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2010.11.21

大家さんのための賃貸借の法務 第4回 居住用建物賃貸借期間中管理の実務(その1)

NPO法人日本地主家主協会 の会員向けニューズレター「和楽」に平成22年1月から12月(予定)まで 建物賃貸借関連の論考を 投稿した。同協会の了解も得て、順次、このブログに掲載中である。今回は、第4回
賃貸借期間中の問題に関し、延滞の問題について書いている。

前回まで3回にわたり、居住用賃貸借締結の際に気になる点について、述べた。今回からは、賃料の延滞や期間中解約、更新などの賃貸借期間中に生じる問題についての考え方を述べる。

1 賃料の延滞への基本的対応
  居住用賃貸経営の目的は、家賃収入を得ることにある。空き室になったり、延滞がおきたりしたのでは、その目的が達成できない。空き室への対策としては、募集家賃を下げるなどしながら、広告活動をすることになろうが、延滞対策には困難が伴う。近時、延滞家賃のデータベース(現在は、社団法人全国賃貸保証業協会 によるものがある。)が構築されつつあるが、全件が登録されているわけでないことはもとより、最初から延滞するような詐欺的賃借人は格別、延滞は、賃借人の勤務先会社の状況その他の外的要因でも起こるので、データベースにより延滞排除ができるとまでは言えない。
結局のところ、延滞への基本的対応としては、延滞した賃借人や連帯保証人への催促につきる。
  多くの大家さんは、家賃の支払いについては、毎月末日まで翌月分支払いの方式をとっていることが多いと思われる。また、敷金についても通常2カ月分程度預かっていよう。そのことから、催告がおくれがちになっている例も散見する。
  とりわけ、連帯保証人については、ほとんどの場合、もはや取り返しのつかない状態になる頃に始めて滞納家賃を請求していることが多い。
  なお、時折、借地借家法による借家人の保護を延滞問題や延滞による明渡が困難な理由とする方がいるが、同法も延滞借家人の保護をするものではなく、同法といえども延滞借家人の保護はしていないことを確認しておきたい。

2 催促の方法
  延滞家賃催促の方法としては、①面談。②電話 ③文書 ④配達証明付内容証明郵便 などの方法がある。一般には、②電話によっても、不在であったり、①面談もできないことから、やむなく③文書によるもの例が多いと思われる。
  私は、当初の段階から、③文書、特に④配達証明付内容証明郵便で行うことを提案したい。望まないことではあるが、催促を尽くしても延滞が解消せず、やむなく明けてもらうという段になり、後に述べるように、従前催促していたかという事実も明渡しを容易にするための重要な要素であるからである。
  文案等については、弁護士や協会に相談していただきたいが、基本は、「何年何月分の家賃が入金されていないので、○日までに入金していただきたい。」という催促文言を入れることになる。「○日まで」と日限を明らかにすることも重要である。
  内容証明郵便とは、送った手紙内容、配達依頼の日、発信人、受取人を、郵便局が証明してくれる郵便である。さらに配達証明をつければ、受取人にいつ配達されたのかも証明してもらえる。1行20文字以内、1枚26行以内で3通書くとか、訂正の方法とか特殊な書式があることから、これも弁護士や協会に相談していただきたい。

3 催促しても支払いがない場合どうするか。
  かつては、不払賃借人が不在の間に、鍵を交換してしまい、新しい鍵をもらいに物件管理者や大家さんのところに賃借人が訪問する機会に鍵交換代と滞納家賃を支払わせるなどの強硬な方法をとる例があった。
  しかし、このような方法は違法な自力救済として許されない。
  さらに、本年3月に「賃借人の居住の安定を確保するための家賃債務保証業の業務の適正化及び家賃等の取立て行為の規制等に関する法律案」が、国会に議案提出され、現在審理中である。
同法は、賃貸住宅の家賃等に係る債権の取立てに関して不当な行為が発生する等の家賃の支払に関連する賃借人の居住をめぐる状況にかんがみ、賃借人の居住の安定の確保を図るため、家賃債務保証業や家賃等弁済情報提供事業者の登録制度等による規制、家賃等に係る債権の取立てに関する不当な行為の規制をする目的であって、賃貸業を営む大家さんも規制の対象となる。
  同法では、鍵の取替などの賃借人が住戸に入れないようにする行為、住戸内の物品の持ち出し、深夜早朝などの電話・訪問などを禁止し、違反者には懲役も含む罰則を予定している。
  
4 法的回収の方法
  しかし、実際には、催促しても支払わない賃借人やそもそも文書による催促を受け取らない賃借人も存在する。そこで、契約違反者に対応していたはずの大家さんの側がかえって違法違反と言われないための法的回収方法を考えておく必要がある。
  弁護士に請求代理を依頼することも一案であろうが、コストとの兼ね合いもあろう。
  明渡請求を伴わない不払家賃の回収については、簡易裁判所の支払督促制度を利用することができる。支払督促とは、債権者の申立てに基づき、債務者に金銭の支払等をするよう督促する旨の裁判所書記官による命令であり、債務者が異議を出すと一般の訴訟に以降するものの、異議が出ない限り、債権者の申立とおりに命令がなされ、債務名義を得ることができる。債務名義とは、強制執行によって実現されるべき債権の存在および範囲を公的に証明した文書である。これがあれば、滞納賃借人の勤務先等に対する給与の差押その他の強制執行を申し立てることができる。
  もっとも、延滞の回収は時間との戦いの側面があり、手数を踏んでいる間に滞納が積み重なり、もはや滞納の解消というよりも明渡を求めるべき場合もあろう。そうなると支払督促により、家賃を払わせるというよりも、明渡の方向で動く方が妥当なことが多いであろう。この点については、項を改めたい。
  
☆ まとめ
  今回は、賃貸期間中に生じる問題として、家賃の滞納とそれに対する対応策について述べた。延滞問題は大家さんにとり、もっとも悩ましい問題である。以上述べてきたものの、本当の解決策にはなってはいないともいえる。本来は、政府に家賃補給等の対応策を望みたいところであるが、現状は不十分である。一定の滞納率が存在することを前提に家賃額を設定し、延滞も一定額以上になれば明渡対応をせざるを得ないであろう。
以 上

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