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2018.11.04

新現代の借地・借家法務 (第4回 定期建物賃貸借の裁判例概観 その2)

定期建物賃貸借にまつわる重要判例、前回は、定期建物賃貸借契約締結前説明に関するもの、定期建物賃貸借条項に関するものをご紹介しました。これに引き続き、今回は、賃料不減額合意に関する判例を紹介したいと思います。
 
借地借家法32条は、賃料の増減請求について規定をしており、賃料が租税その他の負担の増減、土地・建物の価格の上昇または低下、その他の経済事情の変動や近傍同種建物の借賃に比較して不相当の場合に、当事者が増減請求できるものとしており(同条1項)、賃料を増額しない特約は有効ですが、減額しない特約をしても、上記の各変動要素が認められる場合には、減額が認められる結果となってしまいます。新規にアパートなどの賃貸用物件を建築する際に、銀行から融資を受けている場合を考えると、賃料額が減額されたのでは、支払いが困難になってしまいます。これに対し、定期建物賃貸借契約の場合には、賃料改定に関する特約がある場合には借地借家法32条の規定を適用しないものとしており(同法38条7項)、減額しない合意や、スライド増額する合意なども可能となっています。
どのような合意をすれば良いか
  そこで、定期建物賃貸借契約を締結したうえ、賃料減額請求をふせぎたいと考えた場合に、どのような合意をすれば、よいのかが問題となります。
この点、定期建物賃貸借契約を締結し、「賃料の改定は行わないこととし、借地借家法32条の適用はないものとする」との条項を定めたにも関わらず「協議のうえ、●年●月●日に賃料を改定することができる」と相矛盾する定めをした特約があった場合、このように協議により賃料を改定することができるとの特約は、「賃料の改定は行わないこととし、借地借家法32条の適用はない」との定めを排除する趣旨と解するのが相当として、同法38条7項によることはできず、同法32条の適用があるとした例があることが注目されます(東京地方裁判所平成21年6月1日)。
この判決では、「定期建物賃貸借は、平成11年の借地借家法改正において、建物賃貸借における私的自治ないし契約自由の原則尊重という基本的立場から、一定の要件の下に期間の満了により終了する(契約の更新のない)類型 の建物賃貸借として導入された制度である。そして、法38条7項は、上記の基本的立場に立脚して導入された定期建物賃貸借における家賃の改定に関しても、当事者の合意を優先させることにより家賃の改定をめぐる紛争ないしこれに伴う訴訟を回避することを可能とする趣旨で設けられたものであるところ、その趣旨に かんがみれば、借賃改定特約は、家賃額を客観的かつ一義的に決定する合意であって、経済事情の変動等に 即応した家賃改定の実現を目的とした借賃増減額請求権の排除を是認し得るだけの明確さを備えたものでなければならないと解するのが相当である。」としています。
そして、同項に該当する合意の例として、「『賃貸借期間中家賃の改定を行わない』旨の不改定特約、『一定の期間経過ごとに一定の割合で家賃を増額あるいは減額する』旨ないし『一定の期間経過ごとに特定の指標(例えば、消費者物価指数)の変動率に従って家賃を改定する』旨の自動改定特約」について、「借賃改定特約に該当する」としています。
これに対し、協議改定条項については、「家賃額の決定に関する外形的方法を定めるにすぎず、改定後の家賃額を客観的かつ一義的に決定するものとはいえないから、上記のような法38条7項の趣旨に照らし、借賃改定特約には該当しない」としています。そして、不改定条項と協議改定条項が両方入っている事案について、不明確さを欠くことから、不改定条項につき効力を否定しています。
なお、「単なる『法32条の適用はない』ないし『法32条の適用を排除する』旨の合意のみでは借地借家法38条7項の「借賃改定特約に該当するものでない」と明示していることにも着目すべきです。
まとめ・実務的な対応方法
まず、借地借家法38条の定期建物賃貸借成立要件(前回お話した事前説明と書面による契約)が必要です。
そして、不改定特約や自動改定特約が「借賃改定特約に該当する」としていますので、これにより、賃料減額請求を排除することができます。但し、協議改定条項をいれてしまうと、賃料減額請求を排除できなくなりますので注意を要します。市販の契約書用紙などには協議改定条項がはいっていますので、これに特約として定期建物賃貸借条項や借賃改定特約をいれても、賃料減額請求を排除できないので注意を要します。
契約書については管理依頼先に任せていることが多いと思いますが、契約締結時までに十分にチェックいただくようお勧めします。

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