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2006.07.04

民間確認機関の建築確認と第三者との紛争

事務所内の研修で、下記の話をした(2006年7月3日)。

1 建築確認とは
  ① 建築基準法6条1項で建築確認を規定。
    若干読みにくいが、1項4号により、都市計画区域内における建築物については、原則として、当該工事に着手する前にその計画が建築基準関係規定、建築物の敷地、構造または建設設備に関する法令に適合するものであることについての建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならないとされることから、都市計画区域内に建てる建物=普通の建物は、必ず建築確認が必要(=よほど特殊な事情の建物ではない限り、建築確認は必要)と考えていればよいのでは?
  ② 建築基準法6条5項で建築確認の必要な建物についてこれを経ないで建築することを禁止。
 ③ 建築確認の法的性質
α 確認説 建築確認を準法律行政行為とみて、裁量の余地なしとする。
β 許可説 建築確認を法律的行政行為とみて、裁量の余地あるとする。
  →β説では、建築基準関係規定等に準拠している計画でも確認しないとの可能性がありうるか?
  →判例は両方あり。通説は確認説か?
  →α説、β説を問わず、建築確認が行政事件訴訟法の取消訴訟の対象となる処分性を有することについては、現時点では争いない。

2 民間確認機関とは
 ① 建築基準法77条の18から21で、指定確認検査機関(いわゆる民間確認機関)の規定を置く。
  ② 同法6条の2、1項で、5条1項の建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、民間確認機関の確認を受け、国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは、当該確認は5第1項の規定による確認と、当該確認済証は同項の確認済証とみなされる。

3 建築確認を第三者が争う手続き
(1)建築審査請求
  ① 建築確認の処分性
  ・ 建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事若しくは建築監視員又は指定確認検査機関の処分又はこれに係る不作為に不服がある者は、行政不服審査法第3条第2項 に規定する処分庁又は不作為庁が、特定行政庁、建築主事又は建築監視員である場合にあっては当該市町村又は都道府県の建築審査会に、指定確認検査機関である場合にあっては当該処分又は不作為に係る建築物又は工作物について第6条第1項(第87条第1項、第87条の2又は第88条第1項若しくは第2項において準用する場合を含む。)の規定による確認をする権限を有する建築主事が置かれた市町村又は都道府県の建築審査会に対して審査請求をすることができる(建築基準法94条1項)。

   
② 審査請求前置主義
  ・ 第94条第1項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する建築審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができない(建築基準法96条)。
  
・ 審査請求前置の緩和
    特定行政庁の特例許可につき建築審査会が同意(ex 建築基準法43条1項但書の同意)している場合。 
・   処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない(行政事件訴訟法8条1項)。
・  前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。
1 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。
2 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。
3 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。
    (行政事件訴訟法8条2項)

  ③ 審査請求期間
  ・ 審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内(当該処分について異議申立をしたときは、当該異議申立てについての決定があったことを知った日の翌日から起算して30日以内)に、しなければならない。ただし、天災その他審査請求をしなかったことについてやむを得ない理由があるときは、この限りではない(行政不服審査法14条1項)。
  ・ 審査請求は、処分(当該処分について異議申立てをしたときは、当該異議申立てについての決定)があった日の翌日から起算して、1年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りではない(行政不服審査法14条3項)。

  ④ 申立てから裁決までの流れ(添付資料①参照。)  

⑤ 職権探知主義
     審査庁は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、適当と認める者に、参加人としてその知っている事実を陳述させ、又は鑑定を求めることができる(行政不服審査法27条)。
 
   ⑥ 執行停止
   ・ 審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続きの続行を妨げない(行政不服審査法34条1項)
   ・ 処分庁の上級行政庁である審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置をすることができる(同条2項)。

(2)行政訴訟
   建築確認処分の取消訴訟(行政事件訴訟法8条)
   ① 原告適格 行政事件訴訟法9条1項 法律上の利益を有する者
         同条2項 法律上の利益を有する者の基準
         最判平成14年1月22日判時1781号82頁
         最判平成14年3月28日判時1781号90頁
  
   ② 訴えの利益 建築確認処分の対象となった建築物の建築工事が完了した場合、確認処分の取消を求める訴えの利益は失われる。
         最判昭和59年10月26日判時1136号53頁
(3)国家賠償請求  国家賠償法1条

4 ケーススタディ
 民間確認機関がなした建築確認に対する取消訴訟中に建築物が竣工し完了検査も終了した場合と地方公共団体に対する国家賠償請求への訴えの変更の可否
(最判決平成17年6月24日判時1904号69頁について)
(1)経緯
   平成14年5月1日  建築確認(某民間確認機関)
   平成14年6月27日  建築確認取消の審査請求(横浜市建築審査会)
   平成14年9月6日  口頭審査
   平成14年12月6日  建築確認取消請求訴訟の提訴
平成15年1月23日  審査請求裁決(棄却)
平成16年3月9日  完了検査(某民間確認機関)
平成16年5月?日  訴えの変更(被告を横浜市 請求を国家賠償請求)
平成16年6月?日  訴えの変更に対する許可決定(横浜地裁・判例集未搭載?・横浜市即時抗告)
平成16年10月?日  即時抗告に対する棄却決定(東京高裁・判例集未搭載?・横浜市許可抗告申立)
平成17年6月24日 抗告棄却(最高裁判所)
(2)争点
① 開発許可不要判断の違法性
② 構造耐力違反
③ 高さ制限違反
④ 景観風致保全要綱違反
⑤ 民間確認機関に対する確認処分取消訴訟を地方公共団体に対する国家賠償請求訴訟への訴えの変更することの可否
    ⅰ 民間確認機関の確認処分に係る事務が当該地方公共団体の事務にあたるか?
    ⅱ 訴えの変更をすることが相当であると認められるか?
5 添付資料
   ① 審査請求手続の流れ
② 略
③ 略
   ④ 判例時報1904号69頁
   ⑤ 「指定確認検査機関の事務は市が責任を負う」確認の違法性が認められた場合はどうするか(日経アーキテクチャ2005年10月3日号34頁)

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コメント

1.情報開示
指定確認検査機関にて確認済におなった申請図書を開示してもらう方法はあるのでしょうか。行政の建築主事により確認済になった申請図書は、情報開示請求である程度開示されると聞きましたが、民間確認検査機関に対しては、そのような請求のしくみはないのでしょうか。

2.要望書と工事協定書
現在、マンション事業者(近隣対策会社・設計者・施工者は出席するが建築主の会社は出席しない)の説明会において、要望書(計画)、要望書(工事)を提出し回答を得、検討事項をお願いしているところですが、この要望書の内容は、工事協定書に全て盛り込まなければ、何の効力もないのでしょうか。たとえば(計画)に関しての要望と回答などは工事協定書にはなじみませんが。
工事協定書に、要望事項の回答や検討事項を尊重することなどの条文をいれることはできますでしょうか。

3.着工と工事協定書締結
事業者は着工を急いでおり、既に家屋調査も始まっております。、工事協定書の協議はこれからであり、事業者側は、協定書の締結と着工は連動しないと回答して来ており、協議が長引けば、着工すると圧力をかけてきます。このような状況では、協定書の締結は急いだ方がよいのか、着工を遅らせて執拗に協議に取り組む法がよいのでしょうか。

4.工事協定書と計画の変更
また、事業者側は工事協定書の協議と計画の変更協議は並行して進めると言っております。この方法で、計画の変更などを本当に協議できるのでしょうか。


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