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2010.10.24

大家さんのための賃貸借の法務 第2回 居住用建物賃貸借締結の実務(その2)

NPO法人日本地主家主協会 の会員向けニューズレター「和楽」に平成22年1月から12月(予定)まで 建物賃貸借関連の論考を 投稿した。同協会の了解も得て、順次、このブログに掲載中である。

今回は、第2回
契約締結に関する続き。家賃関連の合意のあり方を書いている。

前回は、居住用賃貸借での規制の存在とそれを前提に考えていかざるを得ないこと、賃貸借契約締結にあたっては、契約内容の明確化、書面化などについて述べた。今回も賃貸借契約締結に関して引き続き、賃料の設定、賃貸借の種類などについての実務上の注意点を述べたい。

1 なんといっても賃料は大事。高すぎると空き室率が上がってしまうが、安すぎても問題がある。適正な額の賃料を設定すべき。 

 賃料収入を得ることが大家さんにとっての居住用建物賃貸借の目的であるので、賃料をどうするかは最大の関心事であろう。紛争予防という観点からは、適正な賃料での賃貸借の締結が当事者双方にとり、有益である。当初の契約で、空き室を減らしたいなどの理由で、近隣の賃料の額などより低廉な額での賃料での合意をしてしまう場合がある。このような場合、適正額より低いとして、途中で適正額まで増額できるかというとそう簡単には行かないことが多い。低い賃料にした何らかの事情が変更になったといえるかとの観点から増額を認めるか否かを考えることになることが多いからである。
  適正な賃料は、鑑定をすればもっとも正確であろうが、費用の問題もあり、賃料相場や建物取得原価などによる簡単な査定をして決めていることが多いと思われる。また、管理費用を賃料に含めるのか別とするのか、水道光熱費は別であるとするのか等細かい点にわたるが、後にトラブルのきっかけとなる事項をつぶしておくことも重要である。
  なお、毎年賃料が自動的に増額するような合意をしたい場合がある。しかし、このような賃料の増減についての何らかの約束をしても、後述の定期建物賃貸借の場合以外は、借地借家法は、賃料が、土地や建物に対する固定資産税・都市計画税などの租税公課の増減、土地や建物の価格やその他の経済的事情の変動、近傍同種の建物の賃料に比べて不利な賃料となった場合などは、契約の条件にかかわらず、当事者から賃料の増減を請求できるとしている(借地借家法32条1項)。したがって、賃料自働増額合意は効力がないとはいえないものの、合意とおりの増額ができなかったり、減額請求がなされることを防げなかったりすることがあるので注意を要したい。

2 更新型建物賃貸借か定期建物賃貸借か。 

 借地借家法で保護されている賃貸借期間の面での賃借人の保護を更新をしないものとして、契約期間の保護だけとするのが定期建物賃貸借である。定期建物賃貸借にすることにより、更新型建物賃貸借(普通建物賃貸借ということもある。)による法定更新(賃貸人が更新を拒絶した場合でも、正当事由が認められない限り、更新が強制される制度)が排除される点(借地借家法38条1項)、更新型賃貸借では無効とされる賃料増額事前合意が有効となる(同条7項)などの賃貸人に有利な面が多々ある反面、契約締結などが要式化しており借地借家法規定どおりの手続を経ないと定期建物賃貸借とは認められず普通建物賃貸借とされてしまう。また、200平米未満の物件の場合には、一定の場合に賃借人からする中途解約が認められる(同条5項)などの賃貸人にとり甘受しなければならない点もある。
  更新強制がはずれる点、定期建物賃貸借が有利とも考えられるが、賃料の額等を含めて総合的に検討して、決定すべきであろう。また、スライド制賃料などの賃料増額事前合意をする場合は、定期建物賃貸借とすべきと思われる。ただ、注意を要するのは、定期建物賃貸借といえども、期間満了時はもとより、賃料不払により契約解除した場合でも、契約が終了したとして、鍵を換えたり、賃借人の物品を外に出すなどの自力救済は許されないということである。

3 では、定期建物賃貸借とする場合はどうするのだろうか。  

定期建物賃貸借とする場合、「契約の更新がないこととする」旨の合意をすることになるが、この合意を有効とするための手続的な要件として、① 賃貸人が、賃貸借契約締結前にあらかじめ、賃借人に対して、「契約の更新がないこと」、「期間の満了により終了すること」を記載した説明書面を交付して、説明をすること(借地借家法38条2項)、② 更新がないことの合意を含む賃貸借契約全体を書面ですることが必要であり(同条1項)、合意のとおり、期間の到来による終了の効果を発生させるための手続的な要件として、③ 契約期間が1年以上である場合は、期間満了の1年から6カ月前までに期間満了により賃貸借が終了する旨の終了通知をしなければならない(同条4項)。
  これらの①乃至③のいずれかが欠けても、期間満了による賃貸借契約終了という定期建物賃貸借の効果は生じない。

☆まとめ 
 大家さんにとっての一番の関心事は、家賃の額かもしれないが、適正賃料の設定をこころがけておかないと後に増額は困難である。定期建物賃貸借により、終期は明確になり、賃料の増額合意も可能となるが、契約締結の仕方が定まっておりこれに反すると普通建物賃貸借とされてしまうし、終了についても終了通知を怠ると、期限どおりには終了させられなくなるので注意を要する。

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