肖像権侵害が認められる場合とは(ピンクレディ無断写真掲載事件・最判平成24年2月2日)
最判平成24年2月2日民集 66巻2号89頁
平成21年(受)第2056号 損害賠償請求事件 (棄却)
ピンクレディの写真を無断で記事に掲載したという事案について、
最高裁判所は、まず、どのような場合に 人の肖像の写真の無断掲載が違法となるかについての基準についてつぎのように述べ、
「 人の氏名,肖像等を無断で使用する行為は,(a)肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用
し,(b)商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し,(c)肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら肖
像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,パブリシティ権を侵害するものとして,不法行為法
上違法となると解するのが相当である。」
「人の氏名,肖像等(以下,併せて「肖像等」という。)は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来
するものとして,これをみだりに利用されない権利を有すると解される(氏名につき,最高裁昭和58年(オ)第1311号
同63年2月16日第三小法廷判決・民集42巻2号27頁,肖像につき,最高裁昭和40年(あ)第1187号同44年12月24日大法廷判決・刑集23巻12号1625頁,最高裁平成15年(受)第281号同17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁各参照)。そして,肖像等は,商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり,このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下「パブリシティ権」という。)は,肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから,上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる。」
本件については、次のように述べて、違法性を否定した。
「肖像等に顧客吸引力を有する者は,社会の耳目を集めるなどして,その肖像等を時事報道,論説,創作物等に使用されることもあるのであって,その使用を正当な表現行為等として受忍すべき場合もあるというべきである。本件記事の内容は,ピンク・レディーそのものを紹介するものではなく,前年秋頃に流行していたピンク・レディーの曲の振り付けを利用したダイエット法につき,その効果を見出しに掲げ,イラストと文字によって,これを解説するととも
に,子供の頃にピンク・レディーの曲の振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するというものである。
そして,本件記事に使用された本件各写真は,約200頁の本件雑誌全体の3頁の中で使用されたにすぎない上,いずれも白黒写真であって,その大きさも,縦2.8㎝,横3.6㎝ないし縦8㎝,横10㎝程度のものであったというのである。これらの事情に照らせば,本件各写真は,上記振り付けを利用したダイエット法を解説し,これに付随して子供の頃に上記振り付けをまねていたタレントの思い出等を紹介するに当たって,読者の記憶を喚起するなど,本件記事の内容を補足する目的で使用されたものというべきである。」
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