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2011.02.18

大家さんのための賃貸借の法務 第11回 居住用建物賃貸借終了の実務(その3)

引き続き、NPO法人日本地主家主協会 の機関紙「和楽」からの転載。

前回は、正当事由が問題となる期間満了や解約による終了について述べたが、今回は、賃料不払による終了について、次回は無断譲渡・無断転貸による解除について述べ、まとめを試みたい。

1 1回の家賃不払いでただちに明渡を請求できるか。
  家賃不払いで明渡を請求するためには、契約を解除する必要がある。契約解除には、家賃不払いが解除できるだけの債務不履行に該当していることが必要である。家賃は、賃貸物件を経営している大家さんにとっては、「血」であり、これが途絶えては、利益どころか、建物管理費、固定資産税等の必要経費や銀行への支払いも滞る。そこで、一度でも家賃不払いがあれば、即契約を解除して賃借人に明渡をして欲しいが、そう簡単にはいかない。
多くの賃貸借契約では、「一度でも家賃の不払いある場合は、賃貸人は何ら催告なくして、この賃貸借契約を解除できる。」としている。そもそも、家賃の不払いは、賃借人の重要な債務を履行していないのだから、約定をまたずしても、債務不履行に該当する。
  ところが、裁判例は、一度の家賃不払いでは、解除までは認めていない。一度不払いがあったとしても、それは、当事者の間の信頼関係を破壊するほどの不履行とはいえないとみられることが大半だからだ(最高裁判所昭和39年7月28日判決がリーディングケース。)。大家さんからみれば、一度でも不払いあれば、この賃借人は信用できず、信頼関係は破壊されていえよう。ただ、裁判所の考える信頼関係は、より客観的に支払回復の余地ないか、不払がこれからも続くのかというような具体的事情によって判断される。賃料を一度だけ遅れるということは、債務不履行には違いないが、回復しないとはいえず、解除事由としては不十分とされる。私も、不払いが続いているが高額保証金が預託されていた事案で、最終的には明渡判決を得たものの、そこに至るまで苦労した経験がある。
  
2 解除事由あるといえる不払いはどの程度の場合か。
  では、どの程度、家賃が不払いが続くと解除が認められるのか。法律に定めあるわけではないが、裁判例で債務不履行解除を認めているものは、3回以上連続して不払いの場合や、頻繁に不払いが生じて累積額が数カ月分にも及んでいる場合などに多い。ただ、この点、敷金や保証金でどの程度担保されるかということや、従来の賃料をめぐる賃貸人と賃借人との交渉経過、賃料額の適切性などとも密接に結びついており、単に、延滞月数や延滞額だけに着目しても正解は得られない。

3 解除事由ある場合の解除の手続き(催告の要否)
  民法での契約解除の手続きは、相手方に相当期間を定め、履行の催告をし、その後、催告期間内に支払いないときに限り、解除するものとしている。賃貸借契約の解除でもその点は同様である。ところで、冒頭の例のような「一度でも家賃の不払いある場合は、賃貸人は何ら催告なくして、この賃貸借契約を解除できる。」というような、いわゆる無催告解除の特約がある場合、これにより、ただちに解除したいところである。
  この点、裁判例は、信頼関係破壊の程度との兼ね合いで、無催告解除の可否を決している(最高裁判所昭和50年11月6日判決など)。無催告解除の合意自体は有効にできるが、その適用は、契約解除できるに足りるまでに信頼関係が破壊された場合に限定されるとの理解である。

4 まとめ
  以上のとおり、大家さんにとっては、家賃不払いの場合にでも簡単に解除できないといういささか、不満な内容をあえて書いたが、裁判例での解除が認められるかどうかというのは、事後的な判断であることを忘れるべきではない。たとえば、裁判例では解除事由としては認め難い1、2回の延滞の場合も、解除が認められないとして放置すべきではなく、どこかのタイミングで催告解除の手続きをとるべきと考える。それで、支払いが回復すればよいが、回復しないまま経過すると、結局は、裁判例の認めている信頼関係が破壊する程度の不払いに至ることになる。放置せずに回収を試みた経過も判断材料になると考える。催告解除を試みることは、それが、支払いへのきっかけになる場合もあり、実務的にも有意義な行動であると考える。
以 上

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