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2018.02.11

サブリース型賃貸借契約と借地借家法

近時サブリース型賃貸借に関連して、サブリース業者からの賃料減額請求や中途解約申し入れなどの諸問題が顕在化している。サブリース契約については、すでに最判平成15年10月21日民集 57巻9号1213頁が次のように、転貸借であることを明らかにしたうえで、借地借家法の適用を認めているところである。あまりにも著名な判決ではあるが、以下判旨を紹介する。
事案の概要

  (1) Xは、不動産賃貸等を目的とする株式会社
     Yは、不動産賃貸等を目的とする日本有数の株式会社
  (2) Xは、昭和61年ころ、東京都文京区某所の土地上に賃貸用高層ビルを建築することを計画し、Yから、上記の土地上に第一審原告が建築したビルでYが転貸事業を営み、Xに対して長期にわたって安定した収入を得させるという内容の提案を受け、Yと交渉の結果、
 昭和63年10月、Yから、
①Yが、X使用部分を除き、ビル全館を一括して賃借し、Yの責任と負担でテナントに転貸する。
②賃料は、共益費を含め、年額23億1000万円余とし、この賃料額は、テナントの入居状況にかかわらず変更しない。
③賃料のうち19億9200万円については、三年経過するごとに、その直前の賃料の一〇%相当額を値上げする
との提案を受け、XY間で契約を締結することとし、契約内容の具体化を進めた。

  (3) Xは、昭和63年12月13日、Yとの間で、通称センチュリータワービル(以下「本件建物」という。)のうち本件賃貸部分を下記(4)の内容で第一審被告に賃貸する旨の予約をした。
 Xは、同月14日、上記予約で約定した敷金額49億4350万円のうち16億5500万円の預託を受けた。

 Xは、株式会社大林組との間で本件建物の建築請負契約を締結し、同社に対し請負代金等合計212億円余を支払い、設計事務所に対しても設計料18億円余を支払ったが、これらの支払のうち上記の敷金で賄いきれなかった181億円余については、銀行融資を受けた。

  (4) 本件建物は、平成3年4月15日に完成し、Xは、同月16日、上記予約に基づき、Yとの間で、次の内容の契約(以下「本件契約」という。)を締結し、本件賃貸部分をYに引き渡した。

 ア Xは、Yに対し、本件賃貸部分を一括して賃貸し、Yは、これを賃借し、自己の責任と負担において第三者に転貸し、賃貸用オフィスビルとして運用する。Yは、転借人を決定するには、事前に第一審原告の書面による承諾を得る。

 イ 賃貸期間は、本件建物竣工時から15年間とし、期間満了時には、双方協議の上、更に15年間契約を更新する。
賃貸期間中は、不可抗力による建物損壊又は一方当事者の重大な契約違反が生じた場合のほかは、中途解約できない。

 ウ 賃料は、年額19億7740万円、共益費は、年額3億1640万円とし、Yは、毎月末日、賃料の12分の1(当月分)を支払う。

 エ 賃料は、本件建物竣工時から三年を経過するごとに、その直前の賃料の10%相当額の値上げをする(以下、この合意を「本件賃料自動増額特約」という。)。急激なインフレ、その他経済事情に著しい変動があった結果、値上げ率及び敷金が不相当になったときは、第一審原告と第一審被告の協議の上、値上げ率を変更することができる(以下、この合意を「本件調整条項」という。)。

 オ Yは、Xに対し、敷金として、総額49億4359万円を預託する。

 カ Yが賃料等の支払を延滞したときは、Xは、通知催告なしに敷金をもって弁済に充当することができ、この場合、Yは、Xから補充請求を受けた日から一〇日以内に敷金を補充しなければならない。

  (5) Yは、Xに対し、本件賃貸部分の賃料について、次の減額の意思表示をした。
ア 平成6年2月  同年4月1日から年額13億8194万400円に減額すべき
イ 同年10月28日に、同年11月1日から年額8億6863万200円に減額すべき
ウ 平成9年2月7日に、同年3月1日から年額7億8967万2000円に減額すべき
エ 平成11年2月24日に、同年3月1日から年額5億3393万9035円に減額すべき


 なお、Yがテナントから受け取る本件賃貸部分の転貸料の合計は、平成6年四月当時、平成9年6月当時のいずれも月額1億1516万2000円であり、平成11年3月当時は約4581万円となり、同年4月以降は6000万円前後で推移している。

  (6) Yは、Xに対し、平成6年4月分から平成9年3月分まで賃料として月額1億4577万4527円を支払い、平成9年4月分から平成11年10月分まで賃料として月額1億4860万5099円(ただし、平成9年4月分及び平成10年4月分については、月額1億4860万5111円)を支払った。

  (7) Xは、平成6年4月分から平成9年12月分までの約定賃料等と支払賃料等との差額分及びこれに対する遅延損害金を敷金から充当することとし、Yに対し、敷金の不足分の補充を請求した。

 2 Xは、Yに対し、
⑴ 主位的に、本件賃料自動増額特約に従って賃料が増額したことを前提とする敷金の不足分と平成10年1月分から平成11年10月分までの未払賃料との合計52億6899万5795円とこれに対する年六%の割合による遅延損害金の支払を求め、
⑵ 予備的に、第一審被告の賃料減額請求の意思表示により賃料が減額されたことを前提として、借地借家法32条1項の規定により賃料が減額される可能性があることについてYに説明義務違反があるなどと主張して、不法行為又は債務不履行に基づき上記金額と同額の損害賠償を求めた。

 3 Yは、Xに対し、反訴として、Yが、Xに対し、借地借家法32条1項の規定に基づきYの賃料減額請求の意思表示により賃料が減額されたことを主張して

本件賃貸部分の賃料が
平成6年4月1日から同年10月末日までの間は年額13億8194万4000円
同年11月1日から平成9年2月末日までの間は年額8億6863万2000円
同年3月1日から平成11年2月末日までの間は年額7億8967万2000円
同年3月1日以降は年額5億3393万9035円であることの
確認を求めた。


判旨
  (1) 前記確定事実によれば、本件契約における合意の内容は、XがYに対して本件賃貸部分を使用収益させ、YがXに対してその対価として賃料を支払うというものであり、本件契約は、建物の賃貸借契約であることが明らかであるから、本件契約には、借地借家法が適用され、同法32条の規定も適用されるものというべきである。
 本件契約には本件賃料自動増額特約が存するが、借地借家法32条1項の規定は、強行法規であって、本件賃料自動増額特約によってもその適用を排除することができないものであるから、本件契約の当事者は、本件賃料自動増額特約が存するとしても、そのことにより直ちに上記規定に基づく賃料増減額請求権の行使が妨げられるものではない
 なお、前記の事実関係によれば、本件契約は、不動産賃貸等を目的とする会社であるYがXの建築した建物で転貸事業を行うために締結したものであり、あらかじめ、YとXとの間において賃貸期間、当初賃料及び賃料の改定等についての協議を調え、Xが、その協議の結果を前提とした収支予測の下に、建築資金としてYから約50億円の敷金の預託を受けるとともに、金融機関から約180億円の融資を受けて、Xの所有する土地上に本件建物を建築することを内容とするものであり、いわゆるサブリース契約と称されるものの一つであると認められる。そして、本件契約は、Yの転貸事業の一部を構成するものであり、本件契約における賃料額及び本件賃料自動増額特約等に係る約定は、XがYの転貸事業のために多額の資本を投下する前提となったものであって、本件契約における重要な要素であったということができる。これらの事情は、本件契約の当事者が、前記の当初賃料額を決定する際の重要な要素となった事情であるから、衡平の見地に照らし、借地借家法三二条一項の規定に基づく賃料減額請求の当否(同項所定の賃料増減額請求権行使の要件充足の有無)及び相当賃料額を判断する場合に、重要な事情として十分に考慮されるべきである。
 以上により、Yは、借地借家法42条1項の規定により、本件賃貸部分の賃料の減額を求めることができる。そして、上記のとおり、この減額請求の当否及び相当賃料額を判断するに当たっては、賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり、本件契約において賃料額が決定されるに至った経緯や賃料自動増額特約が付されるに至った事情、とりわけ、当該約定賃料額と当時の近傍同種の建物の賃料相場との関係(賃料相場とのかい離の有無、程度等)、Yの転貸事業における収支予測にかかわる事情(賃料の転貸収入に占める割合の推移の見通しについての当事者の認識等)、第一審原告の敷金及び銀行借入金の返済の予定にかかわる事情等をも十分に考慮すべきである。
(破棄差戻)
なお、説明義務違反については、これを否定した原審の判断を最高裁判所も維持。

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