3気になる判例平成18年

2011.02.26

AB共同して行っていた暴走行為車両の同乗者Bの被害事故について、暴走運転者Aの過失を被害者側の過失として、考慮することができるか(その2)。 (最近の交通事故判例~平成20年から22年の最高裁判決を中心に(その6))

② 裁判経過

1審 岡山地判平成18年2月14日交民 41巻4号865頁

相対的過失相殺を採用
本件においては,二者の過失が競合したことにより一つの交通事故が発生したというものであるが,他方で,被害者たるBは,Aの運転する本件バイクに同乗して,ときに自ら本件バイクを運転して,Aと行動を共にしてきたものであり,Aと特別な関係にあるといえ,過失の内容もAのそれとほとんど共通するものであり,被告Aの過失を抜きにしてはBの絶対的過失割合を定めることができないものである。
 したがって,本件においては,絶対的過失割合を認定することは困難であり,絶対的過失割合による過失相殺の方法は相当ではなく,むしろ,各加害者と被害者との関係ごとにその間の過失の割合に応じて相対的に過失相殺するという方法が本件事案の実態に即しており,それによることが相当であると解される。

(1) BとA(バイク運転者)との間  被害者Bの過失3割
(2) BとC警察官との間  被害者Bの過失9割


控訴審 広島高岡山支判平成19年6月15日交民 41巻4号865頁

絶対的過失割合を採用
本件は、バイク運転者の過失を後部同乗者の過失として考慮するのが適切といえる場合に該当するとは考えられないうえ、Bには、ヘルメットを装着せず、自らの死の危険性を高めたことなどの点において、本件交通事故につき、被告らとの関係において、独自の過失が観念でき、しかも、その過失割合は、相手方C(の運行供用者O)との関係でも、運転者Aとの関係でも同一の割合になるものと解され、絶対的過失割合を認定できるというべきであるから、上記主張は採用できない。


被害者側の過失論の不採用
B及びAに身分上・生活関係上の一体性がないことは明らかであり、損害の公平な分担の見地からも、Aの過失を被害者側の過失として斟酌することは相当でないから、上記主張は採用できない。

運転者A   60%
相手方C(運行供用者のO県) 20%
同乗者(被害者)B 20%


2007.10.30

表明及び保証

M&Aの契約などで、表明及び保証条項を設ける例が多い。これは、契約締結前には、相手資産や業務等をデューデリジェンスにより調査するにしても、それには限界があり、また、デューデリジェンスの際に提出された資料に虚偽があった場合にそのリスクを買収側に負わせることはバランスを欠くことから、売主側に前提事実が真実であることを表明及び保証させ、事実と反する場合に生じた損害リスクの軽減を図る目的であると考えられる。
そして、表明及び保証条項は、近時、M&Aのみならず、一般の契約でも締結する際の前提事実が存在しないことが明らかとなった場合等のリスク回避の目的で、これを入れることが増えてきている。
以下の下級審の判例は、一つはM&Aの事例、もう一つは連帯保証契約の事例である。

M&Aの事例
東京地判平成18年 1月17日 判時1920号136頁

消費者金融会社の企業買収(M&A)を目的とする同社の全株式の譲渡契約中に、譲渡価格を同社の簿価純資産額より算出するとともに、株式の売主が買主に対し,同社の財務諸表が完全かつ正確であり、一般に承認された会計原則に従って作成されたものであること等を表明保証し,当該事項に違反した場合には、買主が現実に被った損害,損失を補償すること等を約していたところ、株式譲渡前の和解債権処理の方法が企業会計原則に違反しており、買主はそれにつき悪意重過失であったと認めることはできない等の場合には、売主は買主に対し、上記和解債権処理により不正に水増しされた株式の譲渡価格金額分について補償する義務を負うとされた。


連帯保証の事例   
東京地判平成18年10月23日金法 1808号58頁

 売掛金債務を連帯保証をする基本契約において、債権者が保証人に対して、債権者と主たる債務者との個別契約成立時に、主たる債務者が一切の債務について遅滞することなく、債務の本旨に従って、その履行がこれまでなされ、現在もなされていることなどを表明し,保証し、また、債権者には、主たる債務者が負担する金銭債務の支払の遅滞をするなどの事情が生じたときは、直ちに、債権者が連帯保証人に対し通知することが定められているにもかかわらず、実際には表明内容と異なり、また、遅滞の際の通知も怠った場合に保証人は、保証債務の責任を負わないとされた。

 

2007.10.01

超過利息と貸金業法

利息制限法の制限利息を超過する利息について、その元本充当の可否をめぐり、同法制定以来、判例の進化発展がみられた。
近時は、貸金業法によるみなし弁済規定と、利息制限法超出資法未満の高金利(いわゆるグレーゾーン金利)を合意した場合における、元本充当が主要な争点となってきていた。
この点に関し、下記⑤にみるような、画期的な最高裁判所判決があり、これをうけて、貸金業法は改正されて、グレーゾーン金利は撤廃されることとなった。そこで、貸金業法改正に至るまでの、利息制限法の制限利息に反する金利での貸付について、判例・法律の考え方を以下概観する。

①旧判例(後に②で変更される。)
超過利息を残存元本へ充当することは結果においてその返還を受けたと同一の経済的利益を生ずることになるから、利息制限法1条2項、4条2項に照らして許されない(最判昭和37年6月13日民集16巻7号1340頁)。

②判例変更
制限超過の利息、損害金は、利息制限法1条1項、4条1項により無効とされ、その部分の債務は存在しないのであるから、その部分に対する支払は弁済の効力を生じず、債務者が利息、損害金と指定して支払っても、制限超過部分に対する指定は無意味であり、結局制限超過部分は、元本が存在するときは、民法491条によりこれに充当される(最判昭和39年11月18日民集18巻9号1868頁)。

③元本充当の結果過払が生じた場合の処理
利息制限法1条2項、4条2項の規定は元本債権の存在することを当然の前提とするものであり、元本債権が既に弁済によって消滅した場合には、もはや利息、損害金の超過支払ということはあり得ないから、計算上元本が完済となった後に支払われた金額は、債権者の不当利得となる(最判昭43年11月13日民集22巻12号2526頁、最判昭和44年11月25日民集23巻11号2137頁)。

④みなし弁済
  貸金業法43条1項により、利息制限法の制限利率を超過して無効となる弁済であっても、同法17条書面(契約書面)と18条書面(受取書)の交付がなされ、任意になした弁済については、例外的に有効とした。

⑤ 期限の利益喪失条項とみなし弁済
最判平成18年1月13日民集60巻1号1頁 判時1926号17頁ⅰ 貸金業法18条1項により貸金業者が弁済を受けたときに交付すべき書面の記載事項についての内閣府令(貸金業法施行規則15条2項)は、法の委任の範囲を逸脱しており、無効である。
ⅱ 債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときに、当然に期限の利益を失する旨の約定は、利息制限法1条1項の趣旨に反し、無効である。
ⅲ ⅱの約定の下でなされた制限超過部分の支払は、特段の事情がない限り、任意性がない。


⑥貸金業法の改正によるグレーゾーン金利の廃止へ(平成18年12月)。
具体的には、
ⅰ みなし弁済制度の廃止(施行から2年半以内)
ⅱ利息制限法所定の制限利率(15%~20%)と出資法所定の上限利率(20%)の間の金利での貸付けについては、行政処分の対象とする。
ⅲ 日賦貸金業者及び電話担保金融の特例の廃止
など。
金融庁のサイトに改正の概要が掲載されている。


⑦超過利息分の元本充当による不当利得返還請求と悪意の受益者
最判平成19年2月13日判時1926号67頁)貸金業者に対する過払金返還請求の事案で、商行為である貸付に係る債務の弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において、悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は、民法所定の年5分と解するのが相当であるとされた。

2007.09.30

学納金返還請求訴訟最高裁判決

最判平成18年11月27日民集60巻9号3597頁、判時1958号12頁(学納金返還請求訴訟)

① 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」、「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約を締結した場合において、当該合格者が入学式を無断で欠席することは、特段の事情のない限り、黙示の在学契約の解除の意思表示に当たる。
② 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」、「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は、入学式の日までに明示又は黙示に同契約が解除された場合には、原則として、当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして、同号によりすべて無効となる。
とした。

2007.09.18

取得時効と登記の判例

取得時効と登記に関しては、
「時効完成後の第三者に対しては、時効取得者は、登記なくして対抗できない」とするのが、判例の原則であった。
また「時効完成前の第三者との関係は、当事者関係なので、時効取得はこの第三者に主張できる。」
そして、「時効の起算点を動かすことはできない。」
「但し、時効完成後の第三者が登記手続を経た時点から、再度時効期間が経過した場合は、占有者は新たな時効取得を主張できる。」等の判例原則もある。

下記 1は、再度の時効取得に関する、2は、時効完成後の第三者が背信的悪意者である場合に関する最近の判例。
司法試験等の勉強の際の定番論点に関する最近の判例であることから紹介。

1 最判平成15年10月31日判時1846号7頁
取得時効の援用により不動産の所有権を取得してその旨の登記を有する者は、当該取得時効の完成後に設定された抵当権に対抗するため、その設定登記時を起算点とする再度の取得時効の完成を主張し、援用をすることはできないとされた例

2 最判平成18年1月17日民集60巻1号27頁 判時1925号3頁
① 実体上、物権変動があった事実を知る者において、同物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって、このような背信的悪意者は、民法177条に言う第三者には当たらない(従来の判例理論のとおり)。
② 甲が時効取得した不動産について、その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権の移転登記を了した場合において、乙が、当該不動産の譲渡を受けた時点において、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存するときは、乙は背信的悪意者にあたる。
とされた例

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