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2008.11.29

建築基準法施行令1条1号の「一の建築物」とは(その2)

先に、「建築基準法施行令1条1号の「一の建築物」とは(東地判平成13年2月28日判時1748号110頁をめぐって)」として、エキスパンションジョイントで接続した建物について、の一建物性についての上記判例を紹介した。この論点については、その後も時折,建築審査会に対する審査請求事案や取消訴訟において争点となるようであり,東京地判平成19年9月27日(裁判所ウエッブサイト・平成18年(行ウ)482号事件)もこの争点についての事案であった(一の建築物肯定例)。同判決は,
「ア 建築基準法施行令1条1号は,一つの敷地に建築することができるのは原則として「1の建築物」であるとし(一建築物一敷地の原則),例外として用途上不可分の関係にある「2以上の建築物」を一つの敷地に建築することができると定める。建築基準法は,敷地の接道義務(43条1項),容積率及び建ぺい率の制限(52条,53条),隣地斜線制限及び北側斜線制限(56条),日影制限(56条の2)など,都市計画実現の一環として,都市環境の整備及び保護を図るために建築物の用途,密度,形態及び規模について建築規制を行うための規定による制限を敷地単位で行うものとしており,一建築物一敷地の原則は,上記各制限を実効あらしめる役割を有している。」とした上で、1の建築物といえるための基準については、
「 建築物がいかなる場合に「1の建築物」に当たるかという点については,建築基準法及び同法施行令等にこれを定めた規定はない。そして,「1の建築物」が建築基準法による上記規制を実効あらしめるための重要な概念であることにかんがみれば,ある建築物が「1の建築物」に当たるか否かについては,建築基準法の趣旨を踏まえて,社会通念に基づき各事案ごとに決せざるを得ないが,同法施行令1条1号が「1の建築物」と定めていることからすると,建築基準法の趣旨を踏まえて,社会通念に照らし,構造上,外観上及び機能上の各面を総合的に判断して,一体性があると認められる建築物は,「1の建築物」に当たると解するのが相当である。」とした。
そして、具体的事案についての当てはめについては,
まず本件建物の構造について、「 (ア) 本件高層棟と本件低層棟とは,地下1階部分の構造体が約6.9mの幅で隣接しており,本件低層棟の1階,2階及び3階部分は,約3m離れてはいるものの,本件低層棟には,幅員約4.4又は2m,長さ約3mのコンクリート製の渡り廊下(いずれも開放されている。)が設置されており,この渡り廊下がエキスパンション・ジョイントにより本件高層棟と接続されている。
 本件高層棟と本件低層棟との各地下1階の構造体の位置関係及び1階から3階までの位置関係に加え,本件低層棟が地下1階地上5階の建物であるが,本件低層棟の住居の共用廊下は4階部分までしかないところ,本件高層棟と本件低層棟とは,その大部分である1階から3階までがいずれも渡り廊下及びエキスパンション・ジョイントにより接続されていることからすれば,本件高層棟と本件低層棟とは,構造上の一体性を否定されるものではなく,構造上それぞれ独立した建物であるとまではいえない。」とした。
 ついで、外観についても,「上記各事情に併せて本件高層棟の3階部分までは本件低層棟側に延びている形状をしており,本件高層棟と本件低層棟とが接続していることは外観上も看取できることからすると,外観上において同様である。」として,外観上の一体性を認めた。
 そして,機能の面については,「 (イ) 本件高層棟には,メインエントランス(ホール,事務所受付,インフォメーションセンター),ラウンジ,ロビー,集会コーナー,郵便箱,宅配箱,駐車場が設置され,他方,本件低層棟にはサブエントランスが二つ,バイク置場,駐輪場が設置されており,本件低層棟及び本件高層棟の住民は,上記本件高層棟と本件低層棟との間の渡り廊下等を利用してこれらの各施設を相互利用する構造であるといえる。特に,本件高層棟の住民が自転車を利用して移動する場合及び本件低層棟の住民が自動車を利用して移動する場合には,いずれも,本件低層棟駐輪場や通路又は本件高層棟の駐車場及び車路を利用しなければならないといえる。なお,本件低層棟には,2か所にサブエントランスが設置されているが,これらのサブエントランスには,インフォメーションセンター,事務所受付といった設備がなく,また,いずれも幅員約3mの道路にしか接続しておらず,事務所受付,インフォメーションセンターといった設備を有し,ラウンジやロビーといった共益施設へも近接しており,かつ,幅員16.67mの道路と接続しているメインエントランスに比べるとエントランスの機能面でみても,明らかに劣っているといわざるを得ない。出入口に隣接することが便宜な郵便箱や宅配箱等がメインエントランスの利用者により利用しやすい位置に設置されていることを併せ考慮すれば,上記サブエントランスは,いずれもメインエントランスの機能を補うために設けられた出入口にすぎず,本件高層棟のみならず本件低層棟の住民らも,主たる出入口としても上記メインエントランスを利用することを企図して設置され,他方,メインエントランスでは補いきれない住民らの利用上の便宜に応える観点から,各サブエントランスが補助的に設置されたものといえる。
 さらに,本件高層棟地下1階又は1階に配置された集会コーナー,ゴミ置場,受水・排水施設,受電施設,事務室は,いずれも本件低層棟の住民らの集会,ゴミの搬出,上下水道の利用,電気の利用,施設管理に用いられることとなるものであり,上記施設が本件低層棟の使用,維持,管理において不可欠な施設であるといえる。
 そうすると,本件高層棟と本件低層棟とは,機能上において一体のものであるといえる。」として、機能上の一体性も認めた。
 なお、原告らが、「「1の建築物」といえるためには,渡り廊下で接続されている建物相互には構造力学上の一体性を有しないため,機能上,外観上一体の建物として計画されているかが問題となるところ,本件高層棟と本件低層棟は,それぞれ独立したエントランスを有すること,本件低層棟3階の渡り廊下には屋根がなく,2階部分の屋根を通路としたものにすぎず,実質的には本件高層棟と本件低層棟とは外観上2層のみにより接続しているにすぎないことからすれば外観上の一体性はなく,また,共同住宅の場合には各棟ごとで独立した機能を有しており,用途上も可分であるといえるとし,本件建築物は「1の建築物」ではなく,また,用途上不可分な「2以上の建築物」にも該当しないと主張」している点については、「エキスパンション・ジョイントは,構造体を物理的に分離する方法によって力学上応力を加えず,接続する構造同士の構造力学に影響を与えないようにすることを意図してなされる接続方法であること,エキスパンション・ジョイントによる接続方法も今日の建築に多用されているものであることからすれば,上記エキスパンション・ジョイントにより接続された建物同士の構造上の一体性を検討する場合に構造力学上分離されていることのみを根拠としてこれを否定することはできないと解すべきである。」として,エキスパンションジョイントによる構造力学上の分離性をもっても構造上の一体性ありとみることと矛盾しないとしつつ,エントランスについては,「本件低層棟に設置されたサブエントランスは,上記(イ)のとおり,メインエントランスに取って代わるものではなく,あくまでも補助的に配置されたものであるといえる。さらに,証拠(略)によると,本件低層棟3階の渡り廊下には,手すりや階段がコンクリートにより設置されていることは外観上も明らかであって,本件高層棟の屋外庭園に併設して設置される通路に接続するのであるから,渡り廊下や本件高層棟の通路部分に屋根がないことのみから,外観の上で本件高層棟3階と本件低層棟3階部分が接続していることが否定されるものではない。」として排斥した。

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