内縁関係と被害者側の過失
本年 被害者側の過失に関する新判例が出ているので、紹介する。
「被害者側の過失論」は、古典的には、過失相殺能力のない幼児等が被害者の損害賠償請求案件において、幼児に対する監督義務者の過失(例 目を離した。手をつないでいなかった等。)を被害者側の過失として過失相殺するための技法として論じられていたところと思う(最判昭和34年11月26日民集 13巻12号1573頁参照)。
判例理論は、幼児等に留まらず、「被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にある者の過失、すなわちいわゆる被害者側の過失をも包含するものと解される。」として、身分上、生活関係上、一体をなすとみられる関係にある者の過失をも被害者側の過失として過失相殺を認め、夫婦で同乗中の運転者夫の過失を、相手方と被害者妻との関係で、被害者側の過失として、過失相殺の対象とした(最判昭和51年3月25日民集 30巻2号160頁参照)。
これに対し、「自動車同士の衝突事故による損害賠償額を算定するに当たり、被害者と恋愛関係にある被害自動車運転者の過失を被害者側の過失として斟酌することは、許されないとしていた(最判平成9年9月9日判時 1618号63頁)。
また、職場の同僚の運転について、被害者側の過失とみることについては、これも否定した例がある(最判昭和56年 2月17日判時 996号65頁)。
最判平成19年4月24日判タ1240号118頁は、内縁関係の場合について、被害者側の過失論を適用した。すなわち、「内縁の夫の運転する自動者に同乗中に、第三者の運転する自動車との衝突により、傷害を負った内縁の妻が、第三者に対して損害賠償請求をする場合に、その賠償額を定めるに当たり、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる。」としたものである。
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