表明及び保証
M&Aの契約などで、表明及び保証条項を設ける例が多い。これは、契約締結前には、相手資産や業務等をデューデリジェンスにより調査するにしても、それには限界があり、また、デューデリジェンスの際に提出された資料に虚偽があった場合にそのリスクを買収側に負わせることはバランスを欠くことから、売主側に前提事実が真実であることを表明及び保証させ、事実と反する場合に生じた損害リスクの軽減を図る目的であると考えられる。
そして、表明及び保証条項は、近時、M&Aのみならず、一般の契約でも締結する際の前提事実が存在しないことが明らかとなった場合等のリスク回避の目的で、これを入れることが増えてきている。
以下の下級審の判例は、一つはM&Aの事例、もう一つは連帯保証契約の事例である。
M&Aの事例
東京地判平成18年 1月17日 判時1920号136頁
消費者金融会社の企業買収(M&A)を目的とする同社の全株式の譲渡契約中に、譲渡価格を同社の簿価純資産額より算出するとともに、株式の売主が買主に対し,同社の財務諸表が完全かつ正確であり、一般に承認された会計原則に従って作成されたものであること等を表明保証し,当該事項に違反した場合には、買主が現実に被った損害,損失を補償すること等を約していたところ、株式譲渡前の和解債権処理の方法が企業会計原則に違反しており、買主はそれにつき悪意重過失であったと認めることはできない等の場合には、売主は買主に対し、上記和解債権処理により不正に水増しされた株式の譲渡価格金額分について補償する義務を負うとされた。
連帯保証の事例
東京地判平成18年10月23日金法 1808号58頁
売掛金債務を連帯保証をする基本契約において、債権者が保証人に対して、債権者と主たる債務者との個別契約成立時に、主たる債務者が一切の債務について遅滞することなく、債務の本旨に従って、その履行がこれまでなされ、現在もなされていることなどを表明し,保証し、また、債権者には、主たる債務者が負担する金銭債務の支払の遅滞をするなどの事情が生じたときは、直ちに、債権者が連帯保証人に対し通知することが定められているにもかかわらず、実際には表明内容と異なり、また、遅滞の際の通知も怠った場合に保証人は、保証債務の責任を負わないとされた。
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