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2011.02.24

大家さんのための賃貸借の法務 最終回 居住用建物賃貸借終了の実務(その4)・まとめ

NPO法人日本地主家主協会 の機関紙「和楽」からの転載の最終回。前回は、賃料不払による終了について述べた。次回は最終回を飾る記事として、無断譲渡・無断転貸について述べ、また、全体のまとめを試みる。

1 無断譲渡・無断転貸には、いち早く中止の告知を。
  民法612条(「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」とする。)が、禁ずるまでもなく、大家さんが知らない間に、第三者に賃借人が代わっていたり、賃借物を又貸しされていたりすることは、全く想定していないと思う。そして、このような場合、これをやめてもらうよう告知すべきだし、民法はそのような告知なくとも契約を解除してよいとしている。ある意味当たり前の規定ともいえる。
  ただ、時折、譲渡または転貸を放置したまま、長年経過してしまっている例を見ないではない。そうなると、いわゆる「黙認」したと同様となり、もはや「無断」とは言い難くなってしまう。無断譲渡や無断転貸はもし発見したら、即時に行動をとるべきであろう。
  しかも、判例は、無断譲渡や無断転貸といえども、信頼関係を破壊するに至らないような態様については、解除まではなしえないとしている。そこで、例えば、家屋を賃借していた場合にその一部を短期間第三者に貸したような場合に、これを無断転貸として、契約解除を認めるのは、躊躇する。
  反面、私は、無断転貸ではなく、ある居住用物件について、明渡しの訴訟をする前に、仮処分をしたところ、いつの間にか風俗嬢数人での共同使用となっており、仮処分は本来の賃借人との間でしか効力生じなかったとの例を経験している。その後の訴訟では問題なく、強制執行できたものの、常日頃から物件の管理は密にし、万が一、賃借人以外の者の使用を発見したら、事情を問い合わせの上、原則譲渡や転貸を停止してもらうとした方が心配は少ないであろう。

2 全体のまとめ
  12回にわたり、「大家さんのための賃貸借の法務」と称して、居住用物件の賃貸借をめぐる問題について、契約締結時の問題、契約期間中の問題、そして契約終了時の問題と大きく分けて述べてきた。
  この間、何度か触れたように、賃貸借の世界は、本来は、賃貸人と賃借人との間の自由な契約関係が基本にあるはずでありながら、借地借家法、消費者契約法などが両者間を規制しており、これらの規制は大家さん側が強者、借家人側が弱者であるとの見方を前提に、借家人側を保護する方向でなされていることから、大家さん側が法的知識に乏しいと不意打ちを食らったかのような結論になってしまうことがある。さらに、国会審議中の、「賃借人の居住の安定を確保するための家賃債務保証業務の適正化及び家賃等の取立行為の規制等に関する法律」が立法されると、ますます、大家さんの側は窮屈になると考えられるかもしれない。
  私は、日本の多くの大家さんは、実は、たまたま取得した一棟のアパートやマンションを賃貸経営していたり、節税対策なのかマンションの一室のオーナー程度の規模であって、経済的強者とまでは言えないであろうとの実感を持っている。にもかかわらず、法は、借家人を経済的弱者とみて立法していくので、結果として、強者と弱者が逆転したかのような現実がある。
  この点、法を批判するのはたやすい。しかし、現実に、借地借家法や消費者契約法がある以上、それを前提とした中で、いかに、自らを守っていくかを考えることの方が大事であると考えている。賃借人の居住の安定を確保するための家賃債務保証業務の適正化及び家賃等の取立行為の規制等に関する法律が立法された場合には、この法律についても同様である。そのためには、これらの法とその運用実務を大家さんの方こそ、知っておくべきである。そのような考えの下、一年にわたり、居住用賃貸借の法務について述べてきた。私の論考が少しでも、大家さんたちの借家経営のヒントとなり、安定した経営となっていくのであれば、幸いである。


以 上

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