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2004.12.31

宅地建物取引業者間売買における売主の地位を非宅建業者に移転した場合の宅建業法の規制適否について

参考法令
宅地建物取引業法 33条の2、37条の2、39条乃至43条

1 問題の所在
  宅地建物取引業法は、次項に記載のとおり、宅地建物取引業者自らが売主となる取引については、特別な業務上の規制をしつつ(法33条の2、37条の2、39条乃至43条)、宅地建物取引業者間の取引については、これを除外していることから(法78条2項)、売主・買主がともに宅地建物取引業者の場合、瑕疵担保責任の免除等、宅地建物取引業法の上記の規定を配慮しない合意が可能である。しかしながら、売買契約後に、買主の地位が、賃貸オフィスビルの開発等を目的とする特定目的会社に譲渡することが予定されており、同特定目的会社が宅地建物取引業者ではない場合、新買主との間では、上記宅地建物取引業法の各規制の適用があるのではないかが問題となる。
  とりわけ、目的物である建物が、建築後相当期間を経た物件であり、契約当事者が予測していない建物の瑕疵、すなわち隠れた瑕疵があり、売主は瑕疵担保責任を免除する規定を置きたい場合に、宅地建物取引業法40条は、宅地建物取引業者を売主とし、非宅地建物取引業者を買主とする取引では、かような規定は無効とされており、かえって、民法570条の原則に戻り、発見時から1年(但し、引渡から10年の消滅時効にかかる。)の間、瑕疵担保責任を負うことになってしまうことから、問題が大きい。

2 宅地建物取引業者が自ら売主となる場合の取引の規制の概要
宅地建物取引業法は、宅地建物取引業者が自ら売主となる取引については、次の業務上の規制をしている。但し、買主が宅地建物取引業者の場合には、これらの規制の適用はない(法78条2項)。
これは、宅地建物取引について、宅地建物取引業者には、経験や知識が集積されていることから、宅地建物取引業者が売主となる売買には、買主の不利な合意となりがちなものについて、予めこれを規制して買主を保護する趣旨である。また、このような趣旨による規制であることから、宅地建物取引業者が買主の場合は、経験や知識の集積という点では、同じ立場にあることから、特に保護する必要はなく、取引の基本にもどり、このような規制をせず、当事者間の自由な意思を重視するものとしたものである。
以下、規制を列挙すると、
・自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限(法33条の2)
・クーリングオフ(法37条の2)
・損害賠償額の予定等の制限(法38条)
・手附の額の制限及び解約手付の擬制(法39条)
・瑕疵担保責任についての特約の制限(法40条)
・前金の保全措置の必要(法41条・法41条の2)
・宅地又は建物の割賦販売の契約の解除等の制限(法42条)
・所有権留保等の禁止(法43条)
本件取引では、このうち、瑕疵担保責任についての特約の制限、前金の保全措置の必要が特に問題となる。

3 買主の地位の譲渡の法的性質と要件
  ある契約から生じた個々的な債権または債務だけでなく、契約当事者たる地位そのものが、包括的に第三者に移転することを契約上の地位移転または契約上の地位譲渡と言う。買主の地位譲渡は、契約上の地位譲渡の典型例である。契約上の地位譲渡は、分析的に考えるとその要素として債権譲渡の側面と免責的債務引受の要素とがあることから、当該地位譲渡当事者と地位譲受人との間の合意のみならず、相手方当事者の同意が必要とされる。
  従って、本件買主の地位譲渡にも、買主と同地位譲受人である特定目的会社との合意のみならず、売主の同意が要件となる。

4 買主の地位譲渡の結果、非宅建業者が「買主」となった場合、2項?@乃至?Fの規制を受けることになるのか?
(1)形式的面での検討
  a 買主の地位譲渡の結果、買主は非宅建業者となる。→規制を受けるという考え方に傾く事情。
  b 売買契約締結時には、買主は宅建業者であり、買主の地位が移転するのは、その後の事象である。→規制を受けないという考え方に傾く事情。
  c 買主の地位譲渡のためには、売主の同意が必要であるが、同意は、売買契約そのものとは異なり、宅建業法が規制している「自ら売主となる契約の締結」とは異なる法律行為である。→規制を受けないという考え方に傾く事情。
(2)実質面での検討
  d 買主の地位譲渡により、あくまで非宅建業者が買主となるのであるから、その者の保護が必要である。→規制を受けるという考え方に傾く事情。
  e 買主の地位は、原買主との契約で移転するのであり、その保護の要否も原買主との間で図れば足りる。→規制を受けないという考え方に傾く事情。
  f 買主の地位譲渡の同意は、原契約の中で、売主の義務とすることが考えられるが、業者買主との契約であることから、規制を受けないこととしていたのに、この原買主が契約した新買主が業者ではなかった場合でも売主の義務として同意せざるを得ず、その結果、売主に対する規制の内容が変ってしまうと売主の責任が自らコントロールできない事情で重くなってしまう。反面、それを嫌って同意を拒否すると、債務不履行となってしまうので、同意は拒否できない。→規制を受けないという考え方に傾く事情。
  h 実質は、転売と同様であるが、転売の場合に、原売主は、転売先に対して、宅地建物取引業者としての責任は負わない。→規制を受けないという考え方に傾く事情。

(3)比較衡量
   (1)(2)の各問題点を総合すると、新買主が非宅地建物取引業者の場合でも、原買主が宅地建物取引業者の場合には、売主との関係では、宅地建物取引業者間の取引であるとみて、法33条の2、37条の2乃至43条の規制は受けないとする解釈が、妥当であると考える。

5 結論   以上のとおり、宅地建物取引業法の宅地建物取引業者売主の規定の適否につき、業者間取引として考えればよいといえそうである。但し、この点について、解釈に争いのでることをも考えると、特に問題となる瑕疵担保責任について、確認的な覚書を作成するべきである。
                                                               以 上


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コメント

実務的には、通常の売主買主間の契約書と地位譲渡の合意書、売主の承諾書を作成調印していると理解しています。
売買契約時や契約条項の交渉時には、地位譲渡先が確定していない(まだできていない場合も含む。)こともあるからかもしれません。
売買契約書中にこれらすべてを合意することもできるのかもしれませんが、具体的にみないとなんともいえませんね。

ブログを拝見してお尋ねですが、
「契約上の地位譲渡は、分析的に考えるとその要素として債権譲渡の側面と免責的債務引受の要素とがあることから、当該地位譲渡当事者と地位譲受人との間の合意のみならず、相手方当事者の同意が必要とされる。」
 とのことですが、A(非宅建業者)→B(宅建業者)→C(非宅建業者)と売買契約が締結され所有権移転登記はA→Cへ直接された場合、Bは譲受人としての地位をCに譲渡することを当該譲渡当事者と地位譲受人或いは相手方当事者所謂ABC間で合意若しくは同意があれば買主としての地位譲渡は可能であると解釈できる。とのことだと理解しますが、
実務には ABCの売買契約書の中に「地位譲渡である旨」の条文が挿入された契約であればOKということなのでしょうか?

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