるとする考え方(共同財産説)との考え方の違いがあった。
この点、最判平成17年9月8日民集59巻7号1931頁 判時1913号62頁は、次のとおり、共同財産説の立場をとった。すなわち、
「遺産は、相続人が複数あるときは、相続開始時から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用収益した結果生ずべき金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解する。」


2007.10.11

子の連れ去り

離婚をめぐり、幼少の子の親権や監護権について、父母の間で激しく争いとなって、子の奪い合いが行われる例がある。このような行為については、刑事的には、略取誘拐罪が成立し、また、親権や監護権の決定の審判の中でも奪い合いの事実が考慮されることが多い。
子の引渡について、家事審判手続や審判前の保全等の手続きをとっても、手続きが煩瑣であることから、思わず、実行行為に出てしまう父母がいるが、弁護士としては、下記の判例を示すなどして、アドバイスをする必要があろう。


最判平成17年12月6日刑集59巻10号1901頁 判時1927号156頁

母の監護下にある二歳の子を有形力を用いて連れ去った略取行為は、別居中の共同親権者である父が行ったとしても、監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情が認められず、行為態様が粗暴で強引なものであるなど判示の事情の下では、違法性が阻却されるものではない。

東京高決平成17年 6月28日家月 58巻4号105頁

別居中の父母からそれぞれ申し立てられた子の監護者指定申立事件の即時抗告審において、子は七歳とまだ幼少の年齢であり、出生以来主に母である抗告人によって監護されてきたものであって、その監護養育状況に特に問題があったことをうかがわせる証拠はないところ、調停委員等からの事前の警告に反して周到な計画の下に行われた相手方及びその両親による子の奪取は、極めて違法性の高い行為であるといわざるを得ず、子の監護者を相手方に指定することは、そのような違法行為をあたかも追認することになるのであるから、そのようなことが許される場合は、特にそれをしなければ子の福祉が害されることが明らかといえるような特段の状況が認められる場合に限られるとした上、本件においては、このような特段の事情を認めるに足りる証拠はないとして、相手方を監護者と定めた原審判を取り消し、抗告人を監護者と定めた

代理母出産と母子関係

代理母出産とは、夫婦が、他の女性に受精卵を移植し、出産してもらうこと。
配偶者間体外受精と非配偶者間体外受精とがある。

大阪高判平成17年5月20日判時1919号107頁(最判平成17年11月24日判例集未搭載は、原審を是認し、特別抗告及び許可抗告を棄却)は、
代理母による出産について、分娩の事実により母子関係の有無を決するという従前の基準は、母子関係の法律関係を客観的事情により明確に決することができるという利点がある等として、生殖補助医療の発展を考慮に入れてもなお維持されるのが相当であるなどとして、卵子を提供した女性とこの卵子とこの女性の夫の精子の提供を受けた代理母から出産した子との母子関係を否定している。

また最決平成19年3月23日裁判所時報1432号4頁は、
民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するものとして,我が国において効力を有しないとし、また、女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合における出生した子の母は,現行民法の解釈としては,その子を懐胎し出産した女性と解さざるを得ず,卵子を提供した女性との間で母子関係の成立を認めることはできないとしている(タレントの向井亜紀さんとプロレスラー高田延彦さんの事案。)。

(参考)
「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」について
(厚生科学審議会生殖補助医療部会の最終報告書)

2007.10.09

指定確認機関の建築確認と地方公共団体の責任

最判平成17年6月24日判時1904号69頁

指定確認機関の確認に係る建築物について、確認する権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、指定確認機関の当該確認について、行政訴訟法21条1項所定の「当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は地方公共団体にあたるとして、横浜市内で建築中の建物の建築確認の取消訴訟が当該建築物が完成し、訴えの利益が消滅したことから、横浜市への国家賠償請求に訴えの変更を申立てたところ、これを認めた。


この判例については、民間確認機関の建築確認と第三者との紛争との表題で紹介済み。

2007.10.08

中間利息控除の利率

損害賠償請求において、損害額の算定をするにあたり、逸失利益その他、将来発生する損害についての現在価値を求めるために、中間利息控除をする必要がある。その方法については、ホフマン方式とライプニッツ方式とがあるが、用いる利率については、従来から年5%を用いることが多かったところ、近時の低利を背景に、3%その他、5%未満での利率での中間利息控除を求める例がある。
これに対し、最高裁判所は、以下のとおり、明確に民事法定利率である年5%を中間利息控除をする場合の利率とするべきことを示した。

最判平成17年6月14日民集59巻5号983頁 判時1901号23頁
損害賠償額の算定にあたり、被害者の招来の逸失利益を現在価格に換算するために控除すべき中間利息の割合は、民事法定利率(5%)によらなければならない。

適合性の原則

金融商品取引法第40条は、「金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。① 金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれがあること。
② 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。」
としており、適合性の原則に関する規定をおいている。なお、同法は、平成18年に証券取引法等の改正法として立法され、全部の施行には至っていないが、現行法にも同様の規定がある。例えば現行の証券取引法43条は「証券会社は、業務の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、業務を営まなければならない。① 有価証券の買付け若しくは売付け若しくはその委託等、有価証券指数等先物取引、有価証券オプション取引若しくは外国市場証券先物取引の委託又は有価証券店頭デリバティブ取引若しくはその委託等について、顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれがあること。 ② 前号に掲げるもののほか、業務の状況が公益に反し、又は投資者保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。」とし、金融先物取引法77条も、「金融先物取引業者は、業務の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、業務を行わなければならない。1.顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる受託契約等の締結の勧誘を行って顧客の保護に欠けることとなつており、又は欠けることとなるおそれがあること。2.前号に掲げるもののほか、業務の状況が公益に反し、又は委託者等の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。」との規定をおいている。
そこで、証券会社その他の金融商品取引業者が、適合性原則に反して証券その他の金融商品を販売した場合の民事上の責任が問題となる。
この点、最判平成17年7月14日民集59巻6号1323頁 判時1909号30頁は、次のように判示し、適合性原則に違反する場合の損害賠償について述べたが、当該事例については、証券会社の不法行為を否定し、賠償責任を認めなかった。かように、賠償責任自体は否定した事案であるが、適合性原則違反の場合に民事責任が発生しうることについて最高裁判所が初めて触れた判決例であり、判例として価値あるものと思う。
「証券会社の担当者が、顧客の意向と実情に反して、明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど、適合性原則に著しく逸脱する証券取引の勧誘をしてこれを行わしたときは、当該行為は不法行為法上も違法となる。」
「顧客の適合性を判断するには、単にオプション取引という一般的抽象的リスクのみを考慮するのではなく、具体的な商品特性を踏まえ、これとの相関関係において、顧客の投資経験、証券取引の知識、投資意向、財産状態との諸要素を総合的に考慮する必要がある。」
としたが、本件での当てはめでは、「証券会社甲の担当者が顧客である株式会社乙に対し株価指数オプションの売り取引を勧誘してこれを行わせた場合において、当該株価指数オプションは証券取引所の上場商品として広く投資者が取引に参加することを予定するものであったこと、乙は20億円以上の資金を有しその相当部分を積極的に投資運用する方針を有していたこと、乙の資金運用業務を担当する専務取締役らは、株価指数オプション取引を行う前から、信用取引、先物取引等の証券取引を毎年数百億円規模で行い、証券取引に関する経験と知識を蓄積していたこと、乙は、株価指数オプションの売り取引を始めた際、その損失が一定額を超えたらこれをやめるという方針を立て、実際にもその方針に従って取引を終了させるなどして自律的なリスク管理を行っていたことなどの事情の下においては、オプションの売り取引は損失が無限大又はそれに近いものとなる可能性がある極めてリスクの高い取引類型であることを考慮しても、甲の担当者による上記勧誘行為は、適合性の原則から著しく逸脱するものであったとはいえず、甲の不法行為責任を認めることはできない」とした。

2007.10.05

賃借人の原状回復義務の範囲

賃貸借契約終了時にの賃借人の原状回復について、従来から、その範囲に争いが生じることが多かった。
敷金返還請求権から原状回復費として損耗部分の修復費用を控除できるのかとの問題として、賃借人側から敷金返還請求との形で提訴されることが多い。

この問題につき、 最判平成17年12月16日判時1921号61頁は、
「賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上、当然に予期されており、これについて賃借人に原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課することになるから、無効であり、有効となるためには通常損耗の範囲が賃貸借契約の条項自体に具体的に明記されているか、賃貸人が口頭で説明して、賃借人が明確に認識して、特約が明確に合意されていることが必要であるとして、当該事案については、特約が明確に合意されているものとはいえない。」として、敷金返還請求を認めた。

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