01 民法総則・物権変動・契約総論

2013.01.06

最判平成24年3月16日(取得時効と抵当権)

最判平成24年3月16日民集 66巻5号2321頁平成22年(受)第336号 第三者異議事件(棄却)

本件各土地につき抵当権の設定を受けていた上告人が,抵当権の実行としての競売を申し立てたところ,本件各土地を時効取得したと主張する被上告人が,この競売の不許を求めて第三者異議訴訟を提起した事案。


事実関係の概要

  (1) Aは,昭和45年3月当時,平成17年3月に本件各土地に換地がされる前の従前の土地(以下「本件旧土地」という。)を所有していた。同人は,昭和45年3月,被上告人に対し,本件旧土地を売却したが,所有権移転登記はされなかった。
 被上告人は,遅くとも同月31日から,本件旧土地につき占有を開始し,サトウキビ畑として耕作していた。
  (2) Aの子であるBは,昭和57年1月13日,本件旧土地につき,昭和47年10月8日相続を原因として,Aからの所有権移転登記を了した。
 また,Bは,昭和59年4月19日,本件旧土地につき,上告人のために,本件抵当権を設定し,同日付けでその旨の抵当権設定登記がされた。
 しかし,被上告人は,これらの事実を知らないまま,上記換地の前後を通じて,本件旧土地又は本件各土地をサトウキビ畑として耕作し,その占有を継続した。また,被上告人は,本件抵当権の設定登記時において,本件旧土地を所有すると信ずるにつき善意かつ無過失であった。
  (3) 上告人は,本件各土地を目的とする本件抵当権の実行としての競売(以下「本件競売」という。)を申し立て,平成18年9月29日,競売開始決定を得た。これに対し,被上告人は,本件競売の不許を求めて本件訴訟を提起した。なお,本件競売手続については,被上告人の申立てにより,平成20年7月31日,停止決定がされた。
  (4) 被上告人は,平成20年8月9日,Bに対し,本件各土地につき,所有権の取得時効を援用する旨の意思表示をした。

1審 鹿児島地名瀬支判平成21年 6月24日金法 1955号107頁<参考収録>事件番号 平20(ワ)287号

本件土地は、10年の取得時効完成後に、被告が抵当権設定登記を経由しているから、原告はこの時点で取得時効を援用したとしても、被告に対して時効による所有権取得を対抗できないものの、原告は、本件抵当権設定登記経由後も、同経由事実を知らないまま所有の意思をもって平穏公然に本件土地の占有を継続し、本件土地を所有すると信じるにつき善意無過失でさらに10年間占有を継続していたから、本件取得時効の起算点は被告の抵当権設定登記経由時であって、原告は、被告に対し、登記を経由しなくとも取得時効をもって対抗し得るとした上で、原告は、取得時効の援用により、本件土地の所有権を原始取得したとして、原告の請求を全部認容

原審 福岡高宮崎支判平成21年11月27日金法 1955号106頁<参考収録>事件番号 平21(ネ)116号

本件では、被控訴人が短期取得時効の要件を満たした状態で本件土地の占有を開始して10年経過した後に、控訴人が本件土地につき抵当権を設定し、被控訴人がその事実を知らないままその後もさらに10年間占有を継続していたものであるところ、本件取得時効の起算点は、被控訴人による本件土地の占有開始時ではなく、控訴人による抵当権の設定登記経由時であり、また、被控訴人が本件土地を時効取得したことによって、控訴人の抵当権は消滅したとして、被控訴人の請求を認めた原判決を維持し、控訴を棄却した


控訴人は、上告したが最高裁判所は次のように論じて、上告棄却。

「所論は,時効取得者と取得時効の完成後に抵当権の設定を受けてその設定登記をした者との関係は対抗問題となり,時効取得者は,抵当権の負担のある不動産を取得するにすぎないのに,これと異なり,被上告人の取得時効の援用により本件抵当権は消滅するとした原審の判断には,法令の解釈を誤る違法があるというのである。」

(判旨)
(1) 時効取得者と取得時効の完成後に抵当権の設定を受けてその設定登記をした者との関係が対抗問題となることは,所論のとおりである。しかし,不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において,上記不動産の時効取得者である占有者が,その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続したときは,上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り,上記占有者は,上記不動産を時効取得し,その結果,上記抵当権は消滅すると解するのが相当である。

その理由として、
ア 取得時効の完成後,所有権移転登記がされないうちに,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了したならば,占有者がその後にいかに長期間占有を継続しても抵当権の負担のない所有権を取得することができないと解することは,長期間にわたる継続的な占有を占有の態様に応じて保護すべきものとする時効制度の趣旨に鑑みれば,是認し難いというべきである。

イ そして,不動産の取得時効の完成後所有権移転登記を了する前に,第三者に上記不動産が譲渡され,その旨の登記がされた場合において,占有者が,上記登記後に,なお引き続き時効取得に要する期間占有を継続したときは,占有者は,上記第三者に対し,登記なくして時効取得を対抗し得るものと解されるところ(最高裁昭和34年(オ)第779号同36年7月20日第一小法廷判決・民集15巻7号1903頁),不動産の取得時効の完成後所有権移転登記を了する前に,第三者が上記不動産につき抵当権の設定を受け,その登記がされた場合には, 占有者は,自らが時効取得した不動産につき抵当権による制限を受け,これが実行されると自らの所有権の取得自体を買受人に対抗することができない地位に立たされるのであって,上記登記がされた時から占有者と抵当権者との間に上記のような権利の対立関係が生ずるものと解され,かかる事態は,上記不動産が第三者に譲渡され,その旨の登記がされた場合に比肩するということができる。また,上記判例によれば,取得時効の完成後に所有権を得た第三者は,占有者が引き続き占有を継続した場合に,所有権を失うことがあり,それと比べて,取得時効の完成後に抵当権の設定を受けた第三者が上記の場合に保護されることとなるのは,不均衡である。

(2) これを本件についてみると,前記事実関係によれば,昭和55年3月31日の経過により,被上告人のために本件旧土地につき取得時効が完成したが,被上告人は,上記取得時効の完成後にされた本件抵当権の設定登記時において,本件旧土地を所有すると信ずるにつき善意かつ無過失であり,同登記後引き続き時効取得に要する10年間本件旧土地の占有を継続し,その後に取得時効を援用したというのである。そして,本件においては,前記のとおり,被上告人は,本件抵当権が設定されその旨の抵当権設定登記がされたことを知らないまま,本件旧土地又は本件各土地の占有を継続したというのであり,被上告人が本件抵当権の存在を容認していたなどの特段の事情はうかがわれない。

 そうすると,被上告人は,本件抵当権の設定登記の日を起算点として,本件旧土地を時効取得し,その結果,本件抵当権は消滅したというべきである。

 5 原審の前記3の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。

2012.12.31

違法建築の請負契約を公序良俗違反無効とした例(最判平成23年12月16日)

最判平成23年12月16日判時 2139号3頁

平成22年(受)第2324号 請負代金請求本訴,損害賠償等請求反訴事件(破棄差戻し)

建築基準法,同法施行令及び東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)に定められた耐火構造に関する規制,北側斜線制限,日影規制,建ぺい率制限,容積率制限,避難通路の幅員制限等に違反する違法建物の建築を目的とする請負契約が公序良俗に反し無効とされた。


「本件建築計画は,確認済証や検査済証を詐取して違法建物の建築を実現するという,大胆で,極めて悪質なものである。加えて,本件各建物は,当初の計画どおり建築されれば,耐火構造に関する規制違反や避難通路の幅員制限違反など,居住者や近隣住民の生命,身体等の安全に関わる違法を有する危険な建物となるものであって,本件各建物が完成してしまえば,事後的にこれを是正することが相当困難なものも含まれていることからすると,その違法の程度は決して軽微なものとはいえない。請負業者Xは,上記の大胆で極めて悪質な計画を全て了承し,本件各契約の締結に及んだのであり,本件各建物の建築に当たってXが注文者に比して明らかに従属的な立場にあったとはいい難い。」とした。


現実には、違法建築の依頼を受けて、発注者に押し切られる例もままあると思われるところ、違法建築の請負契約を無効としたものであり、実務的に参考になると思われる。


なお、建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約が締結されこれに基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事の施工の合意については、公序良俗に反しないとされた。

2009.03.21

過払金返還請求権の消滅時効の起算点

過払い金返還請求についての一連の最高裁判所判決でも未解決であった消滅時効の起算点について、本年になり、三つの小法廷で同一の判断が出た。その要旨は、 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合には,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限り,上記取引が終了した時から進行するというものである。


最高裁判所第一小法廷平成21年1月22日 裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=37212&hanreiKbn=01

 過払金充当合意においては,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金に係る不当利得返還請求権(以下「過払金返還請求権」という。)を行使することは通常想定されていないものというべきである。したがって,一般に,過払金充当合意には,借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず,これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当である。そうすると,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり,過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当である。
 借主は,基本契約に基づく借入れを継続する義務を負うものではないので,一方的に基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を終了させ,その時点において存在する過払金の返還を請求することができるが,それをもって過払金発生時からその返還請求権の消滅時効が進行すると解することは,借主に対し,過払金が発生すればその返還請求権の消滅時効期間経過前に貸主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることを求めるに等しく,過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反することとなるから,そのように解することはできない(最高裁平成17年(受)第844号同19年4月24日第三小法廷判決・民集61巻3号1073頁,最高裁平成17年(受)第1519号同19年6月7日第一小法廷判決・裁判集民事224号479頁参照)。


最高裁判所第三小法廷平成21年3月3日判決 裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37362&hanreiKbn=01

(判旨は1月22日判決と同様であり省略)

最高裁判所第二小法廷平成21年3月6日判決 裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=37381&hanreiKbn=01

(判旨は1月22日判決と同様であり省略)

金融庁による解説
http://www.fsa.go.jp/index.html
http://www.fsa.go.jp/policy/kashikin/20090219.html

なお、上記最高裁判所第三小法廷平成21年3月3日判決には、田原睦夫裁判官による反対意見がある。


2007.10.08

適合性の原則

金融商品取引法第40条は、「金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。① 金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれがあること。
② 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。」
としており、適合性の原則に関する規定をおいている。なお、同法は、平成18年に証券取引法等の改正法として立法され、全部の施行には至っていないが、現行法にも同様の規定がある。例えば現行の証券取引法43条は「証券会社は、業務の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、業務を営まなければならない。① 有価証券の買付け若しくは売付け若しくはその委託等、有価証券指数等先物取引、有価証券オプション取引若しくは外国市場証券先物取引の委託又は有価証券店頭デリバティブ取引若しくはその委託等について、顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることとなっており、又は欠けることとなるおそれがあること。 ② 前号に掲げるもののほか、業務の状況が公益に反し、又は投資者保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。」とし、金融先物取引法77条も、「金融先物取引業者は、業務の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、業務を行わなければならない。1.顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる受託契約等の締結の勧誘を行って顧客の保護に欠けることとなつており、又は欠けることとなるおそれがあること。2.前号に掲げるもののほか、業務の状況が公益に反し、又は委託者等の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。」との規定をおいている。
そこで、証券会社その他の金融商品取引業者が、適合性原則に反して証券その他の金融商品を販売した場合の民事上の責任が問題となる。
この点、最判平成17年7月14日民集59巻6号1323頁 判時1909号30頁は、次のように判示し、適合性原則に違反する場合の損害賠償について述べたが、当該事例については、証券会社の不法行為を否定し、賠償責任を認めなかった。かように、賠償責任自体は否定した事案であるが、適合性原則違反の場合に民事責任が発生しうることについて最高裁判所が初めて触れた判決例であり、判例として価値あるものと思う。
「証券会社の担当者が、顧客の意向と実情に反して、明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど、適合性原則に著しく逸脱する証券取引の勧誘をしてこれを行わしたときは、当該行為は不法行為法上も違法となる。」
「顧客の適合性を判断するには、単にオプション取引という一般的抽象的リスクのみを考慮するのではなく、具体的な商品特性を踏まえ、これとの相関関係において、顧客の投資経験、証券取引の知識、投資意向、財産状態との諸要素を総合的に考慮する必要がある。」
としたが、本件での当てはめでは、「証券会社甲の担当者が顧客である株式会社乙に対し株価指数オプションの売り取引を勧誘してこれを行わせた場合において、当該株価指数オプションは証券取引所の上場商品として広く投資者が取引に参加することを予定するものであったこと、乙は20億円以上の資金を有しその相当部分を積極的に投資運用する方針を有していたこと、乙の資金運用業務を担当する専務取締役らは、株価指数オプション取引を行う前から、信用取引、先物取引等の証券取引を毎年数百億円規模で行い、証券取引に関する経験と知識を蓄積していたこと、乙は、株価指数オプションの売り取引を始めた際、その損失が一定額を超えたらこれをやめるという方針を立て、実際にもその方針に従って取引を終了させるなどして自律的なリスク管理を行っていたことなどの事情の下においては、オプションの売り取引は損失が無限大又はそれに近いものとなる可能性がある極めてリスクの高い取引類型であることを考慮しても、甲の担当者による上記勧誘行為は、適合性の原則から著しく逸脱するものであったとはいえず、甲の不法行為責任を認めることはできない」とした。

2007.10.01

超過利息と貸金業法

利息制限法の制限利息を超過する利息について、その元本充当の可否をめぐり、同法制定以来、判例の進化発展がみられた。
近時は、貸金業法によるみなし弁済規定と、利息制限法超出資法未満の高金利(いわゆるグレーゾーン金利)を合意した場合における、元本充当が主要な争点となってきていた。
この点に関し、下記⑤にみるような、画期的な最高裁判所判決があり、これをうけて、貸金業法は改正されて、グレーゾーン金利は撤廃されることとなった。そこで、貸金業法改正に至るまでの、利息制限法の制限利息に反する金利での貸付について、判例・法律の考え方を以下概観する。

①旧判例(後に②で変更される。)
超過利息を残存元本へ充当することは結果においてその返還を受けたと同一の経済的利益を生ずることになるから、利息制限法1条2項、4条2項に照らして許されない(最判昭和37年6月13日民集16巻7号1340頁)。

②判例変更
制限超過の利息、損害金は、利息制限法1条1項、4条1項により無効とされ、その部分の債務は存在しないのであるから、その部分に対する支払は弁済の効力を生じず、債務者が利息、損害金と指定して支払っても、制限超過部分に対する指定は無意味であり、結局制限超過部分は、元本が存在するときは、民法491条によりこれに充当される(最判昭和39年11月18日民集18巻9号1868頁)。

③元本充当の結果過払が生じた場合の処理
利息制限法1条2項、4条2項の規定は元本債権の存在することを当然の前提とするものであり、元本債権が既に弁済によって消滅した場合には、もはや利息、損害金の超過支払ということはあり得ないから、計算上元本が完済となった後に支払われた金額は、債権者の不当利得となる(最判昭43年11月13日民集22巻12号2526頁、最判昭和44年11月25日民集23巻11号2137頁)。

④みなし弁済
  貸金業法43条1項により、利息制限法の制限利率を超過して無効となる弁済であっても、同法17条書面(契約書面)と18条書面(受取書)の交付がなされ、任意になした弁済については、例外的に有効とした。

⑤ 期限の利益喪失条項とみなし弁済
最判平成18年1月13日民集60巻1号1頁 判時1926号17頁ⅰ 貸金業法18条1項により貸金業者が弁済を受けたときに交付すべき書面の記載事項についての内閣府令(貸金業法施行規則15条2項)は、法の委任の範囲を逸脱しており、無効である。
ⅱ 債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときに、当然に期限の利益を失する旨の約定は、利息制限法1条1項の趣旨に反し、無効である。
ⅲ ⅱの約定の下でなされた制限超過部分の支払は、特段の事情がない限り、任意性がない。


⑥貸金業法の改正によるグレーゾーン金利の廃止へ(平成18年12月)。
具体的には、
ⅰ みなし弁済制度の廃止(施行から2年半以内)
ⅱ利息制限法所定の制限利率(15%~20%)と出資法所定の上限利率(20%)の間の金利での貸付けについては、行政処分の対象とする。
ⅲ 日賦貸金業者及び電話担保金融の特例の廃止
など。
金融庁のサイトに改正の概要が掲載されている。


⑦超過利息分の元本充当による不当利得返還請求と悪意の受益者
最判平成19年2月13日判時1926号67頁)貸金業者に対する過払金返還請求の事案で、商行為である貸付に係る債務の弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において、悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は、民法所定の年5分と解するのが相当であるとされた。

2007.09.30

学納金返還請求訴訟最高裁判決

最判平成18年11月27日民集60巻9号3597頁、判時1958号12頁(学納金返還請求訴訟)

① 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」、「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学の入学試験の合格者が当該大学との間で在学契約を締結した場合において、当該合格者が入学式を無断で欠席することは、特段の事情のない限り、黙示の在学契約の解除の意思表示に当たる。
② 入学手続要項等に「入学式を無断欠席した場合には入学を辞退したものとみなす」、「入学式を無断欠席した場合には入学を取り消す」等の記載がある大学の入学試験の合格者と当該大学との間の在学契約における納付済みの授業料等を返還しない旨の特約は、入学式の日までに明示又は黙示に同契約が解除された場合には、原則として、当該大学に生ずべき消費者契約法9条1号所定の平均的な損害は存しないものとして、同号によりすべて無効となる。
とした。

2007.09.23

事業協力等の協議のための基本合意中の合意の目的に反する第三者と協議を行わないこととするとの条項の効力

企業間の事業協力や経営統合、M&A等をめぐり、A社がB社との協議をしつつ、より、A社の利益になるとの経営判断の成り立つC社との協議を進めるということはありうることであるが、これを防止するために、A社とB社との間で、事業協力等の基本合意の目的に反する第三者との協議を禁ずる合意をする場合がある。このような合意の有効性をめぐり、協議禁止の仮処分を申請した例について、最高裁判所は、次のように判示して、協同事業化に関する基本合意中の基本合意の目的と抵触する他者との協議等禁止条項の効力に関し、その有効性を認めたが、協議禁止の仮処分については保全の必要性なしとして却下した(最決平成16年8月30日民集58巻6号1763頁 判時1872号28頁)。

この事件は、わが国有数の金融機関同士の訴訟として、耳目を集め、その後の訴訟事件も含め、ネット上でもいくつかの解説が見られる。
http://www.e-hoki.com/tax/comp/2923.html
http://www.makino-law.jp/ronbun/hanrei/hanrei-5.htm
など。

2007.09.21

自動継続定期預金の消滅時効

銀行に自動継続の定期預金をする場合に、預金したまま時間が経過していることがあるが、このような預金の預金払戻請求権の時効が問題となった例があった。

原審は、「自動継続定期預金においては、預金者は、預金契約締結後最初に到来する満期日(以下「初回満期日」という。)までに継続停止の申出をすることにより、初回満期日以降、預金払戻請求権を行使することができる。そのように預金者の一方的意思表示によって排除できる自動継続に係る弁済期の定めは、消滅時効の進行を妨げる法律上の障害とはならないものというべきである。したがって、上告人の本件預金の払戻請求権の消滅時効は、初回満期日である昭和○○年○月○日から進行するものと解するのが相当である。そうすると、その10年後である平成○年○月○日の経過により、本件預金の払戻請求権の消滅時効が完成したものと解される。」とした。
これに対し、最高裁判所は(最判平成19年6月7日裁判所時報1437号18頁)、
「自動継続定期預金契約における自動継続特約は、預金者から満期日における払戻請求がされない限り、当事者の何らの行為を要せずに、満期日において払い戻すべき元金又は元利金について、前回と同一の預入期間の定期預金契約として継続させることを内容とするものである(最高裁平成11年(受)第320号同13年3月16日第二小法廷判決・裁判集民事201号441頁参照)。消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する(民法166条1項)が、自動継続定期預金契約は、自動継続特約の効力が維持されている間は、満期日が経過すると新たな満期日が弁済期となるということを繰り返すため、預金者は、満期日から満期日までの間は任意に預金払戻請求権を行使することができない。したがって、初回満期日が到来しても、預金払戻請求権の行使については法律上の障害があるというべきである。」として、自動継続後の預金払戻請求には、消滅時効の進行を妨げる法律上の障害があるとした。
そして、自動継続後に継続停止ができる点については、「自動継続特約によれば、自動継続定期預金契約を締結した預金者は、満期日(継続をしたときはその満期日)より前に継続停止の申出をすることによって、当該満期日より後の満期日に係る弁済期の定めを一方的に排除し、預金の払戻しを請求することができる。しかし、自動継続定期預金契約は、預金契約の当事者双方が、満期日が自動的に更新されることに意義を認めて締結するものであることは、その内容に照らして明らかであり、預金者が継続停止の申出をするか否かは、預金契約上、預金者の自由にゆだねられた行為というべきである。したがって、預金者が初回満期日前にこのような行為をして初回満期日に預金の払戻しを請求することを前提に、消滅時効に関し、初回満期日から預金払戻請求権を行使することができると解することは、預金者に対し契約上その自由にゆだねられた行為を事実上行うよう要求するに等しいものであり、自動継続定期預金契約の趣旨に反するというべきである。そうすると、初回満期日前の継続停止の申出が可能であるからといって、預金払戻請求権の消滅時効が初回満期日から進行すると解することはできない。」

として、自動継続定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は、自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行するものとした。

2007.09.20

マンション管理費・修繕積立金支払請求権の消滅時効

マンション管理費や修繕積立金の未払分につき、滞納期間が長期にわたっている場合が時折みられる。
このような場合に、管理費や修繕積立金の支払請求権について、消滅時効が問題になるケースがある。
民法は、債権一般の消滅時効としては時効期間を10年と定めているが(民法167条)、これに対し、民法169条は、「年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する。」として、5年の短期消滅時効を定めている。
そこで、管理費や修繕積立金の支払請求権の時効期間が、10年なのか、5年なのかについて、従来見解が分かれていた。
この点について、最高裁判所は、下記のとおり、消滅時効期間を5年とした。


最判平成16年4月23日民集58巻4号959頁 判時1861号38頁本件の管理費等の債権は、前記のとおり、管理規約の規定に基づいて、区分所有者に対して発生するものであり、その具体的な額は総会の決議によって確定し、月ごとに所定の方法で支払われるものである。このような本件の管理費等の債権は、基本権たる定期金債権から派生する支分権として、民法169条所定の債権に当たるものというべきである。 その具体的な額が共用部分等の管理に要する費用の増減に伴い、総会の決議により増減することがあるとしても、そのことは、上記の結論を左右するものではない。

2007.09.18

取得時効と登記の判例

取得時効と登記に関しては、
「時効完成後の第三者に対しては、時効取得者は、登記なくして対抗できない」とするのが、判例の原則であった。
また「時効完成前の第三者との関係は、当事者関係なので、時効取得はこの第三者に主張できる。」
そして、「時効の起算点を動かすことはできない。」
「但し、時効完成後の第三者が登記手続を経た時点から、再度時効期間が経過した場合は、占有者は新たな時効取得を主張できる。」等の判例原則もある。

下記 1は、再度の時効取得に関する、2は、時効完成後の第三者が背信的悪意者である場合に関する最近の判例。
司法試験等の勉強の際の定番論点に関する最近の判例であることから紹介。

1 最判平成15年10月31日判時1846号7頁
取得時効の援用により不動産の所有権を取得してその旨の登記を有する者は、当該取得時効の完成後に設定された抵当権に対抗するため、その設定登記時を起算点とする再度の取得時効の完成を主張し、援用をすることはできないとされた例

2 最判平成18年1月17日民集60巻1号27頁 判時1925号3頁
① 実体上、物権変動があった事実を知る者において、同物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって、このような背信的悪意者は、民法177条に言う第三者には当たらない(従来の判例理論のとおり)。
② 甲が時効取得した不動産について、その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権の移転登記を了した場合において、乙が、当該不動産の譲渡を受けた時点において、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存するときは、乙は背信的悪意者にあたる。
とされた例

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