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2011年5月

2011.05.03

原子力損害の賠償に関する法律3条の責任(原子力損害賠償責任)の要件事実

標記について検討してみました。
ご批判いただければ幸甚です。

1 請求原因

① 被告が原子力事業者であること
② 原子力事業者が原子力施設運転中に発生した事故であること。
③ 損害の発生。
④ 事故と損害との相当因果関係。

事業者等の行為により損害を被った場合、民法の不法行為責任により、被害者が事業者等に損害賠償請求をする場合、事業者の「過失」が要件となる(民法709条。過失責任の原則)。
原子炉等原子力施設の運転中に発生した事故については、原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」と言う。)により、事故を起こした原子力事業者は、過失の有無を問わず(無過失責任)、原子力損害につき賠償責任を負う(原賠法3条1項本文)。原子力事業は科学技術の最先端を行くため、被害者が原子力事業者の過失を立証することは極めて難しく、立証できない場合が生じるが、それは技術的知見の偏在によるものによる。また、原子力施設の運転の仕組みは、かなり複雑であり、どの部分に過失があるのかをとらえること自体に時間と労力を要することになる。
そこで、原賠法は、実質的公平の立場から被害者の賠償請求を容易にするため、加害者の過失を立証する義務を不要とした(無過失責任)。したがって、原子力損害賠償請求をする被害者は、上記①②③④を主張・立証さえすればよいことになる。
 過去の多くの原子力損害賠償請求では、④の相当因果関係が争点となっている。原賠法では、原子力施設事故と相当因果関係のある損害について、原子力損害と呼んでいる(原賠法1条、2条)。原子力損害とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用、又は毒性的作用により生じた損害を言う。また、毒的作用とは、核燃料物質等を摂取・吸入することにより人体に中毒や続発症を及ぼすもののことをいう。
過去に相当因果関係が問題になった例として、不動産の価格下落、風評被害、精神的損害などがある。なお、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震に端を発する東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故については、原子力損害賠償紛争審査会が相当因果関係の範囲について、指針を出している。

2 抗弁
当該損害が、
ア 異常に巨大な天災地変によって生じたもの
または
イ 社会的動乱によって生じたもの
であること。
が抗弁となる(原賠法3条1項但書)。
なお、イの社会的動乱によって生じたものとは、原子力施設がテロ組織により破壊されたような場合を想定しており、原子力施設の事故による社会的動乱が発生したことによる損害は、イによる免責の問題とはならない。もっとも、そのような場合に請求原因の相当因果関係の有無については、多論ありうると思われる。
アの「異常に巨大な天災地変によって生じたもの」の要件については、私は次のように考える。この規定は、原賠法では無過失責任をとりつつ、単なる天災ではなく、極めて異例な事態(原子力事業者がどんなに注意しても避けることができない事態)に限っては、公平の観点から責任を負わせないことにしたものをいうのであり、そのような事故以外は「異常に強大な天災地変」にはあたらない。
 過去の政府機関の委員会の質疑などでは、「異常に巨大な天災地変」を関東大震災の加速度の3倍程度の規模の地震の場合であり、損害の大きさではなく、地震の大きさを言うとしている。また「異常に巨大な天災地変」とは、通常の天災とは異なり、巨大隕石の激突のような場合であって、地震による大津波などは含まれないとの考え方もあるという。
東日本大震災における福島第一原子力発電所の事故について、政府発表などでは、免責対象とするべきとの意見は現状出ていない。なお、一企業としての東京電力のスタンスとして、免責を主張することは当然ありうることであり、新聞報道によれば損害金仮払仮処分の中で、かような主張をしていると聞く。なお、過去の原発賠償では「異常に巨大な天災地変」による免責が問題となった例はない。
 万が一、「異常に巨大な天災地変」にあたる場合、国が、原子力損害で原賠法3条1項に規定する額を超えると認められるものが生じた場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずることを定めており(原賠法17条)、被害者は、国に救済を求めることが可能である。もっとも、この場合は、損害の賠償とは異なる政策的視点からの措置に留まる。


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2011.05.02

○ 居住用賃貸借において敷引特約が無効とはいえないとされた例

最近、賃貸実務上参考になる判例が出たので、以下紹介する。


判旨②の中で、更新料合意が有効ととれる部分があるのが興味深い。もっともいわゆる傍論なのかもしれないが。

○ 居住用賃貸借において敷引特約が無効とはいえないとされた例(最判平成23年3月24日 最高裁HP

1 関西方面では、賃貸借に敷引特約をしている例がままみられると言われている。敷引特約とは、賃貸借契約時に敷金として賃貸人が賃借人から預かった金員のうち、一定の額を「敷引き」あるいは「償却」と称して、賃貸借終了時には、全額を返還せず、「敷引き」「償却」として控除した残のみを返還するという方式の特約をいう。

2 これについての従来の裁判例は、有効な契約であることを前提としつつ、終了時点の個別事情により判断するもの、消費者契約法10条により無効とするものなどにわかれていたが、消費者契約法による判断をするものがやや多かったと思われる。

 最高裁判所は、阪神・淡路大震災時の家屋倒壊に関連して、賃貸借が終了したが、敷引特約が適用されるかについて、居住用の家屋の賃貸借における敷金につき、賃貸借契約終了時にそのうちの一定金額又は一定割合の金員を返還しない旨のいわゆる敷引特約がされた場合であっても、災害により家屋が滅失して賃貸借契約が終了したときは、特段の事情がない限り、右特約を適用することはできないとしていた(最判平成10年9月3日民集 52巻6号1467頁)が、通常の終了については、最高裁判所の判断はまだなかった。

平成23年3月24日判決はこの問題について、まず、消費者契約法による無効となる場合があるとの一般論を述べ、次に当該契約については、無効にあたらないとして、当該敷引契約を有効とした。

(判旨)

① 消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額,賃料の額,礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし,敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には,当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り,信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって,消費者契約法10条により無効となる。

② 本件特約は,契約締結から明渡しまでの経過年数に応じて18万円ないし34万円を本件保証金40万円から控除するというものであって,本件敷引金の額が,契約の経過年数や本件建物の場所,専有面積等に照らし,本件建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額を大きく超えるものとまではいえない。また,本件契約における賃料は月額9万6000円であって,敷引金の額は,上記経過年数に応じて上記金額の2倍弱ないし3.5倍強にとどまっていることに加えて,賃借人は,本件契約が更新される場合に1か月分の賃料相当額の更新料の支払義務を負うほかには,礼金等他の一時金を支払う義務を負っていない。そうすると,本件敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできず,本件特約が消費者契約法10条により無効であるということはできない。

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