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2020年4月

2020.04.26

新現代の借地・借家法務 第12回 原状回復と民法改正

前回に引き続き、建物賃貸借終了時の原状回復について、今回は本年4月に施行された改正民法との関係をお話しします。

 

民法改正と賃貸借

 

今回の民法改正は、取引関係の基礎である契約関係の規定を中心になされました。社会経済の変化に対応するため、確立された判例やルールを条文化したり、国民一般にとってのわかり安さの向上をはかるなどを行ったものです。賃貸借で関係の深いのは、保証に関連する部分や賃借物件が使用収益できない場合の賃料の減額など多数ありますが、原状回復の範囲についてお話したいと思います。

 

民法改正と原状回復の範囲

 

改正前民法には、建物明渡時の原状回復の範囲についての規定はなく、前回ご説明しましたとおり、判例や国土交通省のガイドライン、東京都の条例、ガイドラインなどを参考に考えてきていました。改正民法では、まず、原状回復の範囲について、賃借人は、賃借物に生じた損傷がある場合は、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負うとの規定がおかれました。なお、ここに損傷のうち、通常の使用収益によって生じた損耗及び経年変化を除くものと明示されています。この規定は、いわゆる任意規定とされ、この規定と異なる合意を当事者間ですることができるものとされています。この点、従前から国土交通省のガイドラインや東京都の条例やガイドラインが存在しており、内容はほぼ同じです。では、変更ないのかというと、ルールが明文されたことで、これに反する合意がされ、通常の使用収益によって生じた損傷や経年変化も賃借人の負担とする合意をした場合、賃借人が個人の場合には、消費者契約法上、無効となる場合が出てくることになります。
消費者契約法10条は、事業者と消費者の契約について、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とするものとしています。賃貸経営をされている方は事業者といえ、また個人で住宅を借りている賃借人は消費者にあたりますので、原状回復の規定が民法の規定に入ることによって、これよりも賃借人の義務を重くする原状回復条項は、もし、信義誠実の原則に反して賃借人の利益を害するときは、無効とされることになります。この点、国土交通省のガイドラインや東京都のガイドラインに従っている場合には、信義誠実の原則に反すると言われる可能性は低いと思われます。

 

17年判決との関係

 

では、前回ご説明した、最高裁判所平成17年12月16日判決で、一定の条件の下、通常損耗を賃借人負担とする合意を有効としていたこととの関係はどうなりますでしょうか。同判決は、「建物の賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせるには、少なくとも賃借人が補修費用を負担することとなる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要である。」としており、通常損耗補修特約が明確に合意されていることを条件としていました。私は、この判決のいう「具体的明記」が、信義誠実の原則に反しないとされるためのポイントになるのではと考えます。抽象的な記載しかなく、いざ明渡し時に賃借人の負担であると言われるのでは不意打ちになり、これでは当事者間の信義誠実の原則に合致しているとは言いがたいと思われます。ただ、信義誠実の原則自体も広い概念ですので、今後の裁判例に注意する必要があります。

 

まとめ・実務的な対応方法

 

この他、改正民法は、敷金について、いかなる名目によるかを問わず、賃料その他の賃借人の賃貸人に対する金銭債務の給付を目的とする債務を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭を言うものとし、賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならないとしていることも注意を要します。もっとも、いずれも従前の実務と大きくは変わりません。
以上、改正民法の原状回復に関連する規定を紹介しました。
一年にわたり、賃貸借をめぐる判例を中心に解説して参りましたがいかがでしたでしょうか。皆様の賃貸経営実務の中で、すこしでも参考になれば幸いです。

 

追記 この文章は、平成29年に原案を書いたものでしたので、すでに改正民法が施行されていることから、直しました。
また、この間、事業者賃借人の依頼で明渡対応をした際に賃貸人側代理人(弁護士)から、ガイドラインや平成17年判決は、住居系のみとの意見をいただいたことがありました。改正前民法下でもその考え方は誤っていると思いますが、改正民法で、原状回復の範囲が明示されましたので、住居系・事業系問わず、通常損耗や経年劣化部分は原状回復の範囲外であることが明らかとなり、上記のような意見の余地はなくなったと考えています。


新現代の借地・借家法務 第11回 原状回復

今回と次回は、建物賃貸借終了時にとりわけ敷金をめぐり問題となる原状回復について、お話したいと思います。

原状回復における通常損耗負担特約の有効性

従前から、賃貸借契約終了時の原状回復については、主に敷金返還請求との関係で、争いが生じており、国土交通省では平成10年に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を定め(平成16年と平成23年に改訂)、東京都などでも平成16年には、賃貸住宅紛争防止条例と「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を定め、通常損耗については、その原状回復費用を賃貸人負担とすることを明らかにしてきました。また、最高裁判所平成17年12月16日判決(以下「17年判決」と言います。)は、「建物の賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせるには、少なくとも賃借人が補修費用を負担することとなる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要である。」としています。17年判決は、原状回復に関する通常損耗特約そのものを無効とするのではなく、特約が明確に合意されていることが必要としたものです。そこで、以下では、ハウスクリーニングを賃借人負担とする特約(以下「ハウスクリーニング特約」といいます。)を例にとり、これを有効とした判決と無効とした判決をみてみましょう。

ハウスクリーニング特約有効事例 

東京地裁平成21年9月18日判決は、賃貸借契約書の「賃借人が、契約終了時にハウスクリーニング費用2万5000円(消費税別)を賃貸人に支払う旨の記載」や「説明書」に「ハウスクリーニング費用として2万5000円(消費税別)を賃借人が支払うことが説明されていること」を指摘し、また、契約締結の仲介人の事前の口頭説明を認め、かつ、「ハウスクリーニング」という文言は、一般に、専門業者による住宅の清掃作業を意味するということを認定して、「本件契約書等の記載によれば、ハウスクリーニングの内容として、個別具体的な清掃内容までの特定がないとしても、本件貸室を対象として、料金約2万5000円程度の専門業者による清掃を行うことが明らかであるということができる。」「そうであれば、本件賃貸借契約においては、契約終了時に、本件貸室の汚損の有無及び程度を問わず、控訴人が専門業者による清掃を実施し、被控訴人は、その費用として2万5000円(消費税別)を負担する旨の特約が明確に合意されているものということができ、本件賃貸借契約において清掃費用負担特約の合意が成立しているというべきである。」としています。

ハウスクリーニング特約無効事例

これに対して、東京地裁平成25年7月18日判決は、次のようにハウスクリーニング特約を無効としました。特約事項について「退室時の貸主指定の専門業者によるハウスクリーニング代は借主が負担するものとする。(冷暖房等の設備も含む)」と記載があり、説明書には,契約書同様の記載と「本契約では,借主の負担は原則どおりです。すなわち,経年変化及び通常の使用による住宅の損耗等の復旧については,借主はその費用を負担しませんが,退去の時,借主の故意・過失や通常の使用方法に反する使用など,借主の責めに帰すべき事由による住宅の損耗等があれば,その復旧費用を負担することになります。」との記載があることを認めた上で、「負担すべきハウスクリーニングや原状回復の範囲等について包括的に定めるにとどまり,その範囲が具体的に明らかにされておらず,これが通常損耗を含む趣旨であることが一義的に明白であるとはいえず,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が具体的に明記されているとはいえない。」等として、「通常損耗補修特約が具体的に明記されているものとは認められない」としました。その結果、敷金からハウスクリーニング代を差し引くことを否定しました。

まとめ・実務的な対応方法

以上、原状回復をめぐる最高裁判決を紹介し、ハウスクリーニング特約の有効、無効の二つの判決をご紹介しました。有効例は、ハウスクリーニング代について金額を特定していたことが大きな特徴です。無効例では、包括的な記述しかなく、賃借人にとり、予めどの程度になるのか不明な契約をしたことになりました。実務的にも、賃借人が負担する原状回復の項目と費用をできるだけ具体化することにより、平成17年判決の立場にも合致することになります。今後の賃貸借契約締結時に是非参考にしていただきたいと思います。次回は、消費者契約法との関係や改正民法との関係にふれたいと思います。

補追

原状回復については、紙幅の関係で原稿執筆当時は未施行だった令和2年4月1日の改正民法にふれていませんでした。民法は、新たに原状回復の範囲に関する次の規定をおきました。すなわち

(賃借人の原状回復義務)

第621条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
としました。この括弧書内、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化」が原状回復の範囲から明示的に除かれたことは、判例の立場を明示するとともに、賃貸「住宅」に限らず、広く賃貸借一般の原状回復ルールが明示されたことになりますので、注意を要します。
改正民法と原状回復との関係は、第12回で詳しく述べます。

 

2020.04.25

新現代の借地・借家法務 第10回 更新料

前回は、建物賃貸借の予約にまつわる裁判例をご紹介しました。今回は、普通建物賃貸借での期間満了時の更新に絡んで生じる更新料について、最高裁判所の判例を紹介しながらお話したいと思います。

 

更新料合意のある場合

 

多くの普通建物賃貸借契約書ひな形などでは、契約期間終了時の更新について、更新料の授受についてとりきめていると思います。従来から、地方裁判所や高等裁判所は、更新料合意のある場合については、これを原則として有効としてきたと思います。原則としてというのは、あまりに高額で暴利行為といえるような更新料については、公序良俗に反し、無効と考えられるからです。この点、居住を目的とする建物賃貸借の場合、賃貸人が事業者、賃借人が消費者ととらえられることから、消費者契約法の適用があり、同法10条の適用可否が問題になります。同法10条は、「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。」としています。
では、更新料合意一般がその額にかかわらず、消費者契約法10条に反して、無効といえるのでしょうか。
最高裁判所平成23年7月15日判決は、次のように述べてこれを否定しています。すなわち、「一定の地域において、期間満了の際、賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であることや、従前の和解手続等においても、これを公序良俗に反するなどとして、当然に無効とする取扱いがなされてこなかったことからすると、更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、当事者間で更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に、当事者間に更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力についての看過し得ないほどの格差が存するとみることもできない。」としました。そして、「本件賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が、賃料の額、更新される賃貸借の期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法第10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則(信義則)に反して消費者の利益を一方的に害するもの」には当たらないと解するのが相当である。」としています。

 

法定更新の場合(更新料合意なし)

 

つぎに、更新料合意のない賃貸借契約で、法定更新がなされた場合、賃借人は、更新料請求をできるのでしょうか。この点については、借地の事案ですが、最高裁判所昭和51年10月1日判決が、つぎのように否定しています。すなわち、「法定更新に際し,賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習又は事実たる慣習は存在しない」としており、合意がない限り、更新料の請求はできないことを明らかにしています。

 

法定更新の場合(更新料合意あり)

 

そこで次に、賃貸借契約書には更新規定や更新料規定がある場合で、賃貸人が更新拒絶をしたが、正当事由が不足していた場合や、漫然と更新拒絶期間を経過してしまった場合のように、合意による更新ではなく、法定更新となった場合、更新料請求ができるのかが問題になります。
この点については、直接に述べた最高裁判所の判例はなく、地方裁判所や高等裁判所の判決には、更新料請求を認めたものと、更新料請求を認めなかったものと両方があり、結論がだしにくいところです。
以下私見ですが、前掲最高裁判所平成23年判決が、更新料条項の有効性を明らかにしていること、法定更新の場合、期間の点を除き、「従前の条件と同一の条件で更新したものとみなす」(借地借家法26条)とされていることからも、更新料請求を認める余地ある場合があるとは思われます。しかし、多くの賃貸借契約では、更新料合意は、合意更新条項とともに規定していることが多く、法定更新を射程にいれていないと考えられること、法定更新の場合、事実上はその後の長期間の使用を認めることになるものの、期間の定めのない契約となり、正当事由が必要とはいえ、賃貸人から解約の意思表示が可能となるという点に着目すると、更新料合意のある賃貸借契約といえども、法定更新の場合には、更新料請求はできない場合が多いと考えられます。

 

まとめ・実務的な対応方法

 

以上、更新料合意をめぐる最高裁判決を紹介し、法定更新の場合にもふれました。賃貸人としては、更新料合意については、暴利行為との主張を誘発しないようその金額に注意するとともに明確な合意とし、また、更新時に更新合意をしていくべきと考えられます。

 

新現代の借地・借家法務 第9回 建物賃貸借の予約

新現代の借地・借家法務は、一昨年、NPO法人日本地主家主協会の機関誌「和楽」に連載しているものを お仕事&more に転載しています。
一昨年9月以降本業忙しく、9月から12月掲載分の転載が遅れていました。暇にはなっていないのですが、休載ながいのもどうかと思い、ここに転載を再開します。

 

新現代の借地・借家法務は第1回から第8回までで、賃料増減とサブリース契約解除とサブリース、定期建物賃貸借についての契約締結成立(その1)賃料不減額合意(その2)中途解約禁止(その3)終了通知(その4)再契約(その5)更新型賃貸借からの切替え(その6)について、裁判例をご紹介してきました。今回は、建物賃貸借の予約にまつわる裁判例を紹介したいと思います。

 

賃貸物件の建築をするに際し、オーナーとしては、建築前から、テナント側の出店計画があり、賃料収入予測のもと、当該計画にあった仕様の建物を建築することが多いと思われます。その為には、オーナーとしては、建築等のコストもかかることから、多くの場合、計画を立てる段階で建物賃貸借の予約をして、テナント側が逃げないようにしたいと考えるでしょう。これはテナント側も同様で、年間の事業計画を立ててのことですので、オーナーが途中とりやめされてはこまります。そこで、建物建築前段階で、オーナーとテナントの間で建物賃貸借の予約契約をすることがあります。
他方、計画途中で採算が取れないことが判明したなどの理由で、オーナー側から、計画を取りやめ、別の計画に変えたいと考える場合、逆に、テナント側としても、建物利用計画が採算が合わないことがわかり、出店などの契約をやめたいと思う場合に、建築前に締結した予約契約の拘束力がどの程度なのかが問題になります。

 

オーナー側の予約契約違反の事例

まず、オーナー側が予約契約に反して、別の利用形態とした事案として、東京地裁平成15年9月26日の事案を紹介します。この事案は、オーナーは地元の土地所有者、テナントは大手スーパーマーケットを経営との事案で、オーナーとテナントとの間で、テナントの要望で3階建建物、1階は店舗、2階駐車場、3階・屋上は事務所・店舗との計画を立てて、同計画建物賃貸借の予約をしていたところ、オーナーは、3階の事務所・店舗を2階に移し、3階・屋上に駐車場を設置する案に建物を変更して建築し、更に、テナントが変更に応じないことから、別の大手スーパーマーケットに賃貸したというものです。
この事案では、2階駐車場をとりやめて、店舗・事務所としたことについて、オーナー側に変更権が認められるのか、別の大手スーパーに賃貸したことで履行不能となるのかが争われました。裁判所は、建物賃貸借予約契約の拘束力を認め、オーナーの変更権を否定しました。そして、変更権がない以上、賃借予定のスーパーには賃貸せず、他の大手スーパーに賃貸したことにより、この建物賃貸借予約契約は、オーナーの債務不履行による履行不能であると認めて、オーナーに損害賠償を命じる判決を言い渡しました。

 

 

テナント側の出店計画とりやめ解約を認めなかった事例

ついで、テナント側が出店契約をとりやめ、解約をしてきた事案として、名古屋地方裁平成29年5月30日の判決を紹介します。この事案は、駅ビル建築計画をもっていた大手鉄道会社子会社であるオーナー会社が建築計画前にプロポーザル方式でテナント募集をした上で、大手家電量販店のテナント会社との間で、定期建物賃貸借予約契約を締結し、オーナー会社は、同テナント入居を前提に、建築に入ったものです。ところが、建築が難航し、当初の完成予定から1年程度完成が遅れ、ビル開業が遅れることが明らかとなったことから、テナント会社は、オーナー会社に、予定時期に定期建物賃貸借を締結するとの目的達成不能を理由として、予約契約解除と予約金の返還等を求めたものです。
裁判所は、①開業時期につき、予約契約が「予定」という幅のある内容であったこと、開業時期遅れについて当事者間で同テナント出店を前提とする話し合い(テナントによる営業遅延補償の要求等もありました。)が続けられていたことなどから、確定的な開業日を前提とする建物賃貸借予約は認められないものとしました。②そして、目的達成不能との主張についても、開業時期が確定していないことなどから、目的達成不能とまでは認められないとして、テナント側の解約を認めないとの判決を言い渡しました。

 

まとめ・実務的な対応方法

以上、オーナー側が建物賃貸借予約契約に反した事例とテナント側が建物賃貸借予約を解約しようとした事例の双方についてみてみました。この二つの裁判例からは、建物賃貸借予約契約について、裁判所は一定以上の拘束力を認める傾向が認められます。
相談事例でも、事業用建物を前提とする予約契約を締結したものの、事業計画の不十分さから、これを解消して、別の計画にしたいというものがありました。最終的には訴訟とはせずに和解解決しましたが、訴訟になった場合には、困難多い事案でした。事業計画に対する慎重な検討が必要であり、建物賃貸借予約についても簡単には解消できないことには注意を要します。

 

 

2020.04.05

改正民法で何が変わるか(不動産の売買・賃貸借)

住宅新報令和2年1月21日号から3月24日号まで、当事務所若手中心の執筆を連載いただきました。最終回は、ロートルの私が書きました。

ご参考になればと思います。

ダウンロード - e694b9e6ada3e6b091e6b395e381a7e4bd95e3818ce5a489e3828fe3828befbc88e4bd8fe5ae85e696b0e5a0b120e5b9b41e69c8821e697a5efbd9e3e69c8824e697a5efbc89v00.pdf

 

 

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