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2008年2月

2008.02.25

高速道路での自損事故後車外で事故死した場合の搭乗者傷害保険の支払

平成20年2月20日 (財)日弁連交通事故相談センター東京都支部と日本損害保険協会との懇談会があり、その席で、同センター側として、担当のK弁護士がテーマとして出したのが、標記に関する最判平成19年5月29日判例タイムズ1255号183頁の事案であった。

この問題は、自損事故後別の事故で死亡した場合に搭乗者保険から保険金が支払われるかとの問題提起をしてしまうと、最高裁の結論が分からなくなってしまう。自損事故後の路上での死亡が自損事故と相当因果関係があるのかどうか との争点であると考えると最高裁の結論は至極当然と思えるところである。
もっとも、従来の保険実務では、このケースのような場合に必ずしも死亡保険金を給付していなかったとも思われ、搭乗者保険の実務において重要なケースである。

K弁護士の説明は大変わかりやすくレジュメもよくまとまっており、大変勉強になった。


事案は
「  (1) A(以下「A」という。)は,平成14年12月18日午後9時50分ころ,高速自動車国道である東北縦貫自動車道弘前線の上り車線で,普通乗用自動車(以下「本件車両」という。)を運転中,何らかの原因により運転操作を誤って,本件車両を中央分離帯のガードレールに衝突させるなどし,その結果,本件車両は,破損して走行不能になり,走行車線と追越車線とにまたがった状態で停止した(以下,この事故を「本件自損事故」という。)。本件自損事故の現場は,その付近に街路灯等がなく,暗かった。
 Aは,本件自損事故後すぐに本件車両を降り,小走りで走行車線を横切って道路左側の路肩付近に避難したが,その直後に本件車両と道路左側の路肩との間を通過した後続の大型貨物自動車に接触,衝突されて転倒し,更に同車の後方から走行してきた大型貨物自動車によりれき過されて死亡した。
  (2) Aが勤務していた株式会社Bは,被上告人との間で,被上告人を保険者とし,本件車両を被保険自動車とする自家用自動車保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結していた。
 本件保険契約に適用される自家用自動車保険契約普通保険約款には,搭乗者傷害条項(以下「本件搭乗者傷害条項」という。)があり,同条項には,次のような定めがあった。
   ア 被上告人は,被保険者が保険証券記載の自動車(以下「被保険自動車」という。)の運行に起因する急激かつ偶然な外来の事故により身体に傷害を被った場合は,この搭乗者傷害条項及び一般条項に従い,所定の保険金を支払う。
   イ この搭乗者傷害条項において被保険者とは,被保険自動車の正規の乗車装置又は当該装置のある室内(隔壁等により通行できないように仕切られている場所を除く。)に搭乗中の者をいう。
   ウ 被上告人は,被保険者が前記アの傷害を被り,その直接の結果として,事故の発生の日からその日を含めて180日以内に死亡した場合は,被保険者1名ごとの保険証券記載の保険金額の全額を死亡保険金として被保険者の法定相続人に支払う。法定相続人が2名以上である場合は,被上告人は,法定相続人に対し,法定相続分の割合により上記死亡保険金を支払う。
  (3) 本件保険契約において,保険証券記載の死亡保険金の額は被保険者1名につき1000万円とされていた。 」
という例で、Aの相続人が死亡保険金の請求をした。
第一審(仙台地大河原支判平成18年3月9日(認容))と原審(仙台高判平成18年8月30日(棄却))と結論が分かれていたが、

最高裁判所第三小法廷は、
「本件搭乗者傷害条項によれば,「被保険自動車の正規の乗車装置等に搭乗中の者」が被保険者とされており,同条項に基づく死亡保険金は,「被保険者が,被保険自動車の運行に起因する急激かつ偶然な外来の事故(以下「運行起因事故」という。)により身体に傷害を被り,その直接の結果として死亡した場合」に支払われることになっている。
 前記事実関係によれば,Aは,被保険自動車である本件車両を運転中,何らかの原因により運転操作を誤り本件自損事故を起こしたというのであるから,Aは上記死亡保険金の支払事由にいう被保険者に,本件自損事故は運行起因事故にそれぞれ該当することが明らかである。
 そして, 前記事実関係によれば,本件自損事故は,夜間,高速道路において,中央分離帯のガードレールへの衝突等により,本件車両が破損して走行不能になり,走行車線と追越車線とにまたがった状態で停止したというものであるから,Aは,本件自損事故により,本件車両内にとどまっていれば後続車の衝突等により身体の損傷を受けかねない切迫した危険にさらされ,その危険を避けるために車外に避難せざるを得ない状況に置かれたものというべきである。さらに,前記事実関係によれば,後続車にれき過されて死亡するまでのAの避難行動は,避難経路も含めて上記危険にさらされた者の行動として極めて自然なものであったと認められ,上記れき過が本件自損事故と時間的にも場所的にも近接して生じていることから判断しても,Aにおいて上記避難行動とは異なる行動を採ることを期待することはできなかったものというべきである。そうすると,運行起因事故である本件自損事故とAのれき過による死亡との間には相当因果関係があると認められ,Aは運行起因事故である本件自損事故により負傷し,死亡したものと解するのが相当である。
 したがって,Aの死亡は,上記死亡保険金の支払事由にいう「被保険者が,運行起因事故により身体に傷害を被り,その直接の結果として死亡した場合」に該当するというべきである。
 たしかに,Aは後続車に接触,衝突されて転倒し,更にその後続車にれき過されて死亡したものであり,そのれき過等の場所は本件車両の外であって,Aが本件車両に搭乗中に重い傷害を被ったものではないことは明らかであるが,それゆえに上記死亡保険金の支払事由に当たらないと解することは,本件自損事故とAの死亡との間に認められる相当因果関係を無視するものであって,相当ではない。このことは,本件自損事故のように,運行起因事故によって車内にいても車外に出ても等しく身体の損傷を受けかねない切迫した危険が発生した場合,車内にいて負傷すれば保険金の支払を受けることができ,車外に出て負傷すれば保険金の支払を受けられないというのが不合理であることからも,肯定することができる。本件搭乗者傷害条項においては,運行起因事故による被保険者の傷害は,運行起因事故と相当因果関係のある限り被保険者が被保険自動車の搭乗中に被ったものに限定されるものではないと解すべきである。」
として、保険会社の死亡保険金支払義務を認め、原判決を破棄した。


2008.02.22

最近の新法令

2008年2月19日

とある会合で、最新トピックス~今年は何がどう変る(法務分野)~とのタイトルで、最近の新法令について話す機会を与えられた。
そこで、ざっと、確認してみたところ、気になる法律がかなりあった。
以下のとおりだがこれで全部はフォローしているとはいえない。
また、知財分野いついては、弁理士の先生がいらっしゃる前提であったので、時に確認の対象としていなかったので、その分野をも入れるとここのところの立法・法改正は激しいものがある。
私が気になるのは、消費者法分野と競争法分野。一言で言うと「フェアに取引しましょう!」という発想の法であり、今後の事例の集積が注目される。

 

1 組織法分野
・ 内部統制関連
 ○ 新会社法(平成17年5月1日施行)の内部統制システム構築義務
 ○ 金融商品取引法の内部統制報告書制度(平成20年4月1日から適用)
・ 株券電子化
 ○ 社債、株式等の振替に関する法律による株券電子化(平成21年1月実施予定)
2 取引法分野
・ 建築・不動産法分野
○ 改正建築基準法(平成19年6月20日施行)による構造計算審査制度の導入など
○ 借地借家法改正(平成20年1月1日施行)による事業用借地期間の延長化
○ 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(未施行)
・ 証券・金融商品分野
 ○ 金融商品取引法の完全施行(平成19年9月30日)により旧証券取引法より規制対象を拡大し、かつ、規制を強化
 ○ 新信託法の施行(平成19年9月30日)
・ 金融分野
 ○ 改正貸金業法、出資法によるグレーゾーン金利撤廃の全面適用(平成21年6月ころまでに施行)
・ 競争法分野
 ○ 改正私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(平成18年1月4日施行)による課徴金制度・課徴金減免制度・公取の犯則調査権限・審判制度の改正等
・ 消費者法分野
 ○ 改正消費生活用品安全法施行(平成19年5月14日)
 ○ 改正消費者契約法の施行(平成19年6月7日)による適格消費者団体による差止請求制度
 ○ 特定商取引法による行政処分の増加傾向
3 労働法分野
・ 労働実体法分野
 ○ 労働契約法(平成20年3月1日施行)
・ 労働手続法分野
 ○ 労働審判法(平成18年4月1日施行)

2008.02.10

賃貸人からする期間途中解約合意の有効性(その2)

賃貸人からする期間途中解約合意の有効性と題して、中途解約合意の有効性を否定する裁判例と6ヶ月程度の期間を予告期間とした場合の中途解約合意の場合についての裁判規範としては、正当事由の存在を前提に解約の効力が認められるであろうこと、但し、中途解約の場合、期間満了の場合や期間の定めない場合よりも、正当事由の解釈がより一層厳格とされるべきではないかと述べた。
また、新たに賃貸借契約を作成する場合において、賃貸人からする6ヶ月の予告期間を入れての中途解約合意を入れることの妥当性については、もとより、裁判規範としては、無効とは解されず、上述のとおり正当事由の存在を前提として有効性が認められるものの、定期借家契約との対比等からもかような合意をすることは妥当とはいえないのではとの趣旨を述べた。
近時、勤務弁護士から、賃貸人側からの契約案としては、賃貸人からする6ヶ月の予告期間を入れての合意解約条項を入れるべきではないかとの問題提起があった。確かに、かような規定を入れておけば、正当事由が認められる場合に中途解約ができ、一見便宜かもしれない。しかし、普通建物賃貸借においては、かような賃貸人からする中途解約申入れをした場合、結局は正当事由の存否をめぐる争いが生じることになり、逆に賃借人が争わない場合にはそもそも賃借人は合意解除に応じるであろうから、このような規定を入れる積極的意味はないように感じている。
また、中途解約時に正当事由が具備されることには難易度が高いことを前提に考えると、賃貸人からする中途解約による契約終了の場面は相当程度に限定されると思われ、賃貸人側に判断の誤りを誘発する可能性も懸念されることから、やはり、かような条項は賃貸人側として提案する場合にもあえて入れるべきではないのではないだろうか。
もっとも、現実にかような合意をした場合にこれを無効と解するものではないことについては、前述のとおりである。

ところで、高齢者の居住の安定確保に関する法律に定める終身建物賃貸借制度においては、62条において、「認可事業者(≒賃貸人)による終身建物賃貸借の解約の申入れ」として、「終身建物賃貸借においては、認可事業者は、次のいずれかに該当する場合に限り、都道府県知事の承認を受けて、当該賃貸借の解約の申入れをすることができる。」として、
 一 認可住宅の老朽、損傷、一部の滅失その他の事由により、家賃の価額その他の事情に照らし、当該認可住宅を、第五十八条第二号に掲げる基準等を勘案して適切な規模、構造及び設備を有する賃貸住宅として維持し、又は当該賃貸住宅に回復するのに過分の費用を要するに至ったとき。
 二 賃借人(一戸の認可住宅に賃借人が二人以上いるときは、当該賃借人のすべて)が認可住宅に長期間にわたって居住せず、かつ、当面居住する見込みがないことにより、当該認可住宅を適正に管理することが困難となったとき。」
に同条2項により、「借地借家法第28条の規定(正当事由要件の規定)は、前項の解約の申入れについては、適用しない。」としており、一定の場合の賃貸人からする中途解約を認めている。
しかし、これは高齢者の居住の安定確保という特殊な目的から、賃貸人からの中途解約を認め、かつ、正当事由要件を緩和したものであり、かつ、中途解約の場合に都道府県知事の承認を要することとして濫用にも一定の歯止めをかけているものであって、同法の存在によっても一般的な契約で賃貸人からする中途解約契約合意を予め入れておくことを妥当とすべきものではないと考える。

2008.02.09

2008年1月25日から2月9日のお仕事

(行政事件)
・ 建築確認取消請求事件(被告側)

(民事一般)
・ 建物明渡請求事件(調停・借主側)
・ 遺留分減殺請求事件
・ 地代増額請求打合せ(地主側)
・ 家賃減額請求打合せ(借主側)
・ 借地非訟・借地権譲渡承諾請求(借主側)


(民事交通事故)
・ 電話相談
・ 物損事故相談
・ 示談あっせん
・ 紛争処理機構関連

(民事建築)
・ 損害賠償請求

(商事)
・ 株主総会打合せ
                                                                   
(その他)
・ 司法修習生修習終了式 懇親会後事務所そばの居酒屋にて事務所有志弁護士にて送別会
・ 簡裁司法委員
・ 弁護士会選挙 日弁連会長選挙と東京弁護士常議員選挙があり、私は某派閥の幹事長をしている関係で、常議員選挙の票読み。        

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