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2004.07.04

抵当権の実行と敷金返還請求権

抵当権設定登記後の契約・引渡がなされた建物賃貸借だが、平成16年3月31日以前契約・引渡の短期賃貸借であり、競売の際の物件明細書にも引受となる短期賃貸借として、記載のある短期賃貸借につき、競落以前に、賃貸借契約の合意解除・明渡しを終えていた場合、その後に競落した買受人に対し、敷金返還請求をなしうるか?

参考法令
民法  395条 附則7条(平成15年8月1日法律第134号)

1 昨年、標記のような事案に接しました。旧所有者は、競売をされている位ですから、資力もなく、また、競売の際の物件明細書には「引受けとなる短期賃貸借」の記載があり、かつ、鑑定もこのような権利があることを前提になされたものと考えられることから、競落人は、そもそもこのような短期賃貸借の引き受けを前提とする買受をしているのではないか、従って、敷金返還義務を負うのではないかとの問題提起です。近時の担保法の改正により、短期賃貸借制度はなくなりましたが、平成16年3月31日以前に契約・引渡のなされた短期賃貸借については、なお短期賃貸借の保護がなされることから、また、抵当権者に対抗できるいわゆる長期賃貸借についても買受前に明渡しをしてしまうと同じ法律関係になるのであり、今後も実益のある論点だと思われます。

2 結論的には、この場合、買受人は、以下に述べる理由により、敷金返還債務を負わないと考えます。論点は、賃貸人の地位承継の要件と物件明細書の性質論に分かれます。

3 賃貸人たる地位の不承継について
敷金返還請求権は、明渡時に発生するとされています。本件では、しかし、買受より前の段階で賃借人は、当時の所有者・賃貸人との間で、賃貸者契約を合意解除し、明渡しまで終えてしまっています。そうすると、買受人は、賃貸借契約が合意解約され、明渡しも完了した後に、本件建物を取得したことになるのであり、買受人は、旧所有者の賃貸人たる地位を承継せず、敷金返還債務も承継しないことになります。

4 物件明細書の記載の公信力について
次に競売の際に作られる物件明細書ですが、本件ではこれに、本件賃貸借契約及び敷金の存在が記載されています。そこで、このような記載を前提に手続きに入った以上、買受人は、賃貸借や敷金を引き受けるといえないかとの疑問もありえます。
しかしながら、物件明細書の記載は裁判ではなく、公信力も存在しません。そもそも、物件明細書というのは、物件明細書作成時点での競売不動産の明細及び権利関係について情報提供しようとするものにすぎないのであって、これによって、実体的権利関係が影響を受けることもありません。
したがって、物件明細書の記載内容如何にかかわらず、本来存続するべき物的負担は存続し、消滅すべき物的負担は消滅することになります。
5 結論
 以上のとおりですので、本件では、賃貸借は、買受人の引き受けにはならず、従って、敷金返還請求債務も負担しません。

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コメント

①賃貸借契約合意解除、②競落、③明渡との経過の場合ですが、よく考えたことはありません。ただ、合意解除してしまった以上、賃貸人の地位は承継しないともいえそうでもあるし、②の段階では、明渡がまだであるので、敷金返還債務も未発生であり、②の競落時に競落人が承継したとする余地もありそうな気もします。
どなたか具体的な事案での解決例をご教示いただけると幸いです。

もし、賃貸借契約の合意解除があって、実際の明け渡しが競落後だった場合は、どう判断したらよいのでしょう?
たとえば、競売になったことを嫌気した賃借人が契約を解除したいと申し出ていて、実際の明け渡しは競落後になってしまったような時です。

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