遺産分割がなされるまでの相続不動産と相続債権の性質
被相続人が相続開始の時において有した不動産を相続人の一人が単独名義に相続登記をし、被相続人の死亡後に相続人の一人が解約し、払戻しを受けた預貯金について、他の相続人が相続分に応じて被相続人の相続財産を相続していると主張して、不動産につき相続分に応じた持分の移転登記手続を求めるとともに、預貯金につき相続分に相当する金額の不当利得の返還を求めた事案について、
最判平成16年4月20日家月56巻10号48頁 判時1859号61頁は、
「相続開始後、遺産分割が実施されるまでの間は、共同相続された不動産は共同相続人全員の共有に属し、各相続人は当該不動産につき共有持分を持つことになる。したがって、共同相続された不動産について共有者の1人が単独所有の登記名義を有しているときは、他の共同相続人は、その者に対し、共有持分権に基づく妨害排除請求として、自己の持分についての一部抹消等の登記手続を求めることができるものと解すべきである(最高裁昭和35年(オ)第1197号同38年2月22日第二小法廷判決・民集17巻1号235頁、最高裁昭和48年(オ)第854号同53年12月20日大法廷判決・民集32巻9号1674頁参照)。
また、相続財産中に可分債権があるときは、その債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないと解される。したがって、共同相続人の1人が、相続財産中の可分債権につき、法律上の権限なく自己の債権となった分以外の債権を行使した場合には、当該権利行使は、当該債権を取得した他の共同相続人の財産に対する侵害となるから、その侵害を受けた共同相続人は、その侵害をした共同相続人に対して不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を求めることができるものというべきである。」
とした。
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