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2009.02.21

老朽した賃貸ビルの修繕義務不履行にもとづく損害賠償請求の範囲

老朽化して浸水事故等により当該ビルの賃借人がビルを利用できないという場合に,賃貸人に対する修繕義務の履行請求がどの程度まで認められるのかについて,最二判平成21年1月19日 裁判所HP 平成19年(受)第102号は,次のように判示して営業損害の全ては損害賠償の対象ではないことを明らかにした。
「賃貸借契約に基づきY1(中小企業等協同組合法により設立された協同組合)から建物の引渡しを受けてカラオケ店を営業していたXが,浸水事故により同建物で営業することができなかったことによる営業利益喪失の損害を受けたなどと主張して,Y1に対して債務不履行又は瑕疵担保責任に基づく損害賠償を求めるとともに,Y1の代表者として同建物の管理に当たっていたY2に対して民法709条又は中小企業等協同組合法38条の2第2項(平成17年法律第87号による改正前のもの。以下同じ。)に基づく損害賠償を求める本訴請求に対し,Y1が,賃貸借契約は解除により終了したなどと主張して,Xに対して同建物の明渡し等を求める反訴請求がなされた事案において,
「老朽化して大規模な改修を必要としていた本件ビルにおいて,Y1が修繕義務を履行したとしても,Xが賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続し得たとは必ずしも考え難い。また,本件事故から約1年7か月を経過して本訴が提起された時点では,店舗部分における営業の再開は,いつ実現できるか分からない実現可能性の乏しいものとなっていたと解される。
他方,Xが本件店舗部分で行っていたカラオケ店の営業は,本件店舗部分以外の場所では行うことができないものとは考えられないし,Xは,平成9年5月27日に,本件事故によるカラオケセット等の損傷に対し,合計3711万6646円の保険金の支払を受けているというのであるから,これによって,Xは,再びカラオケット等を整備するのに必要な資金の少なくとも相当部分を取得したものと解される。そうすると,遅くとも,本件本訴が提起された時点においては,Xがカラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を何ら執ることなく,本件店舗部分における営業利益相当の損害が発生するにまかせて,その損害のすべてについての賠償をY1らに請求することは,条理上認められないというべきである。」として,店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った営業利益相当の損害について,賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降は被った損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできない。」
なお,上記の時期までの認められるべき損害の額については,さらに審理を尽くさせるため,事件は高等裁判所に差し戻された。
なお,本件では,賃借人(X)がカラオケセット等については損害保険に加入しており,保険金の支払により営業再開が可能であることが,損害額限定の理由のひとつになっており,賃貸事業において賃貸人としては,賃借人所有物件に損害保険をかけてもらう内容の契約をしておくことが有用であることも示している。

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