« 大家さんのための賃貸借の法務 第6回 居住用建物賃貸借期間中管理の実務(その3) | トップページ | 大家さんのための賃貸借の法務 第8回 居住用建物賃貸借期間中管理の実務(その5) »

2011.01.02

大家さんのための賃貸借の法務 第7回 居住用建物賃貸借期間中管理の実務(その4)

NPO法人日本地主家主協会 の会員向けニューズレター「和楽」に平成22年1月から12月まで 建物賃貸借関連の論考を 投稿した。同協会の了解も得て、順次、このブログに掲載中である。今回は、第7回.


今回も前回に引き続き、居住用賃貸借期間中に生じる問題をテーマとする。今回は、少し、視点を変えて、万が一、賃貸物件に抵当権を設定している銀行から、賃料の差し押さえがなされた場合の対応について述べる。
1 賃料の差し押さえとは
  土地にアパートその他の建物を建築し、賃貸住宅事業を営もうとする場合、銀行その他の金融機関から建築資金の融資を受け、土地及び建物に抵当権を設定することになると思われる。
 空き室の発生、あるいは、賃借人との紛争が生じた結果としての賃料の供託、賃料未払いなどの結果、借入金の返済が、予定どおりになされないことは、残念ながらないとはいえない。
 返済の遅滞が一定程度継続すると、抵当権者である金融機関は、賃料の差し押さえをして、債権回収をはかろうとすることがある。
 この場合、裁判所から、賃借人に「抵当権者が賃料を差押えたので、賃料は賃貸人に払ってはならない」旨の差押通知が届き、更に、抵当権者から賃借人には、今後は、差押権者である抵当権者に払うようにとの取立通知が届くことになり、以後、大家さんには、賃料が入らないことになる。

2 賃料の差し押さえに対する対応
  賃料差押がなされた場合、抵当権者の取立を妨害する行為については、執行妨害罪と(刑法96条の2)なる場合があるので、そのような方法で対応することは慎むべきである。執行妨害の具体的実例については、敢えてかかないが、ご注意いただきたいところである。
 そこで、賃料差押に対しては、執行妨害とはならない方法で対応する必要がある。
たとえば、賃借人との間で長年の供託金があり、これを充てることで、債務の弁済が一応できる場合には、供託金の還付を受け、債権者に弁済する代わりに執行取下げするとの示談を検討すべきであろう。
その他、融資金の返済方法を変えてもらうことで一回の返済額を実態に合致したものにして、その返済開始と引き換えに、執行を取り下げてもらうとの方法もあると思われる。

3 差し押さえの進行を停止させる法的方法
  差押をしている抵当権者との話し合いがうまく進捗しない場合、その間にも賃料の差押さえは継続していくので、大家さんとしては、まさに糧道を断たれた状態であるので、そのままにしておくことは、生活にも支障が出てくることがあり得る。
  そこで、執行停止の方法を考えなければならないであろう。差押の決定をしてきた裁判所に執行停止のための公的な書類を出すことで、執行は一時停止することができる。上述のような話し合いを前提とする場合に考えられるものとしては、話し合いを簡易裁判所の調停で行うこととして、調停申立をしたうえで、民事調停規則にもとづく、執行停止の申立をするという方法がある。すなわち、民事調停規則はその6条で、調停事件について、紛争の実情により事件を調停によって解決することが相当である場合には、調停の成立を不能または著しく困難とするおそれがあるときに限り、調停が終了するまでの間、調停の目的になった権利に関する民事執行手続を停止することができるとしている。なお、本件は抵当権にもとづく家賃の差押を想定したが、公正証書にもとづく執行についても同様である。これに対し、判決や支払督促にもとづく執行の場合には、民事調停規則の執行停止を求めることはできないので、念のため。執行停止の申し立てを受けた裁判所は、一定の額の担保を提供させて執行停止の決定をすることになる。
  その他、差押禁止債権の範囲の変更を申し立てることも考えられる。たとえば、賃料のうちの共益費的部分についてまで差押されてしまうと、建物の維持管理さえもできないことになってしまう。そこで、執行をしてきた裁判所に申立をして、差押命令の全部または一部の取消を求めることが考えられる。
これらの手続きは、かなり技術的要素を伴うので、弁護士に相談すべきと思われる。
以 上

« 大家さんのための賃貸借の法務 第6回 居住用建物賃貸借期間中管理の実務(その3) | トップページ | 大家さんのための賃貸借の法務 第8回 居住用建物賃貸借期間中管理の実務(その5) »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13811/50469882

この記事へのトラックバック一覧です: 大家さんのための賃貸借の法務 第7回 居住用建物賃貸借期間中管理の実務(その4):

« 大家さんのための賃貸借の法務 第6回 居住用建物賃貸借期間中管理の実務(その3) | トップページ | 大家さんのための賃貸借の法務 第8回 居住用建物賃貸借期間中管理の実務(その5) »

2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ