父子関係ないまま認知した場合の認知の効力
事案の概要
(1) 被上告人は,平成15年3月▲日,上告人の母と婚姻し,平成16年12月▲日,上告人(平成8年▲月▲日生まれ)の認知(以下「本件認知」という。)をした。上告人と被上告人との間には血縁上の父子関係はなく,被上告人は,本件認知をした際,そのことを知っていた。
(2) 上告人と被上告人は,平成17年10月から共に生活するようになったが,一貫して不仲であり,平成19年6月頃,被上告人が遠方で稼働するようになったため,以後,別々に生活するようになった。上告人と被上告人は,その後,ほとんど会っていない。
(3) 被上告人は,上告人の母に対し,離婚を求める訴えを提起し,被上告人の離婚請求を認容する判決がされている。
争点
血縁上の父子関係がないにもかかわらずなされた認知の効力。
判旨
血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知は無効というべきであるところ,自らの意思で認知したことを重視して認知者自身による無効の主張を一切許さないと解することは相当でない。また,血縁上の父子関係がないにもかかわらずされた認知については,利害関係人による無効の主張が認められる以上(民法786条),認知を受けた子の保護の観点からみても,あえて認知者自身による無効の主張を一律に制限すべき理由に乏しく,具体的な事案に応じてその必要がある場合には,権利濫用の法理などによりこの主張を制限することも可能である。そして,認知者が,当該認知の効力について強い利害関係を有することは明らかであるし,認知者による血縁上の父子関係がないことを理由とする認知の無効の主張が民法785条によって制限されると解することもできない。
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