05 建築

2017.03.04

住宅瑕疵担保責任履行法のまとめ

昨年度は、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの紛争処理委員研修の講師を務めた。
担当は、判例紹介ではあったが、基本となる瑕疵担保履行法についてこの機会にまとめておく。

1 瑕疵担保履行法の制度趣旨・概要
(1)品確法の特定住宅瑕疵の担保責任の概要
新築住宅の請負人や売主は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という。)に基づき、新築住宅の請負契約においては、請負人が、新築住宅の売買契約においては、売主が、注文主・買主に引き渡した時から10年間、住宅の「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」の隠れた瑕疵(以下「特定住宅瑕疵」という。)について、瑕疵担保責任を負う(品確法94条1項、95条1項)。
なお、この場合、売主は契約解除や損害賠償のみならず、瑕疵修補の責任も負うことになる(品確法95条1項)。また、この規定に反する特約で買主に不利なものは、無効とされている(同条2項)。
新築住宅とは、建設後1年以内で人の居住に供したことのないものであって、分譲住宅だけではなく、賃貸住宅も含む(品確法2条2項)。
(2)瑕疵担保履行法の立法理由
 このように、住宅の主要構造部分などの瑕疵について、新築住宅の売主等は、10年間の瑕疵担保責任を負うこととされているが、売主等が瑕疵担保責任を十分に果たすことができない場合、住宅購入者等が極めて不安定な状態におかれる。構造計算書偽装事件では、売主である宅地建物取引業者が倒産したため、買主は損害賠償の履行を十分に受けることができず、多数・多大な消費者被害の救済が不完全なままとなった。
そこで、住宅購入者等の利益の保護を図るため、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(以下「瑕疵担保履行法」という。)」が立法された。瑕疵担保履行法では、品確法94条1項及び95条1項の特定住宅瑕疵担保責任(住宅瑕疵担保履行法2条4項)の履行を確保するため、建設業者である請負人や自ら新築住宅を販売する宅地建物取引業者に保証金の供託または瑕疵担保責任保険契約の締結を義務づけた。
なお、品確法94条1項の請負人の責任を特定住宅建設瑕疵担保責任、同法95条1項の売主の責任を特定住宅販売瑕疵担保責任という(瑕疵担保履行法2条5項2号イ、5項2号イ)。
ただし、請負契約の注文主や売買契約の買主が宅建業者である場合には、資力担保義務付けの対象とはならず、代理・媒介をする宅建業者も資力担保義務付けの対象にはならない(なお、買主に対して、宅地建物取引業法第35条の重要事項説明や同法第37条の書面交付において対応が必要。)。たとえば、分譲マンションのデベロッパーから建設工事を請け負った建設業者や、宅建業者が別の宅建業者に新築住宅を売却した場合には、保証金の供託も瑕疵担保責任保険契約の締結も不要である(瑕疵担保履行法2条5項2号ロ括弧書並びに6項2号ロ括弧書)。

住宅瑕疵担保責任履行法の概要(国土交通省)
 
2 新築住宅を請負う建設業者ならびに販売する宅地建物取引業者の供託義務
建設業者並びに宅地建物取引業者は、各基準日において、当該基準日前10年間に自ら売主となる売買契約に基づき買主に引き渡した新築住宅について、当該買主に対する特定住宅販売瑕疵担保責任の履行を確保するため、住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしていなければならない(瑕疵担保履行法2条1項、11条1項)。
そして、新築住宅を宅建業者ではない注文主に引渡した建設業者や、宅建業者ではあない買主に引き渡した売主である宅業者は、基準日ごとに、当該基準日に係る住宅販売瑕疵担保保証金の供託及び住宅販売瑕疵担保責任保険契約の締結の状況について、国土交通省令で定めるところにより基準日(毎年3月31日と9月30日の2回)から3週間以内に、免許を受けた国土交通大臣又は都道府県知事(に届け出なければならない(住宅販売瑕疵担保保証金の供託等の届出等 瑕疵担保履行法4条1項、12条1項)供託額は、販売戸数により決まるが、その床面積が55㎡以下のものは、2戸をもって一戸とする(瑕疵担保履行法3条3項、11条3項、同法施行令2条、5条)。

3 契約締結制限
新築住宅を引き渡した建設業者は、瑕疵担保保証金の供託をし、かつ、許可権者への届出をしなければ、当該基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後においては、新たに住宅を新築する建設工事の請負契約を締結してはならない(瑕疵担保履行法4条1項)。
また、新築住宅を引き渡した宅地建物取引業者は、瑕疵担保保証金の供託をし、かつ、許可権者への届出をしなければ、当該基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後においては、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結してはならない(自ら売主となる新築住宅の売買契約の新たな締結の制限 瑕疵担保履行法13条1項)。

4 瑕疵担保保証金の還付等
住宅建設瑕疵担保保証金の供託をしている建設業者(以下「供託建設業者」という。)または住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている宅地建物取引業者(以下「供託宅地建物取引業者」という。)が特定住宅建設瑕疵担保責任もしくは特定住宅販売瑕疵担保責任を負う期間内に、住宅品質確保法94条1項または95条1項 に規定する隠れた瑕疵によって生じた損害を受けた当該特定住宅建設瑕疵担保責任に係る新築住宅の注文主または当該特定住宅販売瑕疵担保責任に係る新築住宅の買主は、その損害賠償請求権に関し、当該供託宅地建物取引業者が供託をしている住宅販売瑕疵担保保証金について、他の債権者に先立って弁済を受ける権利を有する(瑕疵担保履行法6条1項、14条1項)。なお、注文主または買主が住宅販売瑕疵担保保証金の還付を請求できるのは、次の場合である(瑕疵担保履行法6条2項、14条2項)。
① 当該損害賠償請求権について債務名義を取得したとき。
② 当該損害賠償請求権の存在及び内容について当該供託建設業者または当該供託宅地建物取引業者と合意した旨が記載された公正証書を作成したときその他これに準ずる場合として国土交通省令で定めるとき。
③ 当該供託建設業者または当該供託宅地建物取引業者が死亡した場合その他当該損害の賠償の義務を履行することができず、又は著しく困難である場合として国土交通省令で定める場合において、国土交通省令で定めるところにより、前項の権利を有することについて国土交通大臣の確認を受けたとき。


5 保険加入義務
2及び3でみたとおり、新築住宅を建設する建設業者や販売する宅地建物取引業者は、住宅建設瑕疵担保保証金もしくは住宅販売瑕疵担保保証金を供託することを義務づけられているが、売主が、住宅瑕疵担保責任保険法人との間で、住宅瑕疵担保責任保険契約を締結している建物については、その住宅戸数は、供託すべき保証金の算定戸数から除かれる。すなわち、住宅建設瑕疵担保保証金もしくは住宅販売瑕疵担保保証金の額は、基準日における新築住宅のうち、当該宅地建物取引業者が住宅瑕疵担保責任保険法人と住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結し、保険証券又はこれに代わるべき書面を買主に交付した場合における当該住宅販売瑕疵担保責任保険契約に係る新築住宅を除いて算定するものとしている(瑕疵担保履行法3条2項括弧書、11条2項括弧書)。

6 瑕疵担保責任保険契約の内容
新築住宅の請負人となる建設業者や売主となる宅地建物取引業者が締結する住宅瑕疵担保責任保険契約は次の内容のものである必要がある。(瑕疵担保履行法2条5項、6項)
①  建設業者(住宅建設瑕疵担保責任保険の場合)や宅地建物取引業者(住宅販売kし担保責任保険の場合)が保険料を支払うことを約するものであること。
② その引受けを行う者が次に掲げる事項を約して保険料を収受するものであること。
イ 品確保94条1項の規定による担保の責任(以下「特定住宅建設瑕疵担保責任」という。)、95条1項の規定による担保の責任(以下「特定住宅販売瑕疵担保責任」という。)に係る新築住宅に同項に規定する隠れた瑕疵がある場合において、建設業者または宅地建物取引業者が当該特定住宅販売瑕疵担保責任を履行したときに、当該建設業者や宅地建物取引業者の請求に基づき、その履行によって生じた当該宅地建物取引業者の損害をてん補すること。
ロ 特定住宅建設瑕疵担保責任に係る新築住宅に品確法94条1項 に規定する隠れた瑕疵がある場合もしくは特定住宅販売瑕疵担保責任に係る新築住宅に品確法95条1項に規定する隠れた瑕疵がある場合において、建設業者や宅地建物取引業者が相当の期間を経過してもなお当該特定住宅販売瑕疵担保責任を履行しないときに、当該新築住宅の買主(宅地建物取引業者であるものを除く。)の請求に基づき、その隠れた瑕疵によって生じた当該買主の損害をてん補すること。
③ 前号イ及びロの損害をてん補するための保険金額が2000万円以上であること。
④ 新築住宅の発注者や買主が、当該新築住宅の請負人である建設業者当該新築住宅の引渡を受けた時から、あるいは売主である宅地建物取引業者から当該新築住宅の引渡しを受けた時から10年以上の期間にわたって有効であること。したがって、転売されても解除することはできない(瑕疵担保履行法2条5項4号、6項4号)
⑤ 国土交通大臣の承認を受けた場合を除き、変更又は解除をすることができないこと。
⑥  ①乃至⑤に掲げるもののほか、その内容が②イに規定する建設御者・宅地建物取引業者及び②ロに規定する発注者・買主の利益の保護のため必要なものとして国土交通省令で定める基準に適合すること

住宅瑕疵担保責任保険について(国土交通省)

7 建設業者による供託・瑕疵担保責任保険に関する説明
① 建設業者は、新築住宅の注文主に対し、当該新築住宅の請負契約を締結するまでに、その住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている供託所の所在地その他住宅販売瑕疵担保保証金に関し国土交通省令で定める事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない(瑕疵担保履行法10条)。
② 建設業者は、瑕疵担保責任保険の締結により、保証金の額を減ずるには、新築住宅の注文主に対し、住宅建設瑕疵担保責任保険契約を締結し、保険証券又はこれに代わるべき書面を買主に交付しなければならない(瑕疵担保履行法3条2項)。
③ 建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない(建設業法18条)とされるが、この趣旨に従い、建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して、建設業法19条1項に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。同項の記載事項に「工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容」が含まれる(同項12号)。

建設業者の届出ならびに説明については、東京都の例だが↓に詳しい

住宅瑕疵担保責任履行法にもとづく届出の手引・建設業者用(東京都)


8 宅地建物取引業者による供託・瑕疵担保責任保険に関する説明
① 宅地建物取引業者は、自ら売主となる新築住宅の買主に対し、当該新築住宅の売買契約を締結するまでに、その住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている供託所の所在地その他住宅販売瑕疵担保保証金に関し国土交通省令で定める事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明しなければならない(瑕疵担保履行法15条)。
② 宅地建物取引業者は、瑕疵担保責任保険の締結により、保証金の額を減ずるには、自ら売主となる新築住宅の買主に対し、住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結し、保険証券又はこれに代わるべき書面を買主に交付しなければならない(瑕疵担保履行法11条2項)。
③ 宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、書面を交付して、当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要を説明させなければならない(重要事項説明。宅建業法35条1項13号)。
④ 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、宅建業法37条1項各号の事項を記載した書面を交付しなければならないが、記載事項に、「当該宅地若しくは建物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容」が含まれる(同項11号)。

宅地建物取引業者の届出ならびに説明については、東京都の例だが↓に詳しい
住宅瑕疵担保責任履行法届出の手引・宅地建物取引業者用(東京都)


7 罰則等
住戸数に応じた住宅販売瑕疵担保保証金の供託もしくは瑕疵担保責任保険契約締結の義務に違反して住宅を新築する建設工事の請負契約を締結した者、または、自ら売主となる新築住宅の売買契約の締結をした者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(瑕疵担保履行法39条)。

住宅の品質確保の促進等に関する法律

特定住宅の瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律

2013.05.04

違法建築の看過と国家賠償請求

最判平成25年3月26日裁時1576号8頁
建築物の建築主が,建築基準法6条4項によりその計画の確認をした建築主事が属する特定行政庁に対し,確認の申請書に添付された構造計算書に一級建築士による偽装が行われていたことを看過してされた確認は国家賠償法1条1項の適用上違法であり,それによって改修工事費用等の財産的損害を受けたとして,同項に基づき損害賠償を求める事案

上記最高裁判決は、

1 建築士の設計に係る建築物の計画についての建築主事による建築確認は,建築主事が職務上通常払うべき注意をもって申請書類の記載を確認していればその記載から当該計画の建築基準関係規定への不適合を発見することができたにもかかわらずその注意を怠って漫然とその不適合を看過した結果当該計画につき建築確認を行ったと認められる場合に,国家賠償法1条1項の適用上違法となるとしたが、具体的事案については、

2 8階建ビジネスホテルの建築計画において,一級建築士により大臣認定プログラムの一つを用いて,構造耐力上主要な部分ごとに計算した長期及び短期の各応力度がそれぞれ長期に生ずる力又は短期に生ずる力に対する各許容応力度を超えないこと,各階の剛性率がそれぞれ10分の6以上であることなどを確かめたものとして作成された構造計算書に偽装が行われていた場合の建築主事による建築確認が国家賠償法1条1項の適用上違法となるとはいえないとした。

2012.12.31

違法建築の請負契約を公序良俗違反無効とした例(最判平成23年12月16日)

最判平成23年12月16日判時 2139号3頁

平成22年(受)第2324号 請負代金請求本訴,損害賠償等請求反訴事件(破棄差戻し)

建築基準法,同法施行令及び東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)に定められた耐火構造に関する規制,北側斜線制限,日影規制,建ぺい率制限,容積率制限,避難通路の幅員制限等に違反する違法建物の建築を目的とする請負契約が公序良俗に反し無効とされた。


「本件建築計画は,確認済証や検査済証を詐取して違法建物の建築を実現するという,大胆で,極めて悪質なものである。加えて,本件各建物は,当初の計画どおり建築されれば,耐火構造に関する規制違反や避難通路の幅員制限違反など,居住者や近隣住民の生命,身体等の安全に関わる違法を有する危険な建物となるものであって,本件各建物が完成してしまえば,事後的にこれを是正することが相当困難なものも含まれていることからすると,その違法の程度は決して軽微なものとはいえない。請負業者Xは,上記の大胆で極めて悪質な計画を全て了承し,本件各契約の締結に及んだのであり,本件各建物の建築に当たってXが注文者に比して明らかに従属的な立場にあったとはいい難い。」とした。


現実には、違法建築の依頼を受けて、発注者に押し切られる例もままあると思われるところ、違法建築の請負契約を無効としたものであり、実務的に参考になると思われる。


なお、建築基準法等の法令の規定に適合しない建物の建築を目的とする請負契約が締結されこれに基づく本工事の施工が開始された後に施工された追加変更工事の施工の合意については、公序良俗に反しないとされた。

2008.11.30

建築基準法施行令1条1号の「一の建築物」とは(その3)

標記論点について
建築基準法施行令1条1号の「一の建築物とは」(その2)にさかのぼるが 次の判例もエキスパンションジョイント接続建物例で、一の建築物性を肯定している。


東京地判平成17年11月21日 判時 1915号34頁判タ1255号190頁(肯定)

 (1) 《証拠省略》によれば、本件建物の形状等について、次のとおりの事実を認めることができる。
 ア 本件土地は、東芝府中野球場跡地である。その形状は、南北方向に長い長方形に近い形であるが、南側の境界線の方が北側の境界線より三割ほど長く、下辺の少し長い台形とも表現しうる。そして、本件土地の北側約五分の三が準工業地域、南側約五分の二が第一種中高層住居専用地域である。本件建物の敷地面積は二万七二二三・六四m2であり、そのうち建築面積は一万一九八五・一七m2である。
 イ 本件建物の概要は以下のとおりである。
 建築面積 一万一九八五・一七m2
 建ぺい率 四四・〇二%
 延べ面積 建築物全体
 六万九八四九・四五m2
 ・地階の住宅の部分の延べ面積 二二・三七m2
 ・共同住宅の共用の廊下等の部分の延べ面積 四四六八・六一m2
 ・自動車車庫等の部分の延べ面積 一万〇九五九・一八m2
 ・容積率対象の延べ面積 五万四三九九・二九m2
 容積率 一九九・八二%
 最高の高さ 四四・三〇m
 階数 地上一五階
 構造 鉄骨鉄筋コンクリート造
 一部 鉄筋コンクリート造
 ウ 本件建物の全体的な位置関係と形状
 本件建物は、A棟からG棟までの住居棟及び共用棟から成っている(別紙一(平面図)及び別紙二(イメージ図)参照)。住居棟はA棟からD棟までの北棟群とE棟からG棟までの南棟群に分けられる。北棟群と南棟群は、直接には接続していない。共用棟は、北棟群と南棟群の両者に直接に接続している。
 北棟群(A棟からD棟まで)は、概ね本件土地の中央より北寄りに位置し、凹字形を形成している。すなわち、A棟は、本件建物の敷地の北東部分から本件建物の敷地の東側の縁に沿うような形でその縁の南北方向の中央部付近までの部分に位置し、D棟は、本件建物の敷地の北西部分から、本件建物の敷地の西側の縁に沿うような形でその縁の南北方向の中央部付近までの部分に位置し、B棟及びC棟は、A棟とD棟の南端を結ぶように、東西方向にまっすぐに並んでいる(B棟が東側、C棟が西側)。A棟は、北端は四階建てで、南に行くにつれて階段状に階数が増え、南端は一〇階建てである。D棟は、北端は三階建てで、南に行くにつれて階段状に階数が増え、南端は九階建てである。B棟は、東端は一〇階建てであり、西に行くにつれて階段状に階数が増え、中央部で一五階建てとなるが、さらに西に行くと階数が減り、C棟との接続部分、すなわち西端は一四階建てである。C棟は、B棟との接続部分、すなわち東端は一三階建てであるが、西に行くにつれて階段状に階数が減り、西端は六階建てである。全体的には、東西方向に立っているB棟及びC棟の中央部分(中央部分はB棟にあたる。)がもっとも高く、一五階建てとなっており、その部分から両端に行くにつれて階段状に階数が減る形状となっている。
 南棟群(E棟からG棟まで)は、概ね本件建物の敷地の中央より南寄りに位置し、横線の方が長いL字型を形成している。すなわち、G棟は、本件建物の敷地の西側の縁の南北方向のほぼ中央部分からその縁に沿うような形で本件建物の敷地の南西端部分までに位置し、F棟及びE棟は、G棟の南端から、東西方向にまっすぐに並んでいる(E棟が東側、F棟が西側)。G棟は全部九階建てである。F棟は、西端は七階建てであり、東に行くにつれて階段状に階数が増え、E棟との接続部分、すなわち東端は一五階建てである。E棟は、F棟との接続部分、すなわち西端は一三階建てであるが、東に行くにつれて階段状に階数が減り、東端は五階建てである。全体的には、東西方向に立っているE棟及びF棟の中央部分(中央部分はF棟にあたる。)がもっとも高く、一五階建てとなっており、その部分から両脇に行くにつれて階段状に階数が減る形状となっている。
 A棟からG棟までの本件建物の住居棟部分を全体的にみれば、本件土地の中に、凹の字形のもの(A棟からD棟)が上、L字型のもの(E棟からG棟)が下に、直接には接続せずに並んでいることになるが、その中間部分に二階建ての共用棟が南北方向に建っており(L字型の縦線部分に相当するG棟の東側に、G棟に並行して建っている。)、B棟(凹の字型の底辺部分に位置する。)とF棟(L字型の横線部分に位置する。)とに接続している。また、共用棟は、G棟にも一階部分のみで接続している。
 北棟群の凹の字型に囲まれた部分には、三階建ての駐車場棟(自走式、収容台数は五九四台)があり、B棟及びC棟(凹の字型の底辺部分に相当する。)、共用棟並びにE棟及びF棟(L字型の横線部分に相当する。)に囲まれた部分には、「エフガーデン」と名づけられた中庭等がある。
 エ 各棟の接続状況
 接続する各棟は、全てエキスパンションジョイント(建築物、構造物の接続方法の一つで、構造体を物理的に分離しておくことによって、構造体が相互に力学上影響を及ぼしあわないようにする接続方法。棟と棟との間に直接応力を伝えることが危険な場合に、これを遮断して構造上の安全性を高める技法の一つ。)により接続されている。
  (ア) A・B棟間(接続部分の階数は、A棟は一〇階建て、B棟は一〇階建て。)
 渡り廊下による接続である。
 すなわち、A棟とB棟とは、南北方向に伸びる屋外に開放された各階の渡り廊下において、エキスパンションジョイントを用いて、一階から一〇階までの一〇層で接続されている。渡り廊下の長さは五・八m、幅は二・〇mであり、両棟の壁面は渡り廊下の長さと同程度離れている。各階の渡り廊下の側壁は人間の大人の腰の高さまであり、外壁面と同じ素材で覆われている。渡り廊下部分においては、両棟の構築物は幅一〇cmから三〇cm程度(階層により異なる。)離れており、エキスパンションジョイントを用いて結合され、床及び天井のみにエキスパンションジョイントカバー(エキスパンションジョイント部分を設けることにより生じた間隙について、建物の使用上支障のないようにするための仕上げ材)を施してある。
  (イ) B・C棟間(接続部分の階数は、B棟が一四階建て、C棟は一三階建て)
 共用廊下及び外装(エキスパンションジョイントカバー)による接続である。
 すなわち、B棟とC棟とは、共用廊下によって三層(一階から三階まで)で接続されている。共用廊下の幅は二・〇mである。両棟間の壁心は七〇cmの距離があるが、両棟に袖壁が設けられ、袖壁間は二〇cmの距離になっている。両棟間の接続方法はエキスパンションジョイントであり、エキスパンションジョイント部分の間隙は、一階から三階までの共用廊下の床、天井及び壁面のほか、四階部分以上の外壁面の間隙も全てエキスパンションジョイントカバーにより覆われている。
  (ウ) C・D棟間(接続部分の階数は、C棟が一三階建て、D棟が九階建て)
 渡り廊下による接続である。
 すなわち、C棟とD棟とは、南北方向に伸びる屋外に開放された各階の渡り廊下によって九層(一階から九階まで)で接続されている。渡り廊下の長さは六・五m、幅は二・〇mである。もっとも、この渡り廊下の西側の縁のうち南寄り部分は、C棟からせり出している避難階段部分と密着しており、避難階段部分の壁が渡り廊下の西側の縁の南寄り部分の壁のようになっている。この壁のある部分の距離は四・二mであるから、渡り廊下の距離からこの部分を差し引いた場合には、渡り廊下の距離は二・三mになる。各階の渡り廊下の側壁は人間の大人の腰の高さまである。渡り廊下部分においては、両棟の構築物は幅一〇cmから三〇cm程度(階層により異なる。)離れており、エキスパンションジョイントを用いて結合され、床及び天井のみにエキスパンションジョイントカバーを施してある。
  (エ) B・共用棟間(接続部分の階数は、B棟が一四階建て、共用棟が二階建て)
 B棟と共用棟とは、二層(一階と二階)の渡り廊下(屋外に開放されていない)で接続されている。これらの渡り廊下は、共用棟内の内部廊下につながる。渡り廊下の長さは五・六五m、幅は三・一mである。
  (オ) 共用棟・G棟間(接続部分の階数は、共用棟が二階建て、G棟が九階建て)
 共用棟とG棟とは、一層(一階)の渡り廊下(屋外に開放されていない)で接続されている。この渡り廊下は、共用棟内の内部廊下につながる。渡り廊下の長さは約三・四m、幅は一・九mである。
  (カ) 共用棟・F棟間(接続部分の階数は、共用棟が二階建て、F棟が一五階建て)
 共用棟とF棟とは、二層(一階と二階)の渡り廊下(屋外に開放されていない)で接続されている。これらの渡り廊下は、共用棟内の内部廊下につながる。渡り廊下の長さは六・四m、幅は二・〇mである。
  (キ) E・F棟間(接続部分の階数は、E棟が一三階、F棟が一五階建て)
 共用廊下及び外装(エキスパンションジョイントカバー)による接続である。
 すなわち、E棟とF棟とは、共用廊下によって三層(一階から三階まで)で接続されている。共用廊下の幅は二・〇mである。両棟間の壁心は八〇cmの距離があるが、両棟に袖壁が設けられ、袖壁間は二〇cmの距離になっている。両棟間の接続方法はエキスパンションジョイントであり、エキスパンションジョイント部分の間隙は、一階から三階までの共用廊下の床、天井及び壁面のほか、四階部分以上の外壁面の間隙も全てエキスパンションジョイントカバーにより覆われている。
  (ク) F・G棟間(接続部分の階数は、F棟が一三階建て、G棟が九階建て)
 渡り廊下による接続である。
 すなわち、F棟とG棟とは、各階の屋外に開放された渡り廊下によって九層(一階から九階まで)で接続されている。渡り廊下の長さは五・六五m、幅は二・〇mである。もっとも、この渡り廊下の西側の縁のうち南寄り部分は、F棟からせり出している避難階段部分と密着しており、避難階段部分の壁が渡り廊下の西側の縁の南寄り部分の壁のようになっている。この壁の距離は四・二mであるから、渡り廊下の距離からこの部分を差し引いた場合には、渡り廊下の距離は一・四五mになる。各階の渡り廊下の側壁は人間の大人の腰ほどの高さまである。渡り廊下部分においては、両棟の構築物は幅一〇cmから三〇cm(階層により異なる。)離れており、エキスパンションジョイントを用いて結合され、床及び天井のみにエキスパンションジョイントカバーを施してある。
 オ 設備等
 本件建物の居住者が共通して使用することが予定されている設備として、共用棟の一階に防災センター、サロン、パーティールーム、ミニコンビニ、クリーニング庫及びアトリエがあり、共用棟の二階にAVシアター及び防音室がある。また、B棟の一階にメールコーナー(郵便受け)、キッズルーム及び託児室があり、C棟の一階にゲストルームがある。
 エントランスは、メインエントランス一箇所、サブエントランス三箇所、合計四箇所に配置されている。メインエントランスは、本件建物の敷地の西側から入り、C棟とG棟との間を通って行って突き当たる共用棟の部分にある。サブエントランスは、A棟の南東側部分、B棟のC棟寄り部分及びE棟の北東部分にある。なお、本件建物の住居棟各棟の一階部分には、各所に非常口が設置されているが、実際はこれらの各非常口が日常出入口として用いられている。
 電気、ガス、給排水設備についても、本件建物全体につき全体を一つの系統とする一体の設備としてシステム化され、各設備ごとに配給領域を分割し、管理上の観点を加味した分岐施設の合理的な配置がされている。
 電気の引込み及び電気機械室については、電気の引込み位置がE棟のサブエントランス付近に二箇所配置され、電気機械室はA棟内、D棟付近、E棟付近及びG棟付近の四箇所に配置されている。
 給水の引込み及び受水槽については、給水の引込み位置が本件建物の敷地北西角とE棟の北側の二箇所に配置され、受水槽(一つ)は駐車場棟の北側に配置されている。
 排水枡については全部で七箇所あり、本件建物の敷地の東側に四箇所、西側に三箇所配置されている。
 ガスの引込みについては全部で五箇所あり、本件建物の敷地の北東角に一箇所、敷地の西側に等間隔に四箇所配置されている。
   (2) 以上のとおりの現況にある本件建物が、一の土地に建築することが許される「一の建築物」(建築基準法施行令一条一号)にあたるかどうか(一建築物一敷地の原則に違反するかどうか)を検討する。
 建築物がいかなる場合に「一の建築物」(建築基準法施行令一条一号)にあたるかということは、建築基準法、建築基準法施行令その他の関係法令には、具体的に定められていない。
 ところで、建築基準法施行令一条一号によれば、原則として「一の建築物」の概念によって建築基準法上の「敷地」の個数が決せられる(すなわち一建築物一敷地の原則)。そして、建築基準法における「敷地」という概念は、敷地の接道義務(建築基準法四三条一項)や容積率制限(建築基準法五二条)等、建築物の用途、規模、形態を都市計画的な観点から支障のないものとし、もって地域環境の保護、向上を図ることを目的とする規定(集団規定)における中核概念の一つとされており、登記簿上の土地の個数のとらえ方等とは必ずしも同一ではない。
 そうであれば、建築基準法上の「敷地」の個数を決する要素となる「一の建築物」にあたるか否か(建築物の個数決定)の判断基準も、原則として建築基準法を適用し、実効あらしめるための独自のものであって、民法、不動産登記法その他の法令にいう建物の個数を定める基準と一致するとは限らない。
 以上によれば、ある建築物が「一の建築物」にあたるか否かについては、建築基準法の趣旨を踏まえて、社会通念に従い、個々の事案ごとに判断していくほかない。そして、構造、機能、使用目的を異にする多様な形状の建築物が、多様な技術のもとに建築されている現代においては、個人の主観により判断が区々になることを防ぐ見地からも、専門的及び技術的見地から、「一の建築物」にあたるという一応の合理的な説明ができるものについては、その説明が社会通念上とうてい容認できないとか、建築基準法の趣旨、目的に明らかに反するなどの特段の事情のない限り、これが「一の建築物」にあたるものと判断するのが相当である。
   (3) 上記に述べたことから、本件建物について検討する。
 ア 外観上の一体性及び構造上の一体性について
 前記認定事実によれば、A棟からD棟までの北棟群は、それぞれ各棟が順次連接しており、接続部分はエキスパンションジョイント及びエキスパンションジョイントカバーにより結合されているから、構造上の一体性があると言い得る。E棟からG棟までの南棟群も同様に、各棟が順次連接しており、エキスパンションジョイント及びエキスパンションジョイントカバーにより結合されているから、構造上の一体性があると言い得る。本件建物が北棟群と共用棟のみから成る建物であるとすれば、北棟群と共用棟は、共用棟の全ての階において結合されており、構造上の一体性があると言い得る。同様に、本件建物が南棟群と共用棟のみから成る建物であるとすれば、南棟群と共用棟は共用棟の全ての階において結合されており、構造上の一体性があると言い得る。
 一五階建ての北棟群と南棟群は、直接接続されておらず、両者がいずれも二階建ての共用棟に接続されていることに伴い、間接的に接続しているにとどまるものである。本件共用棟のような低層の建物を用いて間接的に接続させていくという手法を用いれば、高層棟群がどれだけ離れていても、また、低層棟の数や高層棟(群)の数が無限に増えていっても、全体として一の建物になるというのでは、場合により社会通念に反し、また、建築基準法その他の建築関係法令の趣旨、目的に反することになるとも考えられる。
 しかしながら、本件建物は、一の低層共用棟の両側に二個の高層棟群があるというにとどまるものであって、形態としていささか異例であるとはいえ、社会通念に照らしてなお了解可能な範囲に踏みとどまっており、本件全証拠によっても、接道義務、建ぺい率、容積率制限、日影規制などの具体的規制内容が敷地を基準として定まる建築関係法令の実質的な趣旨、目的に抵触するといえるほどの事態を引き起こしていることを認めるには足りないところである。
 したがって、本件建物は、全体として構造上の一体性を何とか保っているものということができる。
 また、A棟とB棟とは各階の渡り廊下によって一〇層で接続され、B棟とC棟とは、エキスパンションジョイントカバーを含む外装及び三層の共用廊下で接続され、C棟とD棟とは、各階の渡り廊下によって九層で接続され、B棟と共用棟(二階建て)とは、地上部二層の共用廊下で接続され、共用棟とG棟とは地上部一層の共用廊下で、共用棟とF棟とは地上部二層の共用廊下で接続され、E棟とF棟とは、エキスパンションジョイントカバーを含む外装及び三層の共用廊下で接続され、F棟とG棟とは、各階の共用廊下によって九層で接続されており、中庭(エフ・ガーデン)から見れば、全体が一連のものとしてつながっていることが視認できる(但し、B・C棟の裏側にあたるD棟を除く。)から、外観上の一体性はあるというべきである。接続部分はすべて地上にあり、渡り廊下による接続については全ての階にわたりされていることからすれば、側壁が腰の高さくらいまでしかないことを考慮しても、なお外観上の一体性を損なうものとまでは言い難い。
 イ 機能上の一体性について
 前記認定事実によれば、A棟からG棟までの住戸と管理棟が一体となって一の共同住宅として機能しているというべきである。電気や給排水施設についても、付属建築物であるポンプ室及び電気室の建築設備について、電気系統、給水系統についてそれぞれ配給領域を分割し、管理上の観点を加味した分岐施設の合理的な配置がされ、その全体が一つの系統として計画されており、建築物の内外にかかわらず、一体的に管理又は使用される建築設備を利用者が共用しているものといえる。以上によれば、本件建物には、機能上の一体性もあることになる。
   (4) 原告らは、エキスパンションジョイントにより接続されただけでは建築物の外観上の一体性、構造上の一体性及び機能上の一体性があるとはいえないと主張する。
 しかしながら、エキスパンションジョイントによる接続も、構築物を結合して一体化させる方法の一つとして、今日の建築において多用されているものであり、また、建物全体の構造耐力、耐震機能、安全性を向上させながら、国民の様々な需要に応じた多様な建築物の建設を可能にするものでもあって、このようなエキスパンションジョイントにより接続されただけのものについて一律に外観上、構造上、機能上の一体性を否定することは、かえって国民の生命、健康及び財産の保護を図るという建築基準法の趣旨(建築基準法一条)を害するおそれがある。エキスパンションジョイントによる接続により、エキスパンションジョイントカバーとあいまって当該部分は一応一体化するのであるから、通常は構造上の一体性があるものと判断し、外観上の一体性や機能上の一体性を欠く場合や、一の建築物に該当するという判断が社会通念又は建築基準法の趣旨、目的に明らかに反することとなる場合に限り、一の建築物にあたらないものと判断するのが相当である。
 これに反するかの東京都建築審査会における裁決例(甲四一の二)もあるようであるが、当裁判所の採用するところではない。
 また、原告らは、エキスパンションジョイントによる接続では建築物の一体性は確保されないことの論拠として建築基準法施行令八一条二項を挙げる。
 しかしながら、同条項は、「二以上の部分がエキスパンションジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法のみで接している建築物の当該建築物の部分は、前項の規定(建築物の構造計算の方法を定めた規定)の適用については、それぞれ別の建築物とみなす。」と定めているにすぎない。同条項は、エキスパンションジョイントのみによる接続部分がある建築物であっても全体として一の建築物と解される場合があることを前提として、そのような建築物であっても、建築基準法二〇条二号の規定により政令で定める構造計算に関する規定(建築基準法施行令八一条以下)の適用については、エキスパンションジョイントにより接続されていない別々の建築物とみなしてこれらの規定を適用することを定めたにすぎない。建築基準法及び同法施行令において、エキスパンションジョイントによる接続の方法を採った場合には当然に別の建築物となるという考え方が採用されているのであれば、同法施行令八一条二項において「別の建築物とみなす」という表現を用いる必要はないものと考えられる。したがって、この点に関する原告らの主張は採用できない。
 また、原告らは、本件建物のような一五階建ての建物が、そのうちエキスパンションジョイントを用いて共用棟と二層(渡り廊下で接続されているB・C棟間及びE・F棟間においては三層)で接続されているだけでは、一体性は認められない旨主張する。
 確かに、一体性があるというためには、建物の高さ(階数)が増えるごとに接続されるべき層数がこれに比例して増加するとしたほうが社会通念により適合するともいえる。
 しかしながら、高層建物が地階部分だけでしか接続されていない場合に一体性があるとすることは社会通念にあまりに反するといえようが、二層又は三層で接続されている場合については、「一の建築物」が建築基準法上独自の概念であるという前提にも照らし、接続される層数が少ない場合に一体性があると判断することが明らかに社会通念に反するということは困難である。なお、本件建物については、二層による接続部分は高層の住居棟と二階建ての共用棟との接続部分であるし、三層による接続部分(B・C棟間及びE・F棟間)は、四層目以上についてはエキスパンションジョイントカバーにより間隙部分は覆われているから外観上の一体性は確保されているといいうるし、渡り廊下による接続の場合(A・B棟間、C・D棟間及びF・G棟間)には、九層か一〇層による接続がされていることについては前記認定事実のとおりである。したがって、この点についての原告らの主張も採用することはできない。
 上記に関連して、原告らは、本件建物の建築確認処分についての審査請求事件において建築審査会が違法と指摘したB・C棟間やE・F棟間の壁心間の距離は、袖壁を設けることによっては何ら是正されていないともいうが、外観上の一体性は見た目の問題であるから、見た目が一体らしく補正されれば、是正されたことになるというべきであって、この点についての原告らの主張も採用できない。
 さらに、原告らは、A棟やG棟の共用廊下が同一階内でバルコニーで寸断され、端から端まで貫通していないこと等を指摘し、本件建物においては共用廊下をバルコニーで寸断する必要はなく、共用廊下をバルコニーで寸断しなければ本件建物に原告らの主張するところの空中廊下(屋外に開放された渡り廊下のこと)は不要であり、この空中廊下がなければ本件建物は一体性を失う等とも主張する。しかしながら、同一階内のあらゆる部分が当該層の共用廊下により連絡していることが一の建築物というための必須の要件であるとはいえないし、屋外に開放された渡り廊下(原告らのいう空中廊下)の部分においてエキスパンションジョイントにより接続されていることが、それだけで建物の一体性を否定されるような接続方法であるとはいえないことも前記説示のとおりである。いかなるデザイン、意匠、設計の建築物を敷地上に建築するか等ということは、建築基準法上適法な範囲内であれば、原則として敷地利用権者の自由な判断に委ねられ、共用廊下を貫通させるか分断するかそれ自体は建築主の裁量に属するものというべきである。したがって、この点の原告の主張はできない。
   (5) 以上のとおりであるから、本件建物は一建築物一敷地の原則(建築基準法施行令一条一号)に違反するものではなく、この点に関する原告らの主張には理由がない。

2008.11.29

建築基準法施行令1条1号の「一の建築物」とは(その2)

先に、「建築基準法施行令1条1号の「一の建築物」とは(東地判平成13年2月28日判時1748号110頁をめぐって)」として、エキスパンションジョイントで接続した建物について、の一建物性についての上記判例を紹介した。この論点については、その後も時折,建築審査会に対する審査請求事案や取消訴訟において争点となるようであり,東京地判平成19年9月27日(裁判所ウエッブサイト・平成18年(行ウ)482号事件)もこの争点についての事案であった(一の建築物肯定例)。同判決は,
「ア 建築基準法施行令1条1号は,一つの敷地に建築することができるのは原則として「1の建築物」であるとし(一建築物一敷地の原則),例外として用途上不可分の関係にある「2以上の建築物」を一つの敷地に建築することができると定める。建築基準法は,敷地の接道義務(43条1項),容積率及び建ぺい率の制限(52条,53条),隣地斜線制限及び北側斜線制限(56条),日影制限(56条の2)など,都市計画実現の一環として,都市環境の整備及び保護を図るために建築物の用途,密度,形態及び規模について建築規制を行うための規定による制限を敷地単位で行うものとしており,一建築物一敷地の原則は,上記各制限を実効あらしめる役割を有している。」とした上で、1の建築物といえるための基準については、
「 建築物がいかなる場合に「1の建築物」に当たるかという点については,建築基準法及び同法施行令等にこれを定めた規定はない。そして,「1の建築物」が建築基準法による上記規制を実効あらしめるための重要な概念であることにかんがみれば,ある建築物が「1の建築物」に当たるか否かについては,建築基準法の趣旨を踏まえて,社会通念に基づき各事案ごとに決せざるを得ないが,同法施行令1条1号が「1の建築物」と定めていることからすると,建築基準法の趣旨を踏まえて,社会通念に照らし,構造上,外観上及び機能上の各面を総合的に判断して,一体性があると認められる建築物は,「1の建築物」に当たると解するのが相当である。」とした。
そして、具体的事案についての当てはめについては,
まず本件建物の構造について、「 (ア) 本件高層棟と本件低層棟とは,地下1階部分の構造体が約6.9mの幅で隣接しており,本件低層棟の1階,2階及び3階部分は,約3m離れてはいるものの,本件低層棟には,幅員約4.4又は2m,長さ約3mのコンクリート製の渡り廊下(いずれも開放されている。)が設置されており,この渡り廊下がエキスパンション・ジョイントにより本件高層棟と接続されている。
 本件高層棟と本件低層棟との各地下1階の構造体の位置関係及び1階から3階までの位置関係に加え,本件低層棟が地下1階地上5階の建物であるが,本件低層棟の住居の共用廊下は4階部分までしかないところ,本件高層棟と本件低層棟とは,その大部分である1階から3階までがいずれも渡り廊下及びエキスパンション・ジョイントにより接続されていることからすれば,本件高層棟と本件低層棟とは,構造上の一体性を否定されるものではなく,構造上それぞれ独立した建物であるとまではいえない。」とした。
 ついで、外観についても,「上記各事情に併せて本件高層棟の3階部分までは本件低層棟側に延びている形状をしており,本件高層棟と本件低層棟とが接続していることは外観上も看取できることからすると,外観上において同様である。」として,外観上の一体性を認めた。
 そして,機能の面については,「 (イ) 本件高層棟には,メインエントランス(ホール,事務所受付,インフォメーションセンター),ラウンジ,ロビー,集会コーナー,郵便箱,宅配箱,駐車場が設置され,他方,本件低層棟にはサブエントランスが二つ,バイク置場,駐輪場が設置されており,本件低層棟及び本件高層棟の住民は,上記本件高層棟と本件低層棟との間の渡り廊下等を利用してこれらの各施設を相互利用する構造であるといえる。特に,本件高層棟の住民が自転車を利用して移動する場合及び本件低層棟の住民が自動車を利用して移動する場合には,いずれも,本件低層棟駐輪場や通路又は本件高層棟の駐車場及び車路を利用しなければならないといえる。なお,本件低層棟には,2か所にサブエントランスが設置されているが,これらのサブエントランスには,インフォメーションセンター,事務所受付といった設備がなく,また,いずれも幅員約3mの道路にしか接続しておらず,事務所受付,インフォメーションセンターといった設備を有し,ラウンジやロビーといった共益施設へも近接しており,かつ,幅員16.67mの道路と接続しているメインエントランスに比べるとエントランスの機能面でみても,明らかに劣っているといわざるを得ない。出入口に隣接することが便宜な郵便箱や宅配箱等がメインエントランスの利用者により利用しやすい位置に設置されていることを併せ考慮すれば,上記サブエントランスは,いずれもメインエントランスの機能を補うために設けられた出入口にすぎず,本件高層棟のみならず本件低層棟の住民らも,主たる出入口としても上記メインエントランスを利用することを企図して設置され,他方,メインエントランスでは補いきれない住民らの利用上の便宜に応える観点から,各サブエントランスが補助的に設置されたものといえる。
 さらに,本件高層棟地下1階又は1階に配置された集会コーナー,ゴミ置場,受水・排水施設,受電施設,事務室は,いずれも本件低層棟の住民らの集会,ゴミの搬出,上下水道の利用,電気の利用,施設管理に用いられることとなるものであり,上記施設が本件低層棟の使用,維持,管理において不可欠な施設であるといえる。
 そうすると,本件高層棟と本件低層棟とは,機能上において一体のものであるといえる。」として、機能上の一体性も認めた。
 なお、原告らが、「「1の建築物」といえるためには,渡り廊下で接続されている建物相互には構造力学上の一体性を有しないため,機能上,外観上一体の建物として計画されているかが問題となるところ,本件高層棟と本件低層棟は,それぞれ独立したエントランスを有すること,本件低層棟3階の渡り廊下には屋根がなく,2階部分の屋根を通路としたものにすぎず,実質的には本件高層棟と本件低層棟とは外観上2層のみにより接続しているにすぎないことからすれば外観上の一体性はなく,また,共同住宅の場合には各棟ごとで独立した機能を有しており,用途上も可分であるといえるとし,本件建築物は「1の建築物」ではなく,また,用途上不可分な「2以上の建築物」にも該当しないと主張」している点については、「エキスパンション・ジョイントは,構造体を物理的に分離する方法によって力学上応力を加えず,接続する構造同士の構造力学に影響を与えないようにすることを意図してなされる接続方法であること,エキスパンション・ジョイントによる接続方法も今日の建築に多用されているものであることからすれば,上記エキスパンション・ジョイントにより接続された建物同士の構造上の一体性を検討する場合に構造力学上分離されていることのみを根拠としてこれを否定することはできないと解すべきである。」として,エキスパンションジョイントによる構造力学上の分離性をもっても構造上の一体性ありとみることと矛盾しないとしつつ,エントランスについては,「本件低層棟に設置されたサブエントランスは,上記(イ)のとおり,メインエントランスに取って代わるものではなく,あくまでも補助的に配置されたものであるといえる。さらに,証拠(略)によると,本件低層棟3階の渡り廊下には,手すりや階段がコンクリートにより設置されていることは外観上も明らかであって,本件高層棟の屋外庭園に併設して設置される通路に接続するのであるから,渡り廊下や本件高層棟の通路部分に屋根がないことのみから,外観の上で本件高層棟3階と本件低層棟3階部分が接続していることが否定されるものではない。」として排斥した。

2007.12.28

元請業者の孫請業者に対する立替払と相殺

請負業者の倒産に際し、注文主には請負代金支払義務が存在している反面、事実上請負の履行が困難となるが、下請等に直接払いすることができれば、現実的な解決ができる反面、請負代金支払義務は残存するので、二重払いの危険がなしとできない。
この点について、予め下請けとの請負契約中に立替払と相殺についての条項を入れることで、予防している例についての高裁判例が存在する。


東高判平成17年10月5日判タ1226号342頁

請負契約約款に立替払約款及び相殺約款がある場合に、下請業者が民事再生手続を申し立てた後に、元請業者が孫請業者らに対し下請業者の有する請負代金債務を立替払して、これにより取得した立替金請求債権を自働債権として下請業者に対する請負代金債務とを相殺することについて、孫請業者の連鎖倒産を防止すること、建築物の品質の同一性を保ち、瑕疵が生じた時の責任の所在を明確化すること等から請負契約約款における立替払約款の必要性を認め、その立替金債権と下請代金との相殺を認める約款を設けることにより、元請業者の二重払いの危険を防ごうと企図することは建設請負工事の施工の実態からある程度避けがたいことで、これらの約款には下請業者の倒産に伴う様々なリスクの顕在化を予め防止する上で相応の合理性があるとして、この約款にもとづいて元請業者が取得した本件の立替金債権は、改正前民事再生法93条4号ただし書き中段の「再生債権者が支払の停止等があったことを知った時より前に生じた原因に基づくとき」に該当し、当該債権と請負代金債務との相殺についても、本件では元請業者の支払停止時の混乱に乗じて不当な利益を得ようとする等の事情がなく、相殺権の行使が権利の濫用に当たらず許されるとした。

2007.10.28

第54回 全国建築審査会会長会議

2007年10月25日 那覇において 全国建築審査会会長会議があり、出席
議決事項報告事項の後の報告、講演等の標目はつぎのとおり

1 研究会報告 建築審査会のあり方に関するアンケート調査について(経過報告)
2 講演 市場主義の下での建築規制
3 建築行政の近況報告
(1) 構造計算書偽装問題への対応
(2) その他、最近の方改正事項
  ・ 住宅建築物の省エネ対策について
  ・ 住宅・建築物の耐震改修の促進について
  ・ バリアフリー法について
  ・ アスベスト規制について
  ・ 建築行政の執行体制の強化について
  ・ 建築行政共用データベースシステムについて
4 審査請求の事例報告
  ・ 地盤面が問題とされる審査請求事件の審理について
  ・ 不適合通知の取り消し処分についての審査請求事例について
  ・ 道路の取扱を理由とした建築確認処分の取消請求事例について
5 意見発表
  ・ 建築許可とまちづくりについて
  ・ 建築基準法3条に基づく富士信仰「御師外川家」の指定について
  ・ 保存建築物の利活用事例について~勝山市旧機業場
  ・ 狭隘道路にかかわる建議とその後
  ・ 市街化調整区域におけるグループホームの建築について

2007.10.10

建築の瑕疵と不法行為

建築物の瑕疵に対して、注文主が請負人に対し損害賠償を請求する場合、通常は、瑕疵担保責任の規定による。
しかし、注文主が転売した場合、買主は、請負人とは直接の契約関係には立たないことから、不法行為責任による損害賠償請求を検討せざるを得ないであろう。従来、請負人が不法行為責任を負うのは、加害性が強い場合に限定されていたと解されるが、下記は、居住者の生命・身体・財産の侵害がなされた場合の注意義務違反を認めた例として、重要な判例と理解する。

最判平成19年7月6日裁判所時報1439号2頁・民集61巻5号1769頁
建物を、建築主から購入した者が、当該建物にはひび割れ等の瑕疵があると主張して、建築の設計及び工事監理をした建築士及び施行をした建設工事請負人に対し、損害賠償ないし瑕疵修補償費用の請求をしたところ、設計・施行者等は、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当であり、瑕疵により、居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、不法行為による賠償責任を負うとした例

2007.10.09

指定確認機関の建築確認と地方公共団体の責任

最判平成17年6月24日判時1904号69頁

指定確認機関の確認に係る建築物について、確認する権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、指定確認機関の当該確認について、行政訴訟法21条1項所定の「当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は地方公共団体にあたるとして、横浜市内で建築中の建物の建築確認の取消訴訟が当該建築物が完成し、訴えの利益が消滅したことから、横浜市への国家賠償請求に訴えの変更を申立てたところ、これを認めた。


この判例については、民間確認機関の建築確認と第三者との紛争との表題で紹介済み。

2006.07.04

民間確認機関の建築確認と第三者との紛争

事務所内の研修で、下記の話をした(2006年7月3日)。

1 建築確認とは
  ① 建築基準法6条1項で建築確認を規定。
    若干読みにくいが、1項4号により、都市計画区域内における建築物については、原則として、当該工事に着手する前にその計画が建築基準関係規定、建築物の敷地、構造または建設設備に関する法令に適合するものであることについての建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならないとされることから、都市計画区域内に建てる建物=普通の建物は、必ず建築確認が必要(=よほど特殊な事情の建物ではない限り、建築確認は必要)と考えていればよいのでは?
  ② 建築基準法6条5項で建築確認の必要な建物についてこれを経ないで建築することを禁止。
 ③ 建築確認の法的性質
α 確認説 建築確認を準法律行政行為とみて、裁量の余地なしとする。
β 許可説 建築確認を法律的行政行為とみて、裁量の余地あるとする。
  →β説では、建築基準関係規定等に準拠している計画でも確認しないとの可能性がありうるか?
  →判例は両方あり。通説は確認説か?
  →α説、β説を問わず、建築確認が行政事件訴訟法の取消訴訟の対象となる処分性を有することについては、現時点では争いない。

2 民間確認機関とは
 ① 建築基準法77条の18から21で、指定確認検査機関(いわゆる民間確認機関)の規定を置く。
  ② 同法6条の2、1項で、5条1項の建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、民間確認機関の確認を受け、国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは、当該確認は5第1項の規定による確認と、当該確認済証は同項の確認済証とみなされる。

3 建築確認を第三者が争う手続き
(1)建築審査請求
  ① 建築確認の処分性
  ・ 建築基準法令の規定による特定行政庁、建築主事若しくは建築監視員又は指定確認検査機関の処分又はこれに係る不作為に不服がある者は、行政不服審査法第3条第2項 に規定する処分庁又は不作為庁が、特定行政庁、建築主事又は建築監視員である場合にあっては当該市町村又は都道府県の建築審査会に、指定確認検査機関である場合にあっては当該処分又は不作為に係る建築物又は工作物について第6条第1項(第87条第1項、第87条の2又は第88条第1項若しくは第2項において準用する場合を含む。)の規定による確認をする権限を有する建築主事が置かれた市町村又は都道府県の建築審査会に対して審査請求をすることができる(建築基準法94条1項)。

   
② 審査請求前置主義
  ・ 第94条第1項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する建築審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができない(建築基準法96条)。
  
・ 審査請求前置の緩和
    特定行政庁の特例許可につき建築審査会が同意(ex 建築基準法43条1項但書の同意)している場合。 
・   処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない(行政事件訴訟法8条1項)。
・  前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。
1 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。
2 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。
3 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。
    (行政事件訴訟法8条2項)

  ③ 審査請求期間
  ・ 審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内(当該処分について異議申立をしたときは、当該異議申立てについての決定があったことを知った日の翌日から起算して30日以内)に、しなければならない。ただし、天災その他審査請求をしなかったことについてやむを得ない理由があるときは、この限りではない(行政不服審査法14条1項)。
  ・ 審査請求は、処分(当該処分について異議申立てをしたときは、当該異議申立てについての決定)があった日の翌日から起算して、1年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りではない(行政不服審査法14条3項)。

  ④ 申立てから裁決までの流れ(添付資料①参照。)  

⑤ 職権探知主義
     審査庁は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、適当と認める者に、参加人としてその知っている事実を陳述させ、又は鑑定を求めることができる(行政不服審査法27条)。
 
   ⑥ 執行停止
   ・ 審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続きの続行を妨げない(行政不服審査法34条1項)
   ・ 処分庁の上級行政庁である審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置をすることができる(同条2項)。

(2)行政訴訟
   建築確認処分の取消訴訟(行政事件訴訟法8条)
   ① 原告適格 行政事件訴訟法9条1項 法律上の利益を有する者
         同条2項 法律上の利益を有する者の基準
         最判平成14年1月22日判時1781号82頁
         最判平成14年3月28日判時1781号90頁
  
   ② 訴えの利益 建築確認処分の対象となった建築物の建築工事が完了した場合、確認処分の取消を求める訴えの利益は失われる。
         最判昭和59年10月26日判時1136号53頁
(3)国家賠償請求  国家賠償法1条

4 ケーススタディ
 民間確認機関がなした建築確認に対する取消訴訟中に建築物が竣工し完了検査も終了した場合と地方公共団体に対する国家賠償請求への訴えの変更の可否
(最判決平成17年6月24日判時1904号69頁について)
(1)経緯
   平成14年5月1日  建築確認(某民間確認機関)
   平成14年6月27日  建築確認取消の審査請求(横浜市建築審査会)
   平成14年9月6日  口頭審査
   平成14年12月6日  建築確認取消請求訴訟の提訴
平成15年1月23日  審査請求裁決(棄却)
平成16年3月9日  完了検査(某民間確認機関)
平成16年5月?日  訴えの変更(被告を横浜市 請求を国家賠償請求)
平成16年6月?日  訴えの変更に対する許可決定(横浜地裁・判例集未搭載?・横浜市即時抗告)
平成16年10月?日  即時抗告に対する棄却決定(東京高裁・判例集未搭載?・横浜市許可抗告申立)
平成17年6月24日 抗告棄却(最高裁判所)
(2)争点
① 開発許可不要判断の違法性
② 構造耐力違反
③ 高さ制限違反
④ 景観風致保全要綱違反
⑤ 民間確認機関に対する確認処分取消訴訟を地方公共団体に対する国家賠償請求訴訟への訴えの変更することの可否
    ⅰ 民間確認機関の確認処分に係る事務が当該地方公共団体の事務にあたるか?
    ⅱ 訴えの変更をすることが相当であると認められるか?
5 添付資料
   ① 審査請求手続の流れ
② 略
③ 略
   ④ 判例時報1904号69頁
   ⑤ 「指定確認検査機関の事務は市が責任を負う」確認の違法性が認められた場合はどうするか(日経アーキテクチャ2005年10月3日号34頁)

2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ