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2004.07.01

サービサー会社による債権回収と対抗要件

 貸金債権を有するA社が債権管理回収業に関する特別措置法による債権回収会社B(いわゆるサービサー会社)に、債権回収委託をした場合、債権回収委託について、債務者Cに対する対抗要件は必要か?

参考法令
債権回収業に関する特別措置法など
民法467条
弁護士法72条


1 昨年、とある案件で、このような問題に直面しました。実務的には、特に債務者に対する対抗要件(通知または承諾)なくして、サービサーは債権回収をしていることが多いと思われますし、裁判実務でも特に債務者に対する対抗要件の有無を確認せずに、請求を認めているようです。しかし、私は、以下の理由により、対抗要件が必要ではないかと考えます。

2 債権管理回収業に関する特別措置法(以下「サービサー法」と言います。)11条1項は、次のように定めています。
  すなわち、「債権回収会社は、委託を受けて債権の管理又は回収の業務を行う場合には、委託者のために自己の名をもって、当該債権の管理又は回収に関する一切の裁判上又は裁判外の行為を行う権限を有する。」とされています。
  これは、債権回収会社が、当該債権を買取らずに、回収の委託を受けた場合でも、自己の名をもって請求行為が裁判上または裁判外を問わずできることを規定しているものです。
  従来、他人の債権の回収委託を受けてこの取立てをなす行為は、弁護士法72条で「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」と定められ、禁止されていましたが、債権管理回収業として適式の要件を備え、認可を受けた債権回収会社については、同条但し書きによる「他の法律に別段の定めがある場合」の例として、他人の債権の回収委託を受け、これを取り立てることが許されることになりました。
  他人の債権の回収委託を受ける場合の法的関係としては、ひとつには、債権者の代理関係である場合があげられます。この場合は、代理人は、本人のためにすることを顕名の上、あくまで代理人として請求行為をすることになります。
もうひとつは、債権取立権限・回収権限のみを譲渡する場合があげられます。債権回収業に関する特別措置法以前では、手形の取立委任裏書が代表例でした。手形法18条は、「裏書に「回収の為」、「取立の為」、「代理の為」其の他単なる委任を示す文言あるときは所持人は為替手形より生ずる一切の権利を行使することを得」としており、取立委任裏書を認めています。この場合には、手形の取立委任裏書を受けた手形所持人は、実体上の債権者のために自己の名前で、債権の回収をすることとなり、訴訟提起をすることも、いわゆる任意的訴訟担当として、これがなしえるものとされています。
サービサー法11条1項による債権の回収も、手形の取立委任裏書の場合と同様、実体上の債権者に債権を残したまま、回収・取立権限のみがサービサー会社に与えられ、サービサー会社は自己の名をもって債権回収をすることになります。この場合に訴訟をすることも手形の取立委任裏書の場合と同様、任意的訴訟担当として、自己を訴訟上の当事者としてなすことが可能です。

3 私の疑問は、このように回収・取立権限を受けるに当たり、債務者に対する対抗要件が必要なのではないかという点にあります。手形の取立委任裏書については、裏書という手形法に定められた特別な対抗要件を要求しています。指名債権について、サービサー会社に回収・取立を委託する場合にも、民法が要求している債務者に対する対抗要件、通知または承諾が必要なのではないかということです。

4 債権譲渡とは、債権の買取の場合だけであると考えるのであれば、このような回収・取立委託については、債権譲渡には当たらず、対抗要件の問題は出てこないかもしれません。しかし、債権譲渡というのは、債権の売買だけに限られません。この点、 注釈民法(11)346頁は、「?Y 特殊の債権譲渡」 の項の中で、(1)取立のためにする債権譲渡 として、(ア)取立権能の授与 として、回収委託を与える場合も債権譲渡の一例としています。また、倉田卓次監修「要件事実の証明責任 債権総論」346頁以下も、取立のための債権譲渡の二類型として、「取立権能の授与」について触れており、従来から、取立・回収権限のみを与えるという形の債権譲渡もまた、債権譲渡の一態様として認められてきているものと思われます。

5 サービサー会社に債権回収を委託し、サービサー会社が自己の名をもって債権を回収・取立てる場合が、このような債権譲渡の一態様と認められるとすると、債権の売買の場合と同様、サービサー会社が債権回収をするには、債務者に対する対抗要件が必要となるとの結論が導かれると考えます。

6 また、実質的にも、債務者に対して実体上の債権者から回収委託をしたことについて何らの通知ないのに、回収委託を受けたとする債権管理回収業者から、請求があっても、この債権管理回収業者が真に債権回収委託を受けたものかは不明であり、債務の弁済をするべきか否かの判断ができないことは、債権の買取のような通常の債権譲渡の場合に、債務者に対する通知がないと債務者が弁済をするべきか否か判断できないのと全く変わらず、債権譲渡の対抗要件が必要と考えるべきと思われます。

7 このように考えた場合、大量の債権の管理・回収を行うサービサー会社の業務にマイナスになってしまうとの弊害がありますが、なんらかの立法措置によって解決するべきことなのではないでしょうか。

8 なお、私のように考えた場合でも、「サービサー会社が対抗要件を備えていないこと」が、サービサー会社から請求をされた債務者にとっての抗弁になると思われますので、現実の実務の大半でそのような抗弁が出ていないことから、サービサーの対抗要件の有無を確認しない現在の実務が直ちに違法になるわけではないと考えます。また、そのような抗弁が出た場合、実質的債権者に通知をさせればよいので、サービサー会社側が対抗要件を備えるのはそれほど難しいことではなく、余り実益のある議論ではないかもしれません。しかし、「対抗要件の具備がないので支払わない」と債務者が主張しているのに対し、サービサー会社側が何ら措置をとらない場合や、担保権実行の手続のように発令時の要件具備が問題になる事案に対する執行抗告においてかような主張がなされた場合などには、実益のある論点となろうかと思われます。


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