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2014.03.23

共有物について遺産共有持分と他の共有持分とが併存する場合における共有物分割と遺産分割の関係

最判平成25年11月29日判時2206号79頁

事案の概要等

(1) 本件土地は,平成18年9月当時,被上告人X1(被上告会社),被上告人X2及びAが共有しており,その共有持分は,被上告会社が72分の30,被上告人X2が72分の39,Aが72分の3であった。
  Aは,平成18年9月に死亡したが,その遺産分割は未了であり,Aが有していた上記共有持分(以下「本件持分」という。)は,Aの夫である被上告人X2並びにAと被上告人X2との間の長男である被上告人X3,長女である上告人Y1及び二男である上告人Y2の4名による遺産共有の状態にある。
被上告会社は,被上告人X3が代表者を務める会社である。

(2) 本件土地は地積約240㎡の宅地であり,本件土地上には被上告会社及び被上告人X2が所有する建物が存在する上,本件持分に相当する面積は約10㎡にすぎず,本件土地を現物で分割することは不可能である。

(3)  被上告人らは,本件土地上にマンションを新築することを計画しているが,上告人らとの間で,本件土地の分割に関する協議が調わないため,本件訴えを提起した。被上告人らは,本件土地の分割方法として,本件持分を被上告会社が取得し,被上告会社がAの共同相続人らに対し本件持分の価格の賠償として466万4660円を支払うという全面的価格賠償の方法による分割を希望している。被上告会社は,その支払能力を有している。

争点

  遺産共有関係と通常の共有関係とが併存する場合における共有関係の解消の在り方

判旨

(1) 共有物について,遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分(以下「遺産共有持分」といい,これを有する者を「遺産共有持分権者」という。)と他の共有持分とが併存する場合,共有者(遺産共有持分権者を含む。)が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟であり,共有物分割の判決によって遺産共有持分権者に分与された財産は遺産分割の対象となり,この財産の共有関係の解消については同法907条に基づく遺産分割によるべきものと解するのが相当である(最高裁昭和47年(オ)第121号同50年11月7日第二小法廷判決・民集29巻10号1525頁参照)。
(2)遺産共有持分と他の共有持分とが併存する共有物について,遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ,その者に遺産共有持分の価格を賠償させる方法による分割の判決がされた場合には,遺産共有持分権者に支払われる賠償金は,遺産分割によりその帰属が確定されるべきものであるから,賠償金の支払を受けた遺産共有持分権者は,これをその時点で確定的に取得するものではなく,遺産分割がされるまでの間これを保管する義務を負うというべきである。
(3)  そして,民法258条に基づく共有物分割訴訟は,その本質において非訟事件であって,法は,裁判所の適切な裁量権の行使により,共有者間の公平を保ちつつ,当該共有物の性質や共有状態の実情に適合した妥当な分割が実現されることを期したものと考えられることに照らすと,裁判所は,遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ,その者に遺産共有持分の価格を賠償させてその賠償金を遺産分割の対象とする価格賠償の方法による分割の判決をする場合には,その判決において,各遺産共有持分権者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で,遺産共有持分を取得する者に対し,各遺産共有持分権者にその保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずることができるものと解するのが相当である。
(4) 原審は,理由中でAの共同相続人らに支払われる賠償金が遺産分割の対象となる旨を説示するものの,各相続人がこれをその時点で確定的に取得するものではなく,遺産分割がされるまでの間これを保管する義務を負うことを判決中に明記していない。また,Aの共同相続人らの法定相続分によるのではなく,これとは異なる上記のような割合での賠償金の支払を命ずることを相当とする根拠についても何ら説示していない。しかしながら,原審は,共同相続人間の関係,紛争の実情等に鑑み,Aの遺産分割がされるまでの間,対立する当事者の双方に単純に平等の割合で賠償金の保管をさせておくのが相当であるとの考慮に基づき,その趣旨で被上告会社にその割合に従った賠償金の支払を命じたものと解し得ないこともないのであり,結局,原審の判断にその裁量の範囲を逸脱した違法があるとまではいえない。
 

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