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2018.02.11

新現代の借地・借家法務(第1回 賃料増減請求とサブリース)

本年も昨年に引き続き、現代の借地・借家法務について、ご紹介していきたいと思います。第1回は、賃貸物件オーナーの皆様にとって切実な問題と思われる賃料増減請求について、判例の動向をご紹介します。

賃料増減についての法制度
借地借家法32条1項は次の場合に賃料増減が請求できるとしています。建物の家賃が、①ⅰ土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減、ⅱ土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下、ⅲその他の経済事情の変動 ②近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となった場合を家賃増減の要件としており、手続きとしては、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができます。
 なお、家賃増減の請求をしても協議が整わない場合、いきなり訴訟をするのではなく、調停前置といいまして、まず、調停をするとの手続とされています(民事調停法24条の2、)。
 そして、家賃の増減請求があった場合、当事者間に協議が整うか、裁判の確定で家賃が明確にされるまでの間、増減請求を受けた相手方は、相当と認める家賃を当面の家賃としておき、後に裁判が確定するなどして、新家賃が発生した場合に、増額のときは、賃借人が差額とこれに対する年1割の割合による利息金を支払うものとし、減額の場合も同様、賃貸人が差額とこれに対する1割の割合による金利を返還するものとされています。

 
賃料設定時の特殊事情の考慮
では、単純に経済一般が好況であったり不況であったりしたために、これらの経済一般の事情の変動や近隣の土地建物の価格の変動のみが増減の考慮要素なのでしょうか。この点、判例は、当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり、賃料額が決定されるに至った経緯、約定賃料額と当時の近傍同種の建物の賃料相場との関係、賃借人の支予測にかかわる事情、預かり敷金の額や、融資を受けた建築資金の返済の予定にかかわる事情等をも考慮すべきとしています。

サブリースの場合の増減請求
 ところで、以上のような賃料増減請求についての考え方は、サブリースについても妥当するのでしょうか。
 サブリース型の契約では、最低賃料保証や賃料自動増額特約が合意されていることが多く、賃貸人は、これらの合意を前提にして、銀行融資を受け、賃貸物件を建築し、サブリース事業者の設定した内容で不動産賃貸事業を実施していることから、安易に家賃減額が認められるとすると、事業収支に大きく影響が出てしまい、銀行融資の返済も困難になるなどの問題もあるところです。
この点、かつては、サブリース型の契約については、賃貸借契約ではなく共同事業の契約であるなどとして、借地借家法の適用はないものとする考え方もありましたが、現段階では、判例は、「不動産賃貸業等を営む甲が、乙が建築した建物で転貸事業を行うため、乙との間であらかじめ賃料額、その改定等についての協議を調え、その結果に基づき、乙からその建物を一括して賃料自動増額特約等の約定の下に賃借することを内容とする契約(いわゆるサブリース契約)についても、借地借家法32条1項の規定が適用される」としており、サブリース型の契約であっても、賃貸借契約であるとみたうえで、借地借家法の適用があるものとして、増減請求が認められるとしています。
 最低賃料保証や賃料自動増額特約についても、判例は、賃料自動増額特約について、「本件契約には本件賃料自動増額特約が存するが、借地借家法32条1項の規定は、強行法規であって、本件賃料自動増額特約によってもその適用を排除することができないものであるから、本件契約の当事者は、本件賃料自動増額特約が存するとしても、そのことにより直ちに上記規定に基づく賃料増減額請求権の行使が妨げられるものではない」として、自動増額特約があっても減額請求を妨げないものとしており、最低家賃保証についても同様に考えられます。

実務的な対応方法
 賃貸物件のオーナーとしては、転貸人から賃料の減額請求をされたのでは収支が狂い大きな問題となります。賃料自動増額特約や最低家賃保証については、定期建物賃貸借ではその効力が認められます。すなわち、借地借家法38条7項は、第32条の規定は、第1項の規定による建物の賃貸借(定期建物賃貸借)において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しないとしています。そこで、定期建物賃貸借を使うということも一案と思われます。
 賃料増減請求の案件は、さほどに難しい問題を含んでいます。実際に増額・減額請求に直面した場合、専門家に相談するなどして、慎重に対応すべきでしょう。

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