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2018.11.05

新現代の借地・借家法務( 第5回 定期建物賃貸借の裁判例概観 その3)

定期建物賃貸借にまつわる重要判例、今回は、中途解約禁止合意に関する判例を紹介したいと思います。
 
借地借家法の中途解約に関する規定
賃貸借契約において、賃借人からの中途解約を禁止または制限する例は頻繁にみられるところです。賃貸人からすると、中途解約による空き室の発生は、賃貸経営で生じるリスクとしてはインパクトもあり、銀行借り入れをして家賃で返済している場合には、返済に影響がでてくる事態でもあります。できるだけ回避したいと考える方が多いと思います。しかしながら、借地借家法38条5項は、次のように、小規模な住宅の提起建物賃貸借契約においては、賃借人からの中途解約を制限する合意には規制をし、賃借人にやむを得ない事情がある場合に賃借人から中途解約の申入れをすることができ、中途解約の申し入れかの日から、1ヶ月の経過で、その定期建物賃貸借は終了するものとしています。
「第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。」
そして、同条6項は、この規定に反する特約で、賃借人に不利な内容、たとえば、中途解約は一切許さないとか、中途解約申入れから6ヶ月後に賃貸借が終了する等の特約は、無効としています。
 すなわち、「前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。」としています。
中途解約に関する判例
 中途解約に関しては、次の東京地方裁判所平成20年9月25日判決が参考になります。この判決の事案では、賃貸人(原告・法人)と賃借人(被告・個人)では、賃貸人の17㎡のワンルームマンションについて、賃借人居住の目的で、2年間の定期建物賃貸借を締結しましたが、契約書には、「中途解約の場合、契約期間の残金を支払った場合に限り,解約できる。契約期間残金を支払わない場合中途解約は事由の如何を問わず一切主張できない。」との規定がありました。
賃借人は、契約直後から、賃料の延滞があったようであり、賃貸人は催促を重ねましたが、支払いはなく、契約後2ヶ月ほど経過してから、賃借人から「本件物件は既に退去した,賃料等は支払えない」との連絡がありました。そこで、賃貸人は、賃借人に対し、経過期間の未払い賃料と契約終了までの賃料のトータル2年分の賃料の請求をしました。
しかしながら、裁判所は、「退去した」との通知から1ヶ月分までの家賃については認めましたが、その後の家賃については、次のように述べて否定しました。「賃借人である被告において中途解約ができない旨の規定や契約期間の残金を支払った場合に限り中途解約ができ,契約期間残金を支払わない場合の中途解約は事由の如何を問わず一切主張できない旨の規定が置かれているところ,これらは,いずれも借地借家法38条5項の規定に反する建物の賃借人に不利なものであるから,無効といわなければならない。」
 「原告は,これらの規定を無効とすることは契約自由の原則等に反する旨を主張するが,借地借家法38条6項によれば同条5項はいわゆる片面的強行規定であると解され,原告の主張は理由がない。」
まとめ・実務的な対応方法
200㎡未満の住宅について定期建物賃貸借契約に賃借金からの中途解約に関する条項をいれる場合、借地借家法38条5項に沿った、「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったとき」に中途解約でいるものとし、解約申入れから1年で終了するとの合意内容としておくことが必要です。
中途解約条項についても、普通建物賃貸借では、これを禁止する条項が入っていることが多いことから、いままで使っていた普通建物賃貸借契約ひな形を定期建物賃貸借になおして使うような場合には注意が必要です。
なお、以上の規制は、200㎡未満の居住を目的とする定期建物賃貸借に限定されますので、200㎡以上の定期建物賃貸借であれば、居住を目的としていても、該当しません。また、事業用の賃貸借については、その面積の広狭を問わず適用がありません。その場合でも、解約後期間の賃料等の支払いを解約の条件とした場合に、損害額として相当か、また、賃借人が個人の場合に消費者契約法9条1号の「平均的な損害の額を超えるもの」として超過部分が無効とならないかなどの検討は別途必要です。

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