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2009年4月

2009.04.05

譲渡禁止特約に反して債権譲渡をした債権者は、譲渡の無効を主張できるか?

債権の履行担保の目的で、債務者が有する債権の譲渡を受ける場合がある。
この場合、債務者と第三債務者との間で、譲渡禁止特約をしている場合があるが、これに反して、譲渡担保その他を理由として債権譲渡がなされた場合、債務者(譲渡債権の譲渡人)は、この債権譲渡が譲渡禁止特約に反することを理由に譲渡の無効を主張できるか。

近時 類似のケースがしばしばあり、気になる論点であったところ、下記のとおり最高裁判所がこの論点を含む事件の判決をなした。譲渡禁止特約は第三債務者の利益のための合意であることから、第三債務者が無効主張をすることが明らかでない場合は、譲渡禁止特約に違反して債権譲渡をなした譲渡人は、この無効主張をなしえないとするものである。
事案では、債権者不確知を理由に供託がなされていることから、無効主張する意思があきらかでないとしているところ、実務的にはこのような場合は供託されることが多いことから、債権譲渡を担保にとることの有効性に資する判決といえる。

最判平成21年 3月27日事件番号 平19(受)1280号 裁判所ホームページ http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37486&hanreiKbn=01


「1 被上告人が上告人に譲渡した請負代金債権について,債務者が債権者不確知を供託原因として供託をした。本件本訴は,被上告人が,上記請負代金債権には譲渡禁止特約が付されていたから,上記債権譲渡は無効であると主張して,上告人に対し,被上告人が上記供託金の還付請求権を有することの確認を求めるものであり,本件反訴は,上告人が,被上告人に対し,上記債権譲渡が有効であるとして,上告人が上記供託金の還付請求権を有することの確認を求めるものである。
 2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
  (1) 被上告人は,平成17年3月25日に特別清算開始決定を受け,同手続を遂行中の株式会社である。
 上告人は,会員に対する貸付け,会員のためにする手形割引等を目的とする法人である。
  (2) 被上告人と上告人は,平成14年12月2日,被上告人が上告人に対して次のア記載の債権の根担保としてイ記載の債権を譲渡する旨の債権譲渡担保契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
   ア 被上告人と上告人との間の手形貸付取引に基づき,上告人が被上告人に対して現在及び将来有する貸付金債権及びこれに附帯する一切の債権
   イ 被上告人がA(以下「A」という。)に対して取得する次の債権のすべて
    (ア) 種類  工事代金債権
    (イ) 始期  平成14年6月2日
    (ウ) 終期  平成18年12月2日
    (エ) 譲渡債権額  1億5968万円
  (3) 被上告人は,Aに対し,上記(2)イ記載の債権に含まれる第1審判決別紙債権目録記載1ないし3の工事代金債権(以下,「1の債権」,「2の債権」などといい,これらを併せて「本件債権」という。)を取得した。
  (4) 本件債権には,被上告人とAとの間の工事発注基本契約書及び工事発注基本契約約款によって,譲渡禁止の特約が付されていた。
  (5) Aは,平成16年12月6日に1の債権について,平成17年2月8日に2の債権について,同年12月27日に3の債権について,それぞれ債権者不確知を供託原因として第1審判決別紙供託金目録記載1ないし3の各供託金額欄記載の金員を供託した。
 3 原審は,次のとおり判断して,被上告人の本訴請求を認容し,上告人の反訴請求を棄却すべきものとした。
 債権の譲渡禁止特約に反してされた債権譲渡は無効である。本件債権には譲渡禁止特約が付されており,その譲渡についてAの承諾があったと認めることはできないので,本件契約に基づく本件債権の譲渡(以下「本件債権譲渡」という。)は無効である。上告人は,本件債権譲渡の無効を主張できるのは債務者であるAだけであると主張するが,そのように解することはできない。
 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
  (1) 民法は,原則として債権の譲渡性を認め(466条1項),当事者が反対の意思を表示した場合にはこれを認めない旨定めている(同条2項本文)ところ,債権の譲渡性を否定する意思を表示した譲渡禁止の特約は,債務者の利益を保護するために付されるものと解される。そうすると,譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者は,同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張する独自の利益を有しないのであって,債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであるなどの特段の事情がない限り,その無効を主張することは許されないと解するのが相当である。
  (2) これを本件についてみると,前記事実関係によれば,被上告人は,自ら譲渡禁止の特約に反して本件債権を譲渡した債権者であり,債務者であるAは,本件債権譲渡の無効を主張することなく債権者不確知を理由として本件債権の債権額に相当する金員を供託しているというのである。そうすると,被上告人には譲渡禁止の特約の存在を理由とする本件債権譲渡の無効を主張する独自の利益はなく,前記特段の事情の存在もうかがわれないから,被上告人が上記無効を主張することは許されないものというべきである。
 5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。これと同旨をいう論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上説示したところによれば,被上告人の本訴請求は理由がなく,上告人の反訴請求は理由があるというべきであるから,第1審判決を取り消した上,本訴請求を棄却し,反訴請求を認容することとする。」

2009.04.02

株主代表訴訟による所有権移転登記手続請求

会社法847条1項は
6箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第189条第2項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第423条第1項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え、第120条第3項の利益の返還を求める訴え又は第212条第1項若しくは第285条第1項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。
とし、3項は、
株式会社が第1項の規定による請求の日から60日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。

としている。
この責任追及の訴え(株主代表訴訟)が、会社法423条の取締役等の責任を追及する場合に限られるのかは、旧商法267条の時代から争点となっていたが、今回最高裁判所が、以下のとおり、所有権移転登記手続請求にも及ぶことを明らかにした。

葉玉弁護士のサイトに解説がある。

最三判平成21年03月10日 平成19(受)799 所有権移転登記手続請求事件(一部破棄差戻し,一部棄却)
裁判所ホームページ http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37404&hanreiKbn=01

裁判要旨
Aの株主であるXが,Aの買い受けた土地について,同社の取締役であるYに所有権移転登記がされているなどと主張して,Yに対し,平成17年法律第87号による改正前の商法267条1項の規定に基づき,Aへの真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続をすることを求める株主代表訴訟において,同条項にいう「取締役ノ責任」には,取締役の地位に基づいて取締役に負わせている厳格な責任のほか,取締役が会社との取引により負担した債務についての責任も含まれると判示。

昭和25年法律第167号により導入された商法267条所定の株主代表訴訟の制度は,取締役が会社に対して責任を負う場合,役員相互間の特殊な関係から会社による取締役の責任追及が行われないおそれがあるので,会社や株主の利益を保護するため,会社が取締役の責任追及の訴えを提起しないときは,株主が同訴えを提起することができることとしたものと解される。そして,会社が取締役の責任追及をけ怠するおそれがあるのは,取締役の地位に基づく責任が追及される場合に限られないこと,同法266条1項3号は,取締役が会社を代表して他の取締役に金銭を貸し付け,その弁済がされないときは,会社を代表した取締役が会社に対し連帯して責任を負う旨定めているところ,株主代表訴訟の対象が取締役の地位に基づく責任に限られるとすると,会社を代表した取締役の責任は株主代表訴訟の対象となるが,同取締役の責任よりも重いというべき貸付けを受けた取締役の取引上の債務についての責任は株主代表訴訟の対象とならないことになり,均衡を欠くこ
と,取締役は,このような会社との取引によって負担することになった債務(以下「取締役の会社に対する取引債務」という。)についても,会社に対して忠実に履行すべき義務を負うと解されることなどにかんがみると,同法267条1項にいう「取締役ノ責任」には,取締役の地位に基づく責任のほか,取締役の会社に対する取引債務についての責任も含まれると解するのが相当である。

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