AB共同して行っていた暴走行為車両の同乗者Bの被害事故について、暴走運転者Aの過失を被害者側の過失として、考慮することができるか(その4)。 (最近の交通事故判例~平成20年から22年の最高裁判決を中心に(その8))
③ 検討
(1)被害者側の過失論
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる(民法722条2項)。
民法722条2項の被害者の過失には、 被害者本人の過失のみならず、被害者側の過失も含む(最高裁昭和34年11月26日判決判時206号14頁【34】)。
(2)被害者側の過失の従来の考え方
A 被害者と被用者・使用者の関係にある者である場合
民法715条(使用者責任)の裏返しのような考え方
使用者が加害者側にたった場合、被用者の過失について責任を負わされるのであるから、使用者が被害者側にたった場合も過失相殺においては、同様に被用者の過失について相応の負担をするのが公平であり、被用者の過失を被害者側の過失として斟酌するべき。
B 被害者と身分上ないしは生活上一体をなすと見られるような関係にある場合
ア 肯定判例
ⅰ 夫婦 最判昭51年3月25日 民集30巻2号160頁 【35】
(夫の運転する自動車に同乗する妻が第三者と夫の過失の競合による交通事故で負傷した事例)
ⅱ 内縁の夫婦 最判平成19年4月24日判時 1970号54頁 【36】
イ 否定判例
ⅰ 職場の同僚 最判昭和56年2月17日 判時996号65頁【37】
ⅱ 恋愛関係 最判平成9年9月9日 判時 1618号63頁 【38】
(3)最高平成20年7月4日判決の「被害者側の過失論」
ⅰ 従来の判例は、「財布は一つ」=「身分上、生活関係上、一体となすと見られるような関係」といえる場合に「被害者側の過失」を認めている。
ⅱ 本件では、ともに暴走行為を行った に過ぎず、「財布は一つ」とまではいえない。
本件での特殊事情 → 単なる同乗者ではない。
本件事故発生時点ではたまたまAが運転しておりBは同乗者にすぎないが、 B自身も、交代運転していた時間帯もあり、共同行為者とみれる事情があるといえそうである。
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