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2010.10.30

大家さんのための賃貸借の法務 第3回 居住用建物賃貸借締結の実務(その3)

NPO法人日本地主家主協会 の会員向けニューズレター「和楽」に平成22年1月から12月(予定)まで 建物賃貸借関連の論考を 投稿した。同協会の了解も得て、順次、このブログに掲載中である。
今回は、第3回
契約締結に関し、礼金、更新料、敷金など、家賃以外の金銭のやりとり関連の合意について書いている。

1 礼金や更新料の問題点  

礼金とは、不動産の賃貸借契約の締結の際に賃借人が賃貸人に対して支払う一回払いの料金である。関東地方で授受される例が多い。
  更新料とは、賃貸借契約の期間が満了した場合、契約の更新にあたって賃借人から賃貸人に支払われる金銭である。
  礼金や敷金については、個人の居住者への賃貸借の場合、消費者契約法との関係が問題になる。同法は、事業者である貸主と消費者である借主との間に適用があるが、同法10条では、
・民商法の規定以上に消費者の権利を制限し、又は義務を加重する条項で(要件A)、
・信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの(要件B)、
は無効としている。
  礼金の性質は、①賃貸借契約締結への謝礼、②賃料の前払い、③退去後の空室期間に賃料が得られないことへの補償、④自然損耗に関する原状回復費用などと言われている。また、更新料の性質は、①賃貸人の更新拒絶権放棄の対価、②賃借権強化の対価、③賃料の補充などと言われている。民法では、賃貸借契約の借主の金銭負担に関する義務は、賃料だけであるから、礼金や更新料を支払うという合意は、見方によっては、民法以上に義務を加重するといえなくもない。また、物件の内容や賃料額と比べて、著しく高額な礼金や更新料には、消費者の利益を一方的に害するといえる場合もあろう。

2 有効な礼金や更新料合意をするにはどうすべきか。 

 礼金・更新料の有効性については、更新料につき高裁の判断がわかれており、最高裁判所判決の判断がまたれるところである。現時点でいえるのは、短期の賃貸借期間かつ低廉な家賃であるにも関わらず、突出して高額な礼金や更新料の授受を合意した場合、無効との判断をしやすいという点である。また、礼金や更新料の意味について、契約前に説明がないときも、無効判断の呼び水になる。そこで、礼金や、更新料をやめて、賃料の額に加算することも考えられるが、礼金や更新料による月額賃料低額化のメリットを生かし、性質が賃料であるとの事前説明の下、適切額を授受する約束をすることで有効性を認められないかと考えている。
  高等裁判所の更新料判決
大阪高等裁判所平成21年8月27日判決 判時2062号40頁  更新料無効判決
大阪高等裁判所平成21年10月29日判決 判時2064号65頁  更新料有効判決
大阪高等裁判所平成22年2月24日判決 消費者法ニュース84号223頁  更新料無効判決


3 敷金合意での注意

  敷金とは、不動産の賃貸借の際、賃料その他賃貸借契約上の債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する停止条件付返還債務を伴う金銭である。
敷金については、賃借人の債務を担保するための預かり金として、合理性の説明がしやすい。もっとも、賃料額や賃貸借期間に比して、高額敷金を預かる例については、担保としての敷金の合理性に疑問が出る場合もあるので、この点は注意が必要である。賃貸借終了時の敷金充当の問題については、後に原状回復時の負担区分について述べる際に、触れることとする。
  関西地方でみられる合意として、敷引がある。敷引とは、賃貸住宅入居の際、敷金や保証金の名称で借主から貸主に対して支払われる預り金を、退去時に借主の債務の有無に係らず、一定割合を差し引いて返還することをいう。敷引については、現実の消耗や毀損の有無に関わらず、一定割合を差し引いてしまう点で、消費者の利益を一方的に害するものとして消費者契約法違反としている裁判例が多数みられるところである。

 高等裁判所の敷引無効判決
①大阪高等裁判所平成18年5月23日判決 裁判所ウエッブサイト
②大阪高等裁判所平成21年6月19日判決 公刊物未掲載

☆まとめ
 今回は、賃貸借契約でみられる礼金、更新料、敷金の合意について述べた。礼金や更新料、さらに敷引きについては、無効とする考え方があり、大家さんとしては戸惑う点が多いと思う。他方で、月額賃料を高額化しないという点で、賃借人にとってのメリットとなっている面もあり、契約時、更新時に賃料としての実質であることを明示して合意を得るなどの工夫の余地もあると思われる。また、判例の動いている分野でもあり、契約条項作成の際に、専門家への相談をしていただきたい。 以 上

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