遺産分割と果実の帰属
遺産分割について争いがある場合などでは、被相続人の死亡から遺産分割までの間に相当の日時を経過することとなるが、その間の相続財産たる不動産から生じる賃料の帰属については、従来考え方が分かれていた。共同相続人は、相続開始の時点から遺産分割がされるまで、遺産をその法定相続分の持分で共有することになる。反面、遺産分割の効力は、相続開始の時に遡って生ずる(民法909条本文)とされていることから、元物たる財産を取得した相続人に果実も帰属するとの考え方(遡及的帰属説)と果実自体共有されるとする考え方(共同財産説)との考え方の違いがあった。
この点、最判平成17年9月8日民集59巻7号1931頁 判時1913号62頁は、次のとおり、共同財産説の立場をとった。すなわち、
「遺産は、相続人が複数あるときは、相続開始時から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用収益した結果生ずべき金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解する。」
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