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2004.07.14

建築基準法施行令1条1号の「一の建築物」とは(東地判平成13年2月28日判時1748号110頁をめぐって)

建物をエキスパンションジョイントで接合した場合、接合された建物全体が、建築基準法施行令1条1号に言う「一の建築物」といえるのかが問題となる相談事例が近時あった。この点については、東京地裁の判決例があることから、この判決例を検討し、次にその射程距離を検討したい。

参考法令

建築基準法
建築基準法施行令1条

問題の所在
地下鉄の換気塔とビルとをエキスパンションジョイントで接合した建物について、建築基準法施行令1条1号の「一の建築物」といえるか?

事案
訴外Aの確認申請した建築物は、地上10階地下1階で、地下鉄換気塔部分とビル部分とからなる建物であって、換気塔部分が甲土地にビル部分が乙土地に配置されているが、5階6階部分はビル部分が換気塔の上にせり出している形状であった。ところで、甲土地は幅員22メートルの大通りに面しているが、乙土地はこの通りに面しておらず、乙土地だけでは、道路斜線制限により、地上10階建ての建物が建築できない(建築基準法56条、同法施行令131条、132条1項)。しかし、甲乙地を一の建築物のある一団の土地として建築敷地とするとかような建物も建築可能となる。このようなな場合に、ビル部分と地下鉄換気塔部分とをエキスパンションジョイントで接合した計画について、Aはこれを一の建物として確認申請をなし、処分庁は、これを認めて、建築確認をなした。これに対し、近隣の住民がこの建物は建築基準法施行令1条1号の「一の建築物」には当たらず、道路斜線制限違反である(建築基準法56条)として、争った事案である。

判決要旨
東地判平成13年2月28日判時1748号110頁
「一の建物」とは、外観上分離されておらず、また構造上も外壁、床、天井、屋根といった建築物の主要な構造部分が一体として連結し、あるいは密接な関連をもって接続しているものを指すとして、エキスパンションジョイントで接合された本件建築物については、主要構造部分をみると、外壁・床・天井及び屋根のいずれをとっても、本件建築物の換気塔部分とビル塔部分とは、全く連結しておらず、また密接な関連をもって接続していることもないというほかないとした。そして、エキスパンションジョイントで接合していることについては、エキスパンションジョイントとは建築物・構造物の接続方法の一つであり、構造体を物理的に分離しておくことによって、構造体が相互に力学上影響を及ぼし合わないようにする接続方法であって、これによって接続されている部分は相互間に応力を伝えるものではないから(建築基準法施行令81条2項)、これによって接続固定していることは外観上一体化しているに過ぎず、主要な構造部分の関連性をもたらすものではないし、これがそのまま内壁等に用いられているとしても、その性質から間仕切壁と同様、主要な構造物をなすものとは言いがたい(建築基準法2条5号)として、エキスパンションジョイントで接合していることをもっては、認められないとした。

判例の射程距離
ところで、エキスパンションジョイントで接続した建物につき、府中市建築審査会は、地上15階建てで、渡り廊下でつながれた7棟の住居棟と共用棟1棟からなるマンションに対してなされた建築確認について、次のように建築基準法施行令1条1号の「一の建物」に該当するかについての要件を定立し、これには該当しないものとして当該建築確認処分を違法とした(日経アーキテクチャー平成15年7月号86頁)。
すなわち、同審査会は「個々の事案について、建築物が機能上、構造上、外観上の一体性を有するか否かを、社会通念に従って総合的に判断すべきものと解される。」とした上で、
1 外観上の要件として、「地上から目視できる部分において、一定の建築物により2層以上で接続されていること。渡り廊下で接続されている場合は原則として3層以上で接続されていること。」を要件とした。なお、「一定の建築物」には、「居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室、または建築物を成立させるために必要な付属設備のうち、電気、ガス、情報通信、給排水などの設備室、熱供給設備機械室、ごみ処理室、管理・監視室などが該当する。」としている。
2 構造上の要件として、「エキスパンションジョイントで接続されている場合を含め、一体の構造となっていること。」「または、別の構造の建築物が一体的に接続していること。」としている。
3 機能上の要件として、「建築物の内外にかかわらず、一体的に管理または使用されること。その上で利用者が相互に建築物を日常通行できること、建築設備(防災設備、給排水設備、供給処理施設)を共用していること、避難計画が他の建築物の避難施設を利用していること、のいずれかを満たしていること。」としている。
私も、同審査会の裁決例のように、「一の建物」か否かについては、建物としての一体性を、機能上、構造上、外観上から検討を加え総合的に判断するべきものと考える。判決例の事案では、換気塔とビルとをエキスパンションジョイントで接続したというものであり、以上のような要件には合致しない建築物であったと考える。エキスパンションジョイントで接続している建築物のすべてについて、「一の建物」に当たらないとすべきではなく、機能・構造・外観の点から総合的に見て「一の建物」の要件に合致しない建築物について「一の建物」に当たらないものと限定的に考えるべきである。判決例は、エキスパンションジョイントで接合した建物は直ちに「一の建物」に当たらないかのようにも読める可能性があるが、エキスパンションジョイントで接合している建物でも、以上のような総合的判断のもとでは、「一の建物」にあたるとされる場合も多い。なお、同審査会裁決例のあげる機能上、構造上、外観上から「一の建物」といえるための要件・定義自体については、これだけに限定されるものではなく、今後更なる検討も必要ではないか。
(末尾部分などを2004年7月14日午後11時45分・同月15日午前6時50分・同月16日午前8時20分に修正しました。)

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