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2011.02.05

大家さんのための賃貸借の法務 第10回 居住用建物賃貸借終了の実務(その2)

NPO法人日本地主家主協会 の会員向けニューズレター「和楽」に平成22年1月から12月まで 建物賃貸借関連の論考を 投稿した。同協会の了解も得て、順次、このブログに掲載中である。今回は、第10回。


前回、賃貸借契約の終了原因全般と、中途解約合意について述べた。前回も正当事由が問題となったが、今回も、正当事由が問題となる期間満了や解約による終了について考える。

1 更新拒絶または解約と正当事由
  定期建物賃貸借以外の賃貸借(更新型賃貸借)での期間満了による契約の終了(更新拒絶)や、期間の定めのない契約での解約を大家さん側から主張することは、困難である。法定更新と正当事由制度のためである。借地借家法は、期間満了により借家契約が終了する場合や、期間の定めなく解約ができる場合の要件として、「正当事由」を要求する(借地借家法28条)。これは、借家法(旧法)時代、昭和16年、男子が出征中、銃後の婦女子が、悪徳大家から明け渡しをされないようにとの配慮から立法されたと言われている。平成3年の借地借家法立法時では、もはや銃後の心配は不要だが、「正当事由」を前提して、借家関係を形成してきた状況を認め、旧法の規定を承継し、旧法で不明確であった正当事由の考慮要素を明確にした。
  すなわち、借地借家法では、正当事由が有無の判断のために、①建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情、②建物の賃貸借に関する従前の経過、③建物の利用状況及び建物の現況、④建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮するものとしている。④は立退料のことを言っていると思えばよい。すなわち、①賃貸人と賃借人双方の当該物件使用の必要性がそれぞれどの程度あるか、②一連の経過中の事情、③建物の利用状況や建物の現況、例えば、建替必要性があるとするなら必要性の程度、④立退料提示の有無、その額 などを判断要素と明示した。もっとも単に「正当事由」とするより、考慮要素が明確になったものの、まだまだ予測可能性が低いと言わざるを得ない。正当事由ない場合、期間の定めある契約といえども法定更新となり、期間の定めのない契約の解約も無効である。
  借地借家法の立法直前のバブル経済下と異なり、居住用賃貸市場は、借り手優位ともいえ、廉価な物件が、容易に発見できるのであり、居住用物件については、立法時の想定より、容易に正当事由が認められる場合がもっとあってもよいのではないだろうか。
  ところで、平成11年に借地借家法が改正され、定期建物賃貸借制度が導入された。結果、契約前に一定の手続要件のもと、期間満了で終了することを合意すれば、借家契約は正当事由の有無を問わず、法定更新されることなく、終了するとの契約が可能となった。私は、このタイプの契約類型ができたことで、新たな更新型賃貸借については、むしろ、正当事由の要件が大家さん側に厳しくならないかという点を懸念する。かつては、更新型賃貸借しかなかったが、定期建物賃貸借制度導入後は、「あえて」更新型契約をしたのであれば、より高度の正当事由なければ更新拒絶はできないとすべきではないかということである。この点については、定量的検討をしているわけでもないので、この程度にしたい。
  
2 正当事由以外の終了のための要件
  ついで正当事由以外の要件についても確認しておきたい。すなわち、期間の定めのある契約の場合、1年ないし半年前までに、更新拒絶の意思を通知する必要がある(借地借家法26条)。期間の定めのない場合は、解約の意思を表示して6カ月で契約が終了する(同法27条)。期間の定めのある契約でも更新拒絶をしたが正当事由が認められない場合、法定更新となって契約は期間の定めのないものとして存続するとするのが判例の考え方である。今回は、正当事由が足りず、更新拒絶が認められないとしても、その後の事情の変化により、正当事由が認められ、解約ができるとされることもありうる。
3 まとめ
 以上のとおり、更新型賃貸借では、正当事由がない限り契約終了は困難であり、勉強している大家さんほど、更新拒絶を諦めることが多い。しかし、真に正当事由が認められる場合かどうか、弁護士とも相談のうえ、検討いただいてはどうか。

以 上

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