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2011.01.05

大家さんのための賃貸借の法務 第8回 居住用建物賃貸借期間中管理の実務(その5)

NPO法人日本地主家主協会 の会員向けニューズレター「和楽」に平成22年1月から12月まで 建物賃貸借関連の論考を 投稿した。同協会の了解も得て、順次、このブログに掲載中である。今回は、第8回。

今回は敷金の差押、賃借人の破産など、賃借人側に生じる問題について述べる。

1 敷金の差押とその対応について
  賃借人の借金の返済滞納その他の理由で、敷金返還請求権につき、差押の通知が届くことがある。
  この場合、敷金返還の際は、賃借人ではなく、差押債権者に返還するべきことになる。注意を要するのは、返還する時期と金額である。
  まず時期だが、敷金は、賃貸借期間についての賃借人の全債務を担保していることから、賃貸借期間中には未だ返還時期には至らず、賃貸借が終了し、かつ、賃借人の明渡が完了した時点で、返還すれば足りる。そこで、差押されても、ただちに賃借人の債権者に返還する必要はない。
  ついで、返還金額だが、これも、敷金全額を返還すべきとは限らない。往々にして、家賃の支払いも滞納していればこれを控除し、通常の損耗を超える破損等がある場合には、原状回復費用を控除できることもありえる。そこで、敷金から滞納賃料や賃借人が負担すべき原状回復費用を充当し、その残を差押債権者に支払えばよい。
  通常、差押の通知と同梱されている陳述書用紙に、賃貸借継続中であること、滞納賃料と原状回復費用を充当後残ある場合は支払うことを記載して提出する。明渡時点で、充当すべきことになるが、その後、債権者と連絡をとるか、供託することになる。残がなければ、充当後残なしであることを債権者に通知しておいてはどうか。
  
2 敷金差押を理由として賃貸借契約を解除できるか。
  敷金差押のみを理由としては、賃貸借契約解除は困難である。多くの賃貸借契約には、賃借人に「差押」がなされた場合を解除事由としている。にもかかわらず、賃料の延滞なく他にも特段の問題ない場合、敷金差押のみで解除は認められない。しかし、敷金差押がなされている場合、賃料の延滞も生じていることが多い。賃料の延滞と敷金差押の事実などが相俟って、賃借人との間の信頼関係が破壊されたとして、契約解除が認められる場合がある。

3 賃借人が倒産した場合の対応について
  次に、賃借人が倒産した場合の対応について述べる。
  まず、賃借人が弁護士を通じて任意整理を開始するなど倒産手続に入った場合、賃貸借契約の解除条項で解除できるかであるが、倒産のみでは、解除は困難である。この場合も、賃料の延滞など他の事由とのあわせわ、契約解除の可否を考える。
  次に、賃借人が破産した場合はどうか。破産法では、賃貸借のような双方未履行の双務契約(賃貸人の将来の貸す義務と、賃借人の将来の賃料債務が少なくとも未履行)の場合、破産管財人に履行するのか、解除するのかの選択権が与えられ、賃貸人としては、どちらを選択するのか催告することができることになる。催告にこたえなければ、解除とみなされる。履行となった場合には、破産管財人に今後の賃料を支払ってもらうことになる。
  もっとも、多くの賃借人破産では、破産管財人が就任することのない同時廃止の案件である。この場合、解除までなしうるかは賃料の延滞等を伴っているかどうかによる。延滞なければ、破産しても解除はできない。この点は、民事再生開始の場合も同様と考える。
  このように、倒産だけでは、解除とはならないが、他方、単なる延滞より、信頼関係破壊の度合いが大きいことも間違いない。契約自体に解除事由とされていること、延滞の状況(回数や延滞額)となどの事情により、契約解除も検討すべきである。
  なお、個人の自己破産の場合、破産経過によっては、賃借人にはもはや仕事もなく、生活保護を受けるべきこともある。このような場合、生活保護費の中に、家賃扶助があり、その枠内の賃料の場合は、賃借人が生活保護を受けることで、賃料の支払いが確実となる場合もある。  
以 上

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