« 2007年12月10日から28日 | トップページ | 2007年(平成19年)を振り返って »

2007.12.29

中小企業退職金共済による退職金規定を上回る保険金についての返還合意の効力

中小企業退職金共済法にもとづく中小企業退職金共済に加入している企業は多い。この場合、企業の中には、中小企業退職金共済による給付額が、退職金規定で算出される退職金額を上回っている場合に、その差額を退職労働者から企業に返還させるとの合意をしている例がある。
このような合意の有効性については、企業が負担している共済金掛金を給与の一部と考えたとするとその対価としての共済金の一部を変返還させることになり、私は、給与全額払原則(労働基準法24条)との関係での疑問を持っている。
下記高裁裁判例は、同様の事案について、中小企業退職金共済法の制度趣旨に立ち返り、返還合意を無効とした。

東京高判平成17年5月26日労働判例898号31頁

従業員の福祉の増進を図るという中小企業退職金共済制度の趣旨、及び、事業主と勤労者退職金機構の間で退職金共済契約が締結されると被共済者(従業員)及び遺族は改めて受益の意思表示をすることなく当然に機構に対して退職金受給権を取得する(中小企業退職金共済法(平成14年法律100号改正前)5条)、被共済者が退職した場合には機構は被共済者又は遺族に直接退職金等を支給する(同法10条1項)、退職金等の受給権は原則として譲渡が禁止される(同法16条)、国は同制度の運営について各種の財政援助をする(同法10条2項、87条等)、等の規定内容に照らすと、被共済者の利益を保護しようとする同法の各規定は強行規定であると解するのが相当である。
会社と同社を退職する従業員との間で締結された、勤労者退職金機構から中小企業退職金共済制度に基づく解約金として同人に支払われる金額が会社の内規に従って算出した同人の退職金額を上回る差額について同人が会社に返還する旨の合意が、
(1)右合意は右解約金のうち返還対象となる部分について会社が従業員を介して機構からその支給を受けること、又は会社が従業員から当該部分の受給権の譲渡を受けることを約したに等しいものであり、中小企業退職金共済法5条・10条1項・16条及び同法に基づく中小企業退職金共済制度の趣旨を潜脱する強行法規違反である
(2)会社が共済掛金の損金算入等の点で国から一定の財政的援助を受けつつ、右従業員との間で使用者としての立場を利用して退職金共済契約の内容について正しい説明をすることなく本件合意を成立させたこと
等を考慮して、右合意は公序良俗違反にも該当するとして無効とした例。

« 2007年12月10日から28日 | トップページ | 2007年(平成19年)を振り返って »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13811/17509594

この記事へのトラックバック一覧です: 中小企業退職金共済による退職金規定を上回る保険金についての返還合意の効力:

« 2007年12月10日から28日 | トップページ | 2007年(平成19年)を振り返って »

2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ