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2007年10月

2007.10.30

表明及び保証

M&Aの契約などで、表明及び保証条項を設ける例が多い。これは、契約締結前には、相手資産や業務等をデューデリジェンスにより調査するにしても、それには限界があり、また、デューデリジェンスの際に提出された資料に虚偽があった場合にそのリスクを買収側に負わせることはバランスを欠くことから、売主側に前提事実が真実であることを表明及び保証させ、事実と反する場合に生じた損害リスクの軽減を図る目的であると考えられる。
そして、表明及び保証条項は、近時、M&Aのみならず、一般の契約でも締結する際の前提事実が存在しないことが明らかとなった場合等のリスク回避の目的で、これを入れることが増えてきている。
以下の下級審の判例は、一つはM&Aの事例、もう一つは連帯保証契約の事例である。

M&Aの事例
東京地判平成18年 1月17日 判時1920号136頁

消費者金融会社の企業買収(M&A)を目的とする同社の全株式の譲渡契約中に、譲渡価格を同社の簿価純資産額より算出するとともに、株式の売主が買主に対し,同社の財務諸表が完全かつ正確であり、一般に承認された会計原則に従って作成されたものであること等を表明保証し,当該事項に違反した場合には、買主が現実に被った損害,損失を補償すること等を約していたところ、株式譲渡前の和解債権処理の方法が企業会計原則に違反しており、買主はそれにつき悪意重過失であったと認めることはできない等の場合には、売主は買主に対し、上記和解債権処理により不正に水増しされた株式の譲渡価格金額分について補償する義務を負うとされた。


連帯保証の事例   
東京地判平成18年10月23日金法 1808号58頁

 売掛金債務を連帯保証をする基本契約において、債権者が保証人に対して、債権者と主たる債務者との個別契約成立時に、主たる債務者が一切の債務について遅滞することなく、債務の本旨に従って、その履行がこれまでなされ、現在もなされていることなどを表明し,保証し、また、債権者には、主たる債務者が負担する金銭債務の支払の遅滞をするなどの事情が生じたときは、直ちに、債権者が連帯保証人に対し通知することが定められているにもかかわらず、実際には表明内容と異なり、また、遅滞の際の通知も怠った場合に保証人は、保証債務の責任を負わないとされた。

 

2007.10.28

第54回 全国建築審査会会長会議

2007年10月25日 那覇において 全国建築審査会会長会議があり、出席
議決事項報告事項の後の報告、講演等の標目はつぎのとおり

1 研究会報告 建築審査会のあり方に関するアンケート調査について(経過報告)
2 講演 市場主義の下での建築規制
3 建築行政の近況報告
(1) 構造計算書偽装問題への対応
(2) その他、最近の方改正事項
  ・ 住宅建築物の省エネ対策について
  ・ 住宅・建築物の耐震改修の促進について
  ・ バリアフリー法について
  ・ アスベスト規制について
  ・ 建築行政の執行体制の強化について
  ・ 建築行政共用データベースシステムについて
4 審査請求の事例報告
  ・ 地盤面が問題とされる審査請求事件の審理について
  ・ 不適合通知の取り消し処分についての審査請求事例について
  ・ 道路の取扱を理由とした建築確認処分の取消請求事例について
5 意見発表
  ・ 建築許可とまちづくりについて
  ・ 建築基準法3条に基づく富士信仰「御師外川家」の指定について
  ・ 保存建築物の利活用事例について~勝山市旧機業場
  ・ 狭隘道路にかかわる建議とその後
  ・ 市街化調整区域におけるグループホームの建築について

2007.10.23

今日2007 年10月23 日のお仕事

朝交通事故の相談
引き続き開発行為関連相談
昼から刑事事件関連
午後、財団法人日弁連法務研究財団の判例速報会議
夕方から夜、交通事故関係

2007.10.20

今日2007 年10月20 日

母校のホームカミングデーに出掛け、昼頃着いたら、丁度校歌を歌っているところだった。
思えば25年前、司法試験の合格が自分にとっての卒業であるとの、張り詰めた思いで、卒業式にはでずに勉強していた。懐かしい。
事務所に寄り雑用と作業。
夜 先輩弁護士のお通夜へ。私の父と同じ世代。御冥福をお祈りします。

2007.10.17

営業譲渡・事業譲渡と譲渡人の債務の引受

商法17条1項(旧商法26条1項)は、「営業を譲り受けた商人(以下この章において「譲受人」という。)が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う。」と規定しており、商号続用の場合、譲渡人の営業による債務を譲受人が引き受けることを原則としている。これに対し、商号の続用がない場合、債務の承継の有無は、譲渡人と譲受人との間の営業譲渡の契約により定められる。
そこで、商人の商号自体は続用せず、債務は承継しないものとして営業譲渡が行われた場合(このような例は多いと思われる。)、しかし、営業実体は、譲渡人と譲受人でほとんど変わらない場合に、債権者としては、譲受人が債務を引き受けているとの主張をすることが多いであろう。このような主張が認められるかについて、商法17条(旧商法26条)の類推適用の可否との観点で、最判平成16年 2月20日 民集 58巻2号367頁 判時 1855号141頁は、預託金会員制ゴルフクラブの例について、以下のとおり述べて、商法17条1項(旧商法26条1項)の類推適用があるものとした。
「預託金会員制のゴルフクラブの名称がゴルフ場の営業主体を表示するものとして用いられている場合において、ゴルフ場の営業の譲渡がされ、譲渡人が用いていたゴルフクラブの名称を譲受人が継続して使用しているときには、譲受人が譲受後遅滞なく当該ゴルフクラブの会員によるゴルフ場施設の優先的利用を拒否したなどの特段の事情がない限り、会員において、同一の営業主体による営業が継続しているものと信じたり、営業主体の変更があったけれども譲受人により譲渡人の債務の引受けがされたと信じたりすることは、無理からぬものというべきである。したがって、譲受人は、上記特段の事情がない限り、商法26条1項(註 旧商法。新法18条1項に相当。)の類推適用により、会員が譲渡人に交付した預託金の返還義務を負うものと解するのが相当である。」

(追記)2007.10.18
ところで、会社法制定により、会社の場合は、商号の続用は想定できないであろうとして、会社以外の商人における場合と区別して、営業譲渡との用語をやめ、事業譲渡と称することなっている(会社法467条以下)。上記の判例は、会社法制定前のものであるが、会社法制定後の事業譲渡の場合であっても、判例の法理はかわらず、商法17条1項の類推適用はありうると解するので、この点を追記し、表題を「営業譲渡と譲渡人の債務の引受」から「営業譲渡・事業譲渡と譲渡人の債務の引受」に訂正した。

10月もはや半ば

今月もばたばた過ごす。
今日(10月17日)は、いつもより1時間強早く出た。一日びっしりなので少し早めに事務所に出ないと余裕がない。
最近の仕事も、地代家賃の増減関係、建物明渡、建物収去土地明渡、借地非訟など、相変わらず不動産建築が多い。
某裁判所は、特定の部が借地非訟、調停、建築の専門部だが、近時その部にばかりでかけているような気が。

2007.10.16

暴力団組長の使用者責任その2(第三者加害事例)

先に紹介した暴力団組長の使用者責任についての判例に関し、つるまきさんからいただいたコメント中でご案内いただいた東京地裁の判例(平成17年(ワ)第3677号損害賠償請求事件)が、裁判所ホームページに掲載されていた。
先の判例が暴力団同士の抗争事例であるのに対し、この東京地裁の判例は、全くの第三者を殺害した事案について、暴力団の組長の使用者責任を認めたものである。

東京地判平成19年9月20日裁判所ホームページhttp://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071015121121.pdf

日本に語学留学のために滞在していた大韓民国国籍の学生が、指定暴力団の下部組織の構成員らに、その組織の構成員を殺害した犯人であると誤信され、報復及びみせしめとして射殺された事案において、同組織の「総裁」や「会長」の使用者性、本件殺人行為の当該組織の事業執行性を認め、「総裁」及び「会長」に使用者責任を認めた。

2007.10.15

遺産分割と果実の帰属

遺産分割について争いがある場合などでは、被相続人の死亡から遺産分割までの間に相当の日時を経過することとなるが、その間の相続財産たる不動産から生じる賃料の帰属については、従来考え方が分かれていた。共同相続人は、相続開始の時点から遺産分割がされるまで、遺産をその法定相続分の持分で共有することになる。反面、遺産分割の効力は、相続開始の時に遡って生ずる(民法909条本文)とされていることから、元物たる財産を取得した相続人に果実も帰属するとの考え方(遡及的帰属説)と果実自体共有されるとする考え方(共同財産説)との考え方の違いがあった。
この点、最判平成17年9月8日民集59巻7号1931頁 判時1913号62頁は、次のとおり、共同財産説の立場をとった。すなわち、
「遺産は、相続人が複数あるときは、相続開始時から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用収益した結果生ずべき金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解する。」


遺産分割がなされるまでの相続不動産と相続債権の性質

被相続人が相続開始の時において有した不動産を相続人の一人が単独名義に相続登記をし、被相続人の死亡後に相続人の一人が解約し、払戻しを受けた預貯金について、他の相続人が相続分に応じて被相続人の相続財産を相続していると主張して、不動産につき相続分に応じた持分の移転登記手続を求めるとともに、預貯金につき相続分に相当する金額の不当利得の返還を求めた事案について、
 最判平成16年4月20日家月56巻10号48頁 判時1859号61頁は、
「相続開始後、遺産分割が実施されるまでの間は、共同相続された不動産は共同相続人全員の共有に属し、各相続人は当該不動産につき共有持分を持つことになる。したがって、共同相続された不動産について共有者の1人が単独所有の登記名義を有しているときは、他の共同相続人は、その者に対し、共有持分権に基づく妨害排除請求として、自己の持分についての一部抹消等の登記手続を求めることができるものと解すべきである(最高裁昭和35年(オ)第1197号同38年2月22日第二小法廷判決・民集17巻1号235頁、最高裁昭和48年(オ)第854号同53年12月20日大法廷判決・民集32巻9号1674頁参照)。
 また、相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと解される。したがって、共同相続人の1人が、相続財産中の可分債権につき、法律上の権限なく自己の債権となった分以外の債権を行使した場合には、当該権利行使は、当該債権を取得した他の共同相続人の財産に対する侵害となるから、その侵害を受けた共同相続人は、その侵害をした共同相続人に対して不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができるものというべきである。」
とした。

2007.10.13

債権譲受・回収と弁護士法及びサービサー法

弁護士法72条は、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」とし、同法73条は、「何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によって、その権利の実行をすることを業とすることができない。」として、債権回収の委託を弁護士・弁護士法人以外の者についてはこれを禁じ、また、債権を譲り受けて行使することを業として行うことを禁じている。
また、債権管理回収業に関する特別措置法は、同法2条1項に定める特定金銭債権については、「法務大臣の許可を受けた株式会社」に限って、「弁護士又は弁護士法人以外の者が委託を受けて法律事件に関する法律事務である特定金銭債権の管理及び回収を行う営業又は他人から譲り受けて訴訟、調停、和解その他の手段によって特定金銭債権の管理及び回収を行う営業」(同法2条2項)を行うことができるものとして、そして、同法3条は、「債権管理回収業は、法務大臣の許可を受けた株式会社でなければ、営むことができない。」弁護士法72条、73条の例外を定めるとともに、特定金銭債権の管理回収業について弁護士または弁護士法人以外は、法務大臣の許可を受けた債権管理回収業者(サービサー)に独占させている。
ところで、債権譲渡を受けて、これを行使するとの例は、従来からあり、その場合と弁護士法73条や債権管理回収業に関する特別措置法3条に違反しないかが問題となる。

この点について、最高裁判所は、特定金銭債権以外の例(ゴルフ場運営会社に対する預託金返還請求権の例、債権管理回収業に関する特別措置法の適用ない事例)について、下記のように述べて、弁護士法73条の適用についての限定解釈を示した。

最判平成14年1月22日民集56巻1号123頁 判時1775号46頁

「弁護士法73条の趣旨は,主として弁護士でない者が,権利の譲渡を受けることによって,みだりに訴訟を誘発したり,紛議を助長したりするほか,同法72条本文の禁止を潜脱する行為をして,国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずることを防止するところにあるものと解される。このような立法趣旨に照らすと,形式的には,他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為であっても,上記の弊害が生ずるおそれがなく,社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合には,同法73条に違反するものではないと解するのが相当である。」
「ゴルフ会員権の売買には,ゴルフ会員権市場ともいうべき市場が存在し,その市場において多数の会員権の売買が日常的に行われていることは公知の事実である。そして,ゴルフ会員権の売買等を業とする者が,業として,上記市場から,会員権取引における通常の方法と価格で会員権を購入した上,ゴルフ場経営会社に対して社会通念上相当な方法で預託金の返還を求めたものであれば、・・・利益を得る目的で会員権を購入していたとしても,上記の見地から同条に違反するものではないと解される場合もあるというべきである。」

また、特定金銭債権については、下級審の判決例ではあるが、
東京地決平成16年11月12日季刊サービサー8号8頁は、特定目的会社(SPC)が特定金銭債権である貸金債権を譲りうけた後、債務者に対して、破産申立(債権者申立)をした事案について「債権管理回収業に関する特別措置法3条は、債権管理回収業は、法務大臣の許可を受けた株式会社でなければ、営むことができない旨規定しているが、同法は、金融機関等の有する貸付債権等(特定債権)の処理が緊喫の課題となっている状況にかんがみ、許可制度を実施することにより弁護士法の特例として債権回収会社が業として特定金銭債権の管理および回収を行うことができるようにするとともに、債権回収会社について必要な規制を行うことによりその業務の適性な運営の確保を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的として定められた法律であるところ(同法1条参照)、弁護士法73条は、弁護士でない者が、権利の譲渡を受けることによって、みだりに訴訟を誘発したり、紛議を助長したりするほか、同法72条本文の禁止を潜脱する行為をして、国民の法律生活上の利益に弊害生ずることを防止する趣旨の規定であるが、形式的には、他人の権利を譲り受けて訴訟等の手段によってその権利の実行をすることを業とする行為であっても、譲受人の業務内容、当該権利の譲受けの方法・態様、権利実行の方法・態様等の事情からして上記弊害が生じるおそれがなく、社会経済的に正当な職務の範囲内にあると認められる場合には、同法73条に違反するものではないと解されるから、このような場合には、債権管理回収業に関する特別措置法3条の趣旨にも反しないと解される。」とした。


共同相続人間の相続人の地位不存在確認

被相続人死亡後、相続人の一人(被相続人の子の一人)Yが、遺言書を隠匿し、又は破棄したとして、数名いる他の相続人の一人Xが、この行為は民法891条5号所定の相続欠格事由に当たると主張し、Yのみを被告として、Yが被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴訟を提起したとの事案で、Yは、Yだけではなく、他の相続人をも被告とすべきであるとして、訴訟手続を争った。この事案について、
最判平成16年 7月 6日民集 58巻5号1319頁 判時 1883号66頁は、次のように判示して、Yの主張を認め、このような場合は、固有必要的共同訴訟であり、Xは、相続人全員を被告として訴訟すべきであるとした。すなわち、「被相続人の遺産につき特定の共同相続人が相続人の地位を有するか否かの点は、遺産分割をすべき当事者の範囲、相続分及び遺留分の算定等の相続関係の処理における基本的な事項の前提となる事柄である。そして、共同相続人が、他の共同相続人に対し、その者が被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは、当該他の共同相続人に相続欠格事由があるか否か等を審理判断し、遺産分割前の共有関係にある当該遺産につきその者が相続人の地位を有するか否かを既判力をもって確定することにより、遺産分割審判の手続等における上記の点に関する紛議の発生を防止し、共同相続人間の紛争解決に資することを目的とするものである。このような上記訴えの趣旨、目的にかんがみると、 上記訴えは、共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要するものというべきであり、いわゆる固有必要的共同訴訟と解するのが相当である。」。

2007.10.11

子の連れ去り

離婚をめぐり、幼少の子の親権や監護権について、父母の間で激しく争いとなって、子の奪い合いが行われる例がある。このような行為については、刑事的には、略取誘拐罪が成立し、また、親権や監護権の決定の審判の中でも奪い合いの事実が考慮されることが多い。
子の引渡について、家事審判手続や審判前の保全等の手続きをとっても、手続きが煩瑣であることから、思わず、実行行為に出てしまう父母がいるが、弁護士としては、下記の判例を示すなどして、アドバイスをする必要があろう。


最判平成17年12月6日刑集59巻10号1901頁 判時1927号156頁

母の監護下にある二歳の子を有形力を用いて連れ去った略取行為は、別居中の共同親権者である父が行ったとしても、監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情が認められず、行為態様が粗暴で強引なものであるなど判示の事情の下では、違法性が阻却されるものではない。

東京高決平成17年 6月28日家月 58巻4号105頁

別居中の父母からそれぞれ申し立てられた子の監護者指定申立事件の即時抗告審において、子は七歳とまだ幼少の年齢であり、出生以来主に母である抗告人によって監護されてきたものであって、その監護養育状況に特に問題があったことをうかがわせる証拠はないところ、調停委員等からの事前の警告に反して周到な計画の下に行われた相手方及びその両親による子の奪取は、極めて違法性の高い行為であるといわざるを得ず、子の監護者を相手方に指定することは、そのような違法行為をあたかも追認することになるのであるから、そのようなことが許される場合は、特にそれをしなければ子の福祉が害されることが明らかといえるような特段の状況が認められる場合に限られるとした上、本件においては、このような特段の事情を認めるに足りる証拠はないとして、相手方を監護者と定めた原審判を取り消し、抗告人を監護者と定めた

代理母出産と母子関係

代理母出産とは、夫婦が、他の女性に受精卵を移植し、出産してもらうこと。
配偶者間体外受精と非配偶者間体外受精とがある。

大阪高判平成17年5月20日判時1919号107頁(最判平成17年11月24日判例集未搭載は、原審を是認し、特別抗告及び許可抗告を棄却)は、
代理母による出産について、分娩の事実により母子関係の有無を決するという従前の基準は、母子関係の法律関係を客観的事情により明確に決することができるという利点がある等として、生殖補助医療の発展を考慮に入れてもなお維持されるのが相当であるなどとして、卵子を提供した女性とこの卵子とこの女性の夫の精子の提供を受けた代理母から出産した子との母子関係を否定している。

また最決平成19年3月23日裁判所時報1432号4頁は、
民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するものとして,我が国において効力を有しないとし、また、女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合における出生した子の母は,現行民法の解釈としては,その子を懐胎し出産した女性と解さざるを得ず,卵子を提供した女性との間で母子関係の成立を認めることはできないとしている(タレントの向井亜紀さんとプロレスラー高田延彦さんの事案。)。

(参考)
「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」について
(厚生科学審議会生殖補助医療部会の最終報告書)

控訴審における離婚附帯請求

最判平成16年6月3日判時1869号33頁
①離婚請求の原因である事実によって生じた損害賠償請求の反訴及び離婚請求に附帯して行う財産分与請求は、控訴審において提起する場合でも相手方の同意を要しない。
②上訴審が、離婚請求に附帯してなされた財産分与請求について違法であるとして差戻す場合、離婚請求部分も差戻すことが相当である。

2007.10.10

婚姻外男女関係

結婚していない男女の関係の解消に関する判例。うーん。

最判平成16年11月18日判時1881号83頁
婚姻外男女関係について、婚姻及びこれに準ずるものと同様の存続の保障を認める余地がなく、この関係の存続に関し、何らかの法的な義務を負うものと解することはできず、法的な権利ないし利益を有するものとはいえないとして、男性が、女性に対してこの関係を突然かつ一方的に解消し,他の女性と婚姻するに至ったことについて女性が不満を抱くことは理解し得ないではないが慰謝料請求権の発生を肯認し得る不法行為と評価することはできないとした例

建築の瑕疵と不法行為

建築物の瑕疵に対して、注文主が請負人に対し損害賠償を請求する場合、通常は、瑕疵担保責任の規定による。
しかし、注文主が転売した場合、買主は、請負人とは直接の契約関係には立たないことから、不法行為責任による損害賠償請求を検討せざるを得ないであろう。従来、請負人が不法行為責任を負うのは、加害性が強い場合に限定されていたと解されるが、下記は、居住者の生命・身体・財産の侵害がなされた場合の注意義務違反を認めた例として、重要な判例と理解する。

最判平成19年7月6日裁判所時報1439号2頁・民集61巻5号1769頁
建物を、建築主から購入した者が、当該建物にはひび割れ等の瑕疵があると主張して、建築の設計及び工事監理をした建築士及び施行をした建設工事請負人に対し、損害賠償ないし瑕疵修補償費用の請求をしたところ、設計・施行者等は、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当であり、瑕疵により、居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、不法行為による賠償責任を負うとした例

2007.10.09

内縁関係と被害者側の過失

本年 被害者側の過失に関する新判例が出ているので、紹介する。

「被害者側の過失論」は、古典的には、過失相殺能力のない幼児等が被害者の損害賠償請求案件において、幼児に対する監督義務者の過失(例 目を離した。手をつないでいなかった等。)を被害者側の過失として過失相殺するための技法として論じられていたところと思う(最判昭和34年11月26日民集 13巻12号1573頁参照)。
判例理論は、幼児等に留まらず、「被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にある者の過失、すなわちいわゆる被害者側の過失をも包含するものと解される。」として、身分上、生活関係上、一体をなすとみられる関係にある者の過失をも被害者側の過失として過失相殺を認め、夫婦で同乗中の運転者夫の過失を、相手方と被害者妻との関係で、被害者側の過失として、過失相殺の対象とした(最判昭和51年3月25日民集 30巻2号160頁参照)。
これに対し、「自動車同士の衝突事故による損害賠償額を算定するに当たり、被害者と恋愛関係にある被害自動車運転者の過失を被害者側の過失として斟酌することは、許されないとしていた(最判平成9年9月9日判時 1618号63頁)。
また、職場の同僚の運転について、被害者側の過失とみることについては、これも否定した例がある(最判昭和56年 2月17日判時 996号65頁)。


最判平成19年4月24日判タ1240号118頁は、内縁関係の場合について、被害者側の過失論を適用した。すなわち、「内縁の夫の運転する自動者に同乗中に、第三者の運転する自動車との衝突により、傷害を負った内縁の妻が、第三者に対して損害賠償請求をする場合に、その賠償額を定めるに当たり、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる。」としたものである。

指定確認機関の建築確認と地方公共団体の責任

最判平成17年6月24日判時1904号69頁

指定確認機関の確認に係る建築物について、確認する権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、指定確認機関の当該確認について、行政訴訟法21条1項所定の「当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は地方公共団体にあたるとして、横浜市内で建築中の建物の建築確認の取消訴訟が当該建築物が完成し、訴えの利益が消滅したことから、横浜市への国家賠償請求に訴えの変更を申立てたところ、これを認めた。


この判例については、民間確認機関の建築確認と第三者との紛争との表題で紹介済み。

2007.10.08

中間利息控除の利率

損害賠償請求において、損害額の算定をするにあたり、逸失利益その他、将来発生する損害についての現在価値を求めるために、中間利息控除をする必要がある。その方法については、ホフマン方式とライプニッツ方式とがあるが、用いる利率については、従来から年5%を用いることが多かったところ、近時の低利を背景に、3%その他、5%未満での利率での中間利息控除を求める例がある。
これに対し、最高裁判所は、以下のとおり、明確に民事法定利率である年5%を中間利息控除をする場合の利率とするべきことを示した。

最判平成17年6月14日民集59巻5号983頁 判時1901号23頁
損害賠償額の算定にあたり、被害者の招来の逸失利益を現在価格に換算するために控除すべき中間利息の割合は、民事法定利率(5%)によらなければならない。

適合性の原則

金融商品取引法第40条は、「金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。① 金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれがあること。
② 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。」
としており、適合性の原則に関する規定をおいている。なお、同法は、平成18年に証券取引法等の改正法として立法され、全部の施行には至っていないが、現行法にも同様の規定がある。例えば現行の証券取引法43条は「証券会社は、業務の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、業務を営まなければならない。① 有価証券の買付け若しくは売付け若しくはその委託等、有価証券指数等先物取引、有価証券オプション取引若しくは外国市場証券先物取引の委託又は有価証券店頭デリバティブ取引若しくはその委託等について、顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれがあること。 ② 前号に掲げるもののほか、業務の状況が公益に反し、又は投資者保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。」とし、金融先物取引法77条も、「金融先物取引業者は、業務の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、業務を行わなければならない。1.顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる受託契約等の締結の勧誘を行って顧客の保護に欠けることとなつており、又は欠けることとなるおそれがあること。2.前号に掲げるもののほか、業務の状況が公益に反し、又は委託者等の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。」との規定をおいている。
そこで、証券会社その他の金融商品取引業者が、適合性原則に反して証券その他の金融商品を販売した場合の民事上の責任が問題となる。
この点、最判平成17年7月14日民集59巻6号1323頁 判時1909号30頁は、次のように判示し、適合性原則に違反する場合の損害賠償について述べたが、当該事例については、証券会社の不法行為を否定し、賠償責任を認めなかった。かように、賠償責任自体は否定した事案であるが、適合性原則違反の場合に民事責任が発生しうることについて最高裁判所が初めて触れた判決例であり、判例として価値あるものと思う。
「証券会社の担当者が、顧客の意向と実情に反して、明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど、適合性原則に著しく逸脱する証券取引の勧誘をしてこれを行わしたときは、当該行為は不法行為法上も違法となる。」
「顧客の適合性を判断するには、単にオプション取引という一般的抽象的リスクのみを考慮するのではなく、具体的な商品特性を踏まえ、これとの相関関係において、顧客の投資経験、証券取引の知識、投資意向、財産状態との諸要素を総合的に考慮する必要がある。」
としたが、本件での当てはめでは、「証券会社甲の担当者が顧客である株式会社乙に対し株価指数オプションの売り取引を勧誘してこれを行わせた場合において、当該株価指数オプションは証券取引所の上場商品として広く投資者が取引に参加することを予定するものであったこと、乙は20億円以上の資金を有しその相当部分を積極的に投資運用する方針を有していたこと、乙の資金運用業務を担当する専務取締役らは、株価指数オプション取引を行う前から、信用取引、先物取引等の証券取引を毎年数百億円規模で行い、証券取引に関する経験と知識を蓄積していたこと、乙は、株価指数オプションの売り取引を始めた際、その損失が一定額を超えたらこれをやめるという方針を立て、実際にもその方針に従って取引を終了させるなどして自律的なリスク管理を行っていたことなどの事情の下においては、オプションの売り取引は損失が無限大又はそれに近いものとなる可能性がある極めてリスクの高い取引類型であることを考慮しても、甲の担当者による上記勧誘行為は、適合性の原則から著しく逸脱するものであったとはいえず、甲の不法行為責任を認めることはできない」とした。

2007.10.07

交通事故による損害賠償請求権の消滅時効

交通事故被害者は、自賠責保険に対して、被害者請求がなしうるが、自賠責保険は、因果関係や有無責、後遺障害の程度について、保険料率算出機構(旧・自動車保険料率算定会)に認定を求め、その結果に従うことになる。ところで、被害者が後遺障害の等級に不満があるなどする場合には、保険料率算出機構の認定に対して、異議申立を行うことができるが、異議申立を繰り返すなどする間に、相当期間が経過する場合がある。
ところで、民法724条は、不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅するとされている。そこで、かように異議申立等をしている間に、相当期間経過した場合に、損害賠償請求権が時効消滅していないかが問題となる。

最判平成16年12月24日判時1887号52頁は、この点について、
「交通事故による後遺障害に基づく損害賠償請求の消滅時効について、遅くとも症状固定の診断を受けたときには、損害及び加害者を知ったときというべきであり、自動車保険料率算定会の等級認定の時期は結果を左右しないとした。」

有責配偶者からの離婚請求

有責配偶者からの離婚請求
① 旧判例 有責配偶者からの離婚請求を認めず。
② 判例変更
最判昭和62年9月2日民集41巻6号1423頁
有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によつて精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできない。
有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦が36年間別居し、その間に未成熟子がいないときには、相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、認容すべきである。
最判平成16年11月18日判時1881号90頁
有責配偶者である夫からの離婚請求において、夫婦の別居期間が、事実審の口頭弁論終結時に至るまで約2年4か月であり、双方の年齢や約6年7月という同居期間との対比において相当の長期間に及んでいるとはいえないこと、夫婦間には7歳の未成熟の子が存在すること、妻が、子宮内膜症にり患しているため就職して収入を得ることが困難であり、離婚により精神的・経済的に苛酷な状況に置かれることが想定されることなど判示の事情の下では、上記離婚請求は、信義誠実の原則に反するものといわざるを得ず、これを認容することができない。

2007.10.06

不動産の値下げ販売をした場合の販売者の責任

売主の説明義務違反により慰謝料請求権を認めた例補充

不動産の値下げ販売をした場合の販売者の責任について、これを認める判決はあまり見当たらないといってよい。これに対し、先に紹介済みの最判平成16年11月18日民集58巻8号2225頁 判時1883号62頁は、慰謝料のみとはいえ、これを認めた点で、画期的ともいえる。
そこで、以下、値下げ販売との観点で、判例を整理してみた。

不動産の値引き販売の販売者の責任の法的根拠
① 値引をしない合意を否定した例
・ 大阪地決平成5年4月21日判時1492号118頁販売業者の担当者に、「値下げなど、資産価値を下げるようなことは絶対にしない。」等の言辞があったことは認められるが、それは、当時の地価の異常な高騰を背景とし、顧客に対する売買契約の誘引として、楽天的な価格動向の見通しを述べた単なるセールス・トークであり、販売業者において、将来の不動産市況の変動の有無にかかわらず、顧客との売買単価を下回る価格では他の区画 を分譲しないとの一方的な不作為義務を負担する旨の意思表示とみるには余りにも内容が曖昧であり、このような合意が成立したものと解することは到底できない。
・ 東京地判平成8年2月5日判タ907号18頁
販売業者の営業担当従業員の「値下げしない。」との発言などの言動は、いずれも、個々の顧客らとの間で、不動産市況の変化により不動産価格が下落したとしても、販売業者の当初設定価格を下回る価格で他の戸を分譲しないという不作為義務を販売業者が一方的に負担する旨の意思表示をしているものとみるにはあいまいすぎる言動というほかなく、これらをもって、売買契約締結に当たり、値引き販売をしないという合意、又は、値引き販売をした場合にはXらに損失を補償するという合意が成立したとは認められない。

② 信義則による余波効を否定した例
・ 大阪地決平成5年4月21日判時1492号118頁分譲住宅の売買契約の余後効は、この契約の信義則上の義務と観念されるが、これをわが民法においても承認するとしても、その価格が市況により変動することが予定されている市場性のある商品の売買契約において、その余後効的義務の内容として、当該商品の売買契約締結後(契約終了後)に、他の同種同等の商品をそれ以下の代金で売買することにより、間接的にその財産的価値を減少させることのないようにすべき義務まで包含するものと解することは到底できない。

・ 東京地判平成8年2月5日判タ907号18頁
一般に、不動産の価格は、需要と供給の関係で決まるものであり、不動産市況によって価格が変動することは自明の理ともいうべきことであるから、マンションの販売業者に、売買契約締結後に不動産市況の下落があってもなお当該販売価格を下落させてはならないという信義則上の義務があるとは認められない。

③ 値下げする可能性についての説明義務違反否定例
・ 大阪地判平成10年3月19日判時1657号85頁宅建業者である被告らにおいて、宅地建物取引業法に規定する重要事項の説明義務を負うものであることはいうまでもないことであるが、それ以上に不動産売買契約において売主側に信義則上の保護義務というものが観念されるとしても、不動産の価格が近い将来急激に下落することが確実で、そのことを専門の不動産業者である売主側のみが認識し、現に大幅な値下げ販売を予定しているのに、買主側には右事実を一切説明しないか、あるいはことさらに虚偽の事実を申し向けて不動産を高値で販売したというような事情があるのであればともかく、このような事情がないのに、売主において売買契約締結以後の地価の動向や将来の値下げ販売の可能性等につき、当然に買主に説明すべき法的義務があるとは考えられず(不動産の価格が需要と供給の関係や経済情勢等により変動するものであるだけに尚更である。)、右説明をなさなかったとしても、説明義務違反等の責任を負うものとは解し難い。

最判平成16年11月18日民集58巻8号2225頁 判時1883号62頁の事例の特徴
賃貸マンションの建替計画にあたり、賃借人らに賃借権を消滅させ、「優先購入条項」(書面あり)つき売買契約により売買した。
  ↓
 現実には、一般公募を当面せず。
  ↓
 一般公募の際には、大幅値下げ。
  ↓
 慰謝料請求のみ認める。
 

2007.10.05

暴力団組長の使用者責任(抗争事例)

民法715条1項は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」としている(使用者責任)。
そこで、暴力団の構成員が行った犯罪行為について、使用者責任の規定を利用して、階層的に構成される暴力団の上位者である組長等に損害賠償責任を負わせることができないかが問題となる。

この点につき、暴力団という組織体の特殊性から,①公序良俗に反する違法な活動であっても民法715条の「事業」に含まれるか、②暴力団構成員のいかなる行為が暴力団組長の事業と関連性を有するのか,③暴力団の構成員とその上位者との間の指揮監督関係をどのような場合に認めるのか。上位者が構成員の所属していた下部組織の組長ではなく、その上部組織の組長であった場合にも指揮監督関係を認めてよいのか等の点が解明される必要がある。

最高裁判所は、この点について、次のように判示して、上位組織の組長等に使用者責任を認めた(最判平成16年11月12日民集58巻8号2078頁 判時1882号21頁)。
「階層的に構成されている暴力団が、その威力をその暴力団員に利用させることなどを実質上の目的とし、下部組織の構成員に対しても同暴力団の威力を利用して資金獲得活動をすることを容認していたなど判示の事情の下では、同暴力団の最上位の組長と下部組織の構成員との間に同暴力団の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業について民法715条1項所定の使用者と被用者の関係が成立している。」
「階層的に構成されている暴力団の下部組織における対立抗争においてその構成員がした殺傷行為は、同暴力団が、その威力をその暴力団員に利用させることなどを実質上の目的とし、下部組織の構成員に対しても同暴力団の威力を利用して資金獲得活動をすることを容認し、その資金獲得活動に伴い発生する対立抗争における暴力行為を賞揚していたなど判示の事情の下では、民法715条1項にいう「事業ノ執行ニ付キ」されたものに当たる。」

賃借人の原状回復義務の範囲

賃貸借契約終了時にの賃借人の原状回復について、従来から、その範囲に争いが生じることが多かった。
敷金返還請求権から原状回復費として損耗部分の修復費用を控除できるのかとの問題として、賃借人側から敷金返還請求との形で提訴されることが多い。

この問題につき、 最判平成17年12月16日判時1921号61頁は、
「賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上、当然に予期されており、これについて賃借人に原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課することになるから、無効であり、有効となるためには通常損耗の範囲が賃貸借契約の条項自体に具体的に明記されているか、賃貸人が口頭で説明して、賃借人が明確に認識して、特約が明確に合意されていることが必要であるとして、当該事案については、特約が明確に合意されているものとはいえない。」として、敷金返還請求を認めた。

10月に入って(2007年)

10月に入り、急に涼しくなった。
一気に冬に向かって行く感じがする。

先週末、日弁連交通事故相談センターの青本の合宿があった。
今回の青本、全面的改訂がなされ、交通事故損害賠償法のハンディな解説書になるイメージ。

週があけ、弁護士会の臨時総会、司法委員、賃料増減請求事件、交通事故関連、告訴案件などを処理しつつ、週末を迎えた。
今日も 少し大きな損害賠償事件の打合せあり。

2007.10.03

サブリース契約と借地借家法32条

借地借家法32条1項は、
「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。」
とする。この規定によれば、仮に賃料増額に関する合意があらかじめあったとしても、当該賃料についての増減請求権は失われないことになる。
いわゆるサブリースの契約では、 賃借人は、賃貸人よりも不動産や金融に精通しており、賃貸人も不動産の賃貸業を営むというよりも、投資の一形態として、銀行から融資を受けるなどして土地上に建物を建て、これを賃借人に賃貸し、賃料から金利や租税・諸費用を控除した額を利回りとして受け取るという投資的な側面が強く、この関係に借地借家法32条を適用させることには、疑問もあるところである。

これに対し、最高裁判所は、次のとおり、サブリース事案といえども、借地借家法32条の適用があるものとして、賃料自動増額条項がある場合でも、賃料の減額請求ができるものとした。


最判平成15年10月21日民集57巻9号1213頁 判時1844号37頁不動産賃貸業等を営む甲が、乙が建築した建物で転貸事業を行うため、乙との間であらかじめ賃料額、その改定等についての協議を調え、その結果に基づき、乙からその建物を一括して賃料自動増額特約等の約定の下に賃借することを内容とする契約(いわゆるサブリース契約)についても、借地借家法32条1項の規定が適用されるとした。

2007.10.02

売主・宅建業者の説明義務

売主と宅地建物取引業者の説明義務に関する判例。
但し、これも少し特殊事案であるように思われる。

最判平成17年9月16日判時1912号8頁

マンションの一室の売買の際に、防火扉が作動していない状態で引渡され、その操作方法の説明等もなく、その後、室内での火事の際に、防火扉が作動しなかった事案で、売主には防火扉の操作方法の説明義務違反があるとし、仲介した宅建業者にも同様の義務があるとし、売主に売買契約の附随義務違反、宅建業者に不法行為責任を認めた例

2007.10.01

売主の説明義務違反により慰謝料請求権を認めた例

不動産の値下げ販売の例において、売主に損害賠償義務を認めた例は、ほとんどない。
最判平成16年11月18日民集58巻8号2225頁 判時1883号62頁は、かなり特殊な案件であるが、分譲住宅の譲渡契約の譲受人が同契約を締結するか否かの意思決定をするに当たり価格の適否を検討する上で重要な事実につき譲渡人が説明をしなかったことが慰謝料請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価すべきものとして、値下げ販売をした売主に慰謝料支払義務を認めている。

事実経過等は以下のとおり。
① 原告らは、もと公団住宅の賃借人、被告は旧住宅・都市整備公団。
② 被告による団地の建て替え事業の実施に当たって、原告らと被告との間の賃貸借契約を合意解除し、原告らは、賃借していた住宅を明け渡した。
③ 原告らと被告は、建替え後の団地内の分譲住宅につき譲渡契約を締結。
④ ②の建て替え事業の実施に当たり原告らと被告は、被告において原告らに対し分譲住宅をあっせんした後未分譲住宅の一般公募を直ちにすること及び一般公募における譲渡価格と原告らに対する譲渡価格が少なくとも同等であることを意味する条項のある覚書を作成。原告らは、譲渡契約締結の時点において、この条項の意味するとおりの認識を有していた。
⑤ ところが、被告は、譲渡契約時点において、原告らに対する譲渡価格が高額に過ぎることなどから、一般公募を直ちにする意思を有しておらず、かつ、原告らの認識を少なくとも容易に知り得たにもかかわらず、原告らに対し、一般公募を直ちにする意思がないことを説明しなかった。
⑥ ⑤により原告らは被告の設定に係る分譲住宅の価格の適否について十分に検討した上で上記譲渡契約を締結するか否かの意思決定をする機会を奪われた。
⑦ その後、被告は、未分譲住宅について,値下げをした上で一般公募をした。

以上の事情の下においては、被告が原告らに対し上記一般公募を直ちにする意思がないことを説明しなかったことは、慰謝料請求権の発生を肯認し得る違法行為と評価すべきであるとした。

判例評釈

超過利息と貸金業法

利息制限法の制限利息を超過する利息について、その元本充当の可否をめぐり、同法制定以来、判例の進化発展がみられた。
近時は、貸金業法によるみなし弁済規定と、利息制限法超出資法未満の高金利(いわゆるグレーゾーン金利)を合意した場合における、元本充当が主要な争点となってきていた。
この点に関し、下記⑤にみるような、画期的な最高裁判所判決があり、これをうけて、貸金業法は改正されて、グレーゾーン金利は撤廃されることとなった。そこで、貸金業法改正に至るまでの、利息制限法の制限利息に反する金利での貸付について、判例・法律の考え方を以下概観する。

①旧判例(後に②で変更される。)
超過利息を残存元本へ充当することは結果においてその返還を受けたと同一の経済的利益を生ずることになるから、利息制限法1条2項、4条2項に照らして許されない(最判昭和37年6月13日民集16巻7号1340頁)。

②判例変更
制限超過の利息、損害金は、利息制限法1条1項、4条1項により無効とされ、その部分の債務は存在しないのであるから、その部分に対する支払は弁済の効力を生じず、債務者が利息、損害金と指定して支払っても、制限超過部分に対する指定は無意味であり、結局制限超過部分は、元本が存在するときは、民法491条によりこれに充当される(最判昭和39年11月18日民集18巻9号1868頁)。

③元本充当の結果過払が生じた場合の処理
利息制限法1条2項、4条2項の規定は元本債権の存在することを当然の前提とするものであり、元本債権が既に弁済によって消滅した場合には、もはや利息、損害金の超過支払ということはあり得ないから、計算上元本が完済となった後に支払われた金額は、債権者の不当利得となる(最判昭43年11月13日民集22巻12号2526頁、最判昭和44年11月25日民集23巻11号2137頁)。

④みなし弁済
  貸金業法43条1項により、利息制限法の制限利率を超過して無効となる弁済であっても、同法17条書面(契約書面)と18条書面(受取書)の交付がなされ、任意になした弁済については、例外的に有効とした。

⑤ 期限の利益喪失条項とみなし弁済
最判平成18年1月13日民集60巻1号1頁 判時1926号17頁ⅰ 貸金業法18条1項により貸金業者が弁済を受けたときに交付すべき書面の記載事項についての内閣府令(貸金業法施行規則15条2項)は、法の委任の範囲を逸脱しており、無効である。
ⅱ 債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときに、当然に期限の利益を失する旨の約定は、利息制限法1条1項の趣旨に反し、無効である。
ⅲ ⅱの約定の下でなされた制限超過部分の支払は、特段の事情がない限り、任意性がない。


⑥貸金業法の改正によるグレーゾーン金利の廃止へ(平成18年12月)。
具体的には、
ⅰ みなし弁済制度の廃止(施行から2年半以内)
ⅱ利息制限法所定の制限利率(15%~20%)と出資法所定の上限利率(20%)の間の金利での貸付けについては、行政処分の対象とする。
ⅲ 日賦貸金業者及び電話担保金融の特例の廃止
など。
金融庁のサイトに改正の概要が掲載されている。


⑦超過利息分の元本充当による不当利得返還請求と悪意の受益者
最判平成19年2月13日判時1926号67頁)貸金業者に対する過払金返還請求の事案で、商行為である貸付に係る債務の弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において、悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は、民法所定の年5分と解するのが相当であるとされた。

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