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2010.10.17

大家さんのための賃貸借の法律実務第1回(居住用建物賃貸借締結の実務その1)

NPO法人日本地主家主協会 の会員向けニューズレター「和楽」に平成22年1月から12月(予定)まで 建物賃貸借関連の論考を 投稿した。同協会の了解も得たので、順次、このブログに転載(一部改定する場合があります。)したい。

まずは、第1回
契約締結について。


 賃貸借とは、賃貸人が賃借人に対して賃貸物件の使用収益を認め、賃借人はその対価(地代・家賃)を支払うことを内容とする契約をいう(民法第601条)。居住用建物賃貸借では、民法、借地借家法、消費者契約法などの法律が登場する。基本は、民法にあり、借地借家法が、第三者に対する効力や賃貸借期間の面での賃借人の保護を、消費者契約法が、消費者である賃借人の利益を不当に害しないか等の観点での賃借人の保護を、はかっているのが居住用建物賃貸借をめぐる法状況である。それゆえ賃貸人にとっては、自らに不利であると感じる場面も少なくない。ところで、賃貸借契約をめぐり、できる限り無用な紛争が生じないようにすること、紛争が生じた場合でも解決が容易であることが、重要である。たとえ、不利益な制度と感じることがあっても、これらの法制度を前提とした紛争予防的な賃貸借契約を締結し、運用していくべきであり、ひいては、そのことが賃貸人の利益につながる。以上を踏まえ、まず、3回ほどにわたり、居住用建物賃貸借契約を締結する際の留意点を検討する。

1 一番大事なことは目的物の特定と当事者の特定および契約の明確性。

  賃貸人が賃借人に何を貸して、賃料を受け取るのか、目的物が明確となっていなければ、争いが起こったときに、どの物件についての争いかも不明確となってしまう。対価が支払われているのかいないのかさえ不明となることもある。家賃増額請求をする場合や減額請求をされた場合に基準面積が不明となることもある。家賃不払いなどを理由とする明渡し等の裁判をする場合は、特定することが必要である。
  また、誰が誰に貸しているのかが不明確では、賃貸借が有効に成立しているのか、義務違反が起きているのか、誰に賃料を請求したらよいのか、誰が賃料を受け取ればよいのかなど全てが不明確になってしまう。これでは紛争が頻発する。
  根拠が曖昧なままに、共有部分等に賃借人の所有物が置いてあるような場合や契約書の賃貸人とは別の者が賃料を受け取っていたり、賃借人とは別の者が居住していたりすることがある。これでは既に紛争が発生している状態というべきである。

2 書面での作成を必ず行う。特約には注意を!  

紛争予防の観点からは、当然ながら、賃貸借契約は「賃貸借契約書」という形で書面とする必要がある。また、定期建物賃貸借では、書面で作成することが要件ともなっている(借地借家法38条1項)。書面による場合、住宅宅地審議会の答申による賃貸住宅標準契約書や宅地建物取引業協会などの業界団体が作成したものなどのひな型を使うことで、条項にもれはないと思われる。ただし、後に触れるように、更新料条項などその効力について解釈が分かれることがあることも承知しておく必要がある。
  書面を作成する目的は、紛争予防にある以上、その契約文言等は明確で一義なものとする必要がある。ひな型を用いる場合は、一応の明確性が確保できると思われるが、注意を要するのは「特約条項」である。たとえば、居住用の賃貸借であったはずなのに、賃借人の要望に応えて、特約条項中で居住室内での物品販売を容認していたために、店舗化してしまい、これが契約違反かどうかが争われる例などがある。また、不具合箇所について特約等で明確にしなかったため、引渡し後瑕疵ある建物として、賃貸人に修繕等を請求される例がある。

3 まとめ
  居住用賃貸借では、民法、借地借家法、そして消費者契約法などの規制があり、結果、賃借人が保護され、賃貸人に不利であるかのようであるが、賃貸人としてもそれを前提に考えていくことが重要である。
  賃貸借契約締結にあたっては、目的物・当事者を特定して契約内容を明確にすること、書面にすること、ひな型を使う場合も、特約をどうするかに注意を要することが重要である。

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