4気になる判例平成19年

2011.02.26

AB共同して行っていた暴走行為車両の同乗者Bの被害事故について、暴走運転者Aの過失を被害者側の過失として、考慮することができるか(その2)。 (最近の交通事故判例~平成20年から22年の最高裁判決を中心に(その6))

② 裁判経過

1審 岡山地判平成18年2月14日交民 41巻4号865頁

相対的過失相殺を採用
本件においては,二者の過失が競合したことにより一つの交通事故が発生したというものであるが,他方で,被害者たるBは,Aの運転する本件バイクに同乗して,ときに自ら本件バイクを運転して,Aと行動を共にしてきたものであり,Aと特別な関係にあるといえ,過失の内容もAのそれとほとんど共通するものであり,被告Aの過失を抜きにしてはBの絶対的過失割合を定めることができないものである。
 したがって,本件においては,絶対的過失割合を認定することは困難であり,絶対的過失割合による過失相殺の方法は相当ではなく,むしろ,各加害者と被害者との関係ごとにその間の過失の割合に応じて相対的に過失相殺するという方法が本件事案の実態に即しており,それによることが相当であると解される。

(1) BとA(バイク運転者)との間  被害者Bの過失3割
(2) BとC警察官との間  被害者Bの過失9割


控訴審 広島高岡山支判平成19年6月15日交民 41巻4号865頁

絶対的過失割合を採用
本件は、バイク運転者の過失を後部同乗者の過失として考慮するのが適切といえる場合に該当するとは考えられないうえ、Bには、ヘルメットを装着せず、自らの死の危険性を高めたことなどの点において、本件交通事故につき、被告らとの関係において、独自の過失が観念でき、しかも、その過失割合は、相手方C(の運行供用者O)との関係でも、運転者Aとの関係でも同一の割合になるものと解され、絶対的過失割合を認定できるというべきであるから、上記主張は採用できない。


被害者側の過失論の不採用
B及びAに身分上・生活関係上の一体性がないことは明らかであり、損害の公平な分担の見地からも、Aの過失を被害者側の過失として斟酌することは相当でないから、上記主張は採用できない。

運転者A   60%
相手方C(運行供用者のO県) 20%
同乗者(被害者)B 20%


2008.11.29

建築基準法施行令1条1号の「一の建築物」とは(その2)

先に、「建築基準法施行令1条1号の「一の建築物」とは(東地判平成13年2月28日判時1748号110頁をめぐって)」として、エキスパンションジョイントで接続した建物について、の一建物性についての上記判例を紹介した。この論点については、その後も時折,建築審査会に対する審査請求事案や取消訴訟において争点となるようであり,東京地判平成19年9月27日(裁判所ウエッブサイト・平成18年(行ウ)482号事件)もこの争点についての事案であった(一の建築物肯定例)。同判決は,
「ア 建築基準法施行令1条1号は,一つの敷地に建築することができるのは原則として「1の建築物」であるとし(一建築物一敷地の原則),例外として用途上不可分の関係にある「2以上の建築物」を一つの敷地に建築することができると定める。建築基準法は,敷地の接道義務(43条1項),容積率及び建ぺい率の制限(52条,53条),隣地斜線制限及び北側斜線制限(56条),日影制限(56条の2)など,都市計画実現の一環として,都市環境の整備及び保護を図るために建築物の用途,密度,形態及び規模について建築規制を行うための規定による制限を敷地単位で行うものとしており,一建築物一敷地の原則は,上記各制限を実効あらしめる役割を有している。」とした上で、1の建築物といえるための基準については、
「 建築物がいかなる場合に「1の建築物」に当たるかという点については,建築基準法及び同法施行令等にこれを定めた規定はない。そして,「1の建築物」が建築基準法による上記規制を実効あらしめるための重要な概念であることにかんがみれば,ある建築物が「1の建築物」に当たるか否かについては,建築基準法の趣旨を踏まえて,社会通念に基づき各事案ごとに決せざるを得ないが,同法施行令1条1号が「1の建築物」と定めていることからすると,建築基準法の趣旨を踏まえて,社会通念に照らし,構造上,外観上及び機能上の各面を総合的に判断して,一体性があると認められる建築物は,「1の建築物」に当たると解するのが相当である。」とした。
そして、具体的事案についての当てはめについては,
まず本件建物の構造について、「 (ア) 本件高層棟と本件低層棟とは,地下1階部分の構造体が約6.9mの幅で隣接しており,本件低層棟の1階,2階及び3階部分は,約3m離れてはいるものの,本件低層棟には,幅員約4.4又は2m,長さ約3mのコンクリート製の渡り廊下(いずれも開放されている。)が設置されており,この渡り廊下がエキスパンション・ジョイントにより本件高層棟と接続されている。
 本件高層棟と本件低層棟との各地下1階の構造体の位置関係及び1階から3階までの位置関係に加え,本件低層棟が地下1階地上5階の建物であるが,本件低層棟の住居の共用廊下は4階部分までしかないところ,本件高層棟と本件低層棟とは,その大部分である1階から3階までがいずれも渡り廊下及びエキスパンション・ジョイントにより接続されていることからすれば,本件高層棟と本件低層棟とは,構造上の一体性を否定されるものではなく,構造上それぞれ独立した建物であるとまではいえない。」とした。
 ついで、外観についても,「上記各事情に併せて本件高層棟の3階部分までは本件低層棟側に延びている形状をしており,本件高層棟と本件低層棟とが接続していることは外観上も看取できることからすると,外観上において同様である。」として,外観上の一体性を認めた。
 そして,機能の面については,「 (イ) 本件高層棟には,メインエントランス(ホール,事務所受付,インフォメーションセンター),ラウンジ,ロビー,集会コーナー,郵便箱,宅配箱,駐車場が設置され,他方,本件低層棟にはサブエントランスが二つ,バイク置場,駐輪場が設置されており,本件低層棟及び本件高層棟の住民は,上記本件高層棟と本件低層棟との間の渡り廊下等を利用してこれらの各施設を相互利用する構造であるといえる。特に,本件高層棟の住民が自転車を利用して移動する場合及び本件低層棟の住民が自動車を利用して移動する場合には,いずれも,本件低層棟駐輪場や通路又は本件高層棟の駐車場及び車路を利用しなければならないといえる。なお,本件低層棟には,2か所にサブエントランスが設置されているが,これらのサブエントランスには,インフォメーションセンター,事務所受付といった設備がなく,また,いずれも幅員約3mの道路にしか接続しておらず,事務所受付,インフォメーションセンターといった設備を有し,ラウンジやロビーといった共益施設へも近接しており,かつ,幅員16.67mの道路と接続しているメインエントランスに比べるとエントランスの機能面でみても,明らかに劣っているといわざるを得ない。出入口に隣接することが便宜な郵便箱や宅配箱等がメインエントランスの利用者により利用しやすい位置に設置されていることを併せ考慮すれば,上記サブエントランスは,いずれもメインエントランスの機能を補うために設けられた出入口にすぎず,本件高層棟のみならず本件低層棟の住民らも,主たる出入口としても上記メインエントランスを利用することを企図して設置され,他方,メインエントランスでは補いきれない住民らの利用上の便宜に応える観点から,各サブエントランスが補助的に設置されたものといえる。
 さらに,本件高層棟地下1階又は1階に配置された集会コーナー,ゴミ置場,受水・排水施設,受電施設,事務室は,いずれも本件低層棟の住民らの集会,ゴミの搬出,上下水道の利用,電気の利用,施設管理に用いられることとなるものであり,上記施設が本件低層棟の使用,維持,管理において不可欠な施設であるといえる。
 そうすると,本件高層棟と本件低層棟とは,機能上において一体のものであるといえる。」として、機能上の一体性も認めた。
 なお、原告らが、「「1の建築物」といえるためには,渡り廊下で接続されている建物相互には構造力学上の一体性を有しないため,機能上,外観上一体の建物として計画されているかが問題となるところ,本件高層棟と本件低層棟は,それぞれ独立したエントランスを有すること,本件低層棟3階の渡り廊下には屋根がなく,2階部分の屋根を通路としたものにすぎず,実質的には本件高層棟と本件低層棟とは外観上2層のみにより接続しているにすぎないことからすれば外観上の一体性はなく,また,共同住宅の場合には各棟ごとで独立した機能を有しており,用途上も可分であるといえるとし,本件建築物は「1の建築物」ではなく,また,用途上不可分な「2以上の建築物」にも該当しないと主張」している点については、「エキスパンション・ジョイントは,構造体を物理的に分離する方法によって力学上応力を加えず,接続する構造同士の構造力学に影響を与えないようにすることを意図してなされる接続方法であること,エキスパンション・ジョイントによる接続方法も今日の建築に多用されているものであることからすれば,上記エキスパンション・ジョイントにより接続された建物同士の構造上の一体性を検討する場合に構造力学上分離されていることのみを根拠としてこれを否定することはできないと解すべきである。」として,エキスパンションジョイントによる構造力学上の分離性をもっても構造上の一体性ありとみることと矛盾しないとしつつ,エントランスについては,「本件低層棟に設置されたサブエントランスは,上記(イ)のとおり,メインエントランスに取って代わるものではなく,あくまでも補助的に配置されたものであるといえる。さらに,証拠(略)によると,本件低層棟3階の渡り廊下には,手すりや階段がコンクリートにより設置されていることは外観上も明らかであって,本件高層棟の屋外庭園に併設して設置される通路に接続するのであるから,渡り廊下や本件高層棟の通路部分に屋根がないことのみから,外観の上で本件高層棟3階と本件低層棟3階部分が接続していることが否定されるものではない。」として排斥した。

2008.03.05

不動産の値下げ販売をした場合の販売者の責任その2

最判平成16年11月18日民集58巻8号2225頁 判時1883号62頁が、値下げ販売の場合に販売者に責任を認め、慰謝料について損害賠償義務を認めたことについて、画期的であるとして紹介したが、これに追随するかのような下級審判例が、公刊物に掲載されていた。先の最高裁判決の事案と異なり、通常の売買の事案のようであり、参考になると思われる。


大阪高判平成19年4月13日判時1986号45頁は、次のとおり、信義則上の販売者に適正価格設定譲渡義務を認め、同義務違反が不法行為にあたるとした。但し、経済的損害は認めず、慰謝料のみ認めた。

(信義則による適正譲渡価格設定販売の義務)
分譲マンションの特性、被控訴人(住宅供給公社)の性格及び本件売買契約の特性等を総合考慮すると、被控訴人には、本件マンションを含む分譲マンション等の売残住戸が生じた場合、完売を急ぐあまり、市場価格の下限を相当下回る廉価でこれを販売すると、当該マンション等の既購入者らに対し、その有する住戸の評価を市場価格よりも一層低下させるなど、既購入者らに損害を被らせるおそれがあるから、信義則上、上記のような事態を避けるため、適正な譲渡価格を設定して販売を実施すべき義務がある。

(信義則上の義務違反)
被控訴人は、前記信義則上の義務に違反し、売残住戸の完売を急ぐあまり、分譲開始から約4年後に、当時の市場価格の下限を10%以上も下回る、当初の分譲予定価格から49.6%値下げした著しく適正を欠く価格で本件マンションを販売したものであるから、その行為には過失があり、不法行為を構成する。

(損害論~経済的損害を否定し、慰謝料認める)
但し、経済的損害については、値下がりが将来にわたって続くとは言いがたいとして認めず、精神的損害についてのみ、本件マンションの購入者である控訴人らは、本件不法行為により、少なくとも、一時的には、その購入した住戸の価格を本来の市場価格以下に低下させられ、多大な精神的苦痛を被ったものと推認することができるとして、その所有ないし共有する住戸の床面積の多寡にかかわらず、一戸あたり100万円の慰謝料を認めた。

2008.02.25

高速道路での自損事故後車外で事故死した場合の搭乗者傷害保険の支払

平成20年2月20日 (財)日弁連交通事故相談センター東京都支部と日本損害保険協会との懇談会があり、その席で、同センター側として、担当のK弁護士がテーマとして出したのが、標記に関する最判平成19年5月29日判例タイムズ1255号183頁の事案であった。

この問題は、自損事故後別の事故で死亡した場合に搭乗者保険から保険金が支払われるかとの問題提起をしてしまうと、最高裁の結論が分からなくなってしまう。自損事故後の路上での死亡が自損事故と相当因果関係があるのかどうか との争点であると考えると最高裁の結論は至極当然と思えるところである。
もっとも、従来の保険実務では、このケースのような場合に必ずしも死亡保険金を給付していなかったとも思われ、搭乗者保険の実務において重要なケースである。

K弁護士の説明は大変わかりやすくレジュメもよくまとまっており、大変勉強になった。


事案は
「  (1) A(以下「A」という。)は,平成14年12月18日午後9時50分ころ,高速自動車国道である東北縦貫自動車道弘前線の上り車線で,普通乗用自動車(以下「本件車両」という。)を運転中,何らかの原因により運転操作を誤って,本件車両を中央分離帯のガードレールに衝突させるなどし,その結果,本件車両は,破損して走行不能になり,走行車線と追越車線とにまたがった状態で停止した(以下,この事故を「本件自損事故」という。)。本件自損事故の現場は,その付近に街路灯等がなく,暗かった。
 Aは,本件自損事故後すぐに本件車両を降り,小走りで走行車線を横切って道路左側の路肩付近に避難したが,その直後に本件車両と道路左側の路肩との間を通過した後続の大型貨物自動車に接触,衝突されて転倒し,更に同車の後方から走行してきた大型貨物自動車によりれき過されて死亡した。
  (2) Aが勤務していた株式会社Bは,被上告人との間で,被上告人を保険者とし,本件車両を被保険自動車とする自家用自動車保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結していた。
 本件保険契約に適用される自家用自動車保険契約普通保険約款には,搭乗者傷害条項(以下「本件搭乗者傷害条項」という。)があり,同条項には,次のような定めがあった。
   ア 被上告人は,被保険者が保険証券記載の自動車(以下「被保険自動車」という。)の運行に起因する急激かつ偶然な外来の事故により身体に傷害を被った場合は,この搭乗者傷害条項及び一般条項に従い,所定の保険金を支払う。
   イ この搭乗者傷害条項において被保険者とは,被保険自動車の正規の乗車装置又は当該装置のある室内(隔壁等により通行できないように仕切られている場所を除く。)に搭乗中の者をいう。
   ウ 被上告人は,被保険者が前記アの傷害を被り,その直接の結果として,事故の発生の日からその日を含めて180日以内に死亡した場合は,被保険者1名ごとの保険証券記載の保険金額の全額を死亡保険金として被保険者の法定相続人に支払う。法定相続人が2名以上である場合は,被上告人は,法定相続人に対し,法定相続分の割合により上記死亡保険金を支払う。
  (3) 本件保険契約において,保険証券記載の死亡保険金の額は被保険者1名につき1000万円とされていた。 」
という例で、Aの相続人が死亡保険金の請求をした。
第一審(仙台地大河原支判平成18年3月9日(認容))と原審(仙台高判平成18年8月30日(棄却))と結論が分かれていたが、

最高裁判所第三小法廷は、
「本件搭乗者傷害条項によれば,「被保険自動車の正規の乗車装置等に搭乗中の者」が被保険者とされており,同条項に基づく死亡保険金は,「被保険者が,被保険自動車の運行に起因する急激かつ偶然な外来の事故(以下「運行起因事故」という。)により身体に傷害を被り,その直接の結果として死亡した場合」に支払われることになっている。
 前記事実関係によれば,Aは,被保険自動車である本件車両を運転中,何らかの原因により運転操作を誤り本件自損事故を起こしたというのであるから,Aは上記死亡保険金の支払事由にいう被保険者に,本件自損事故は運行起因事故にそれぞれ該当することが明らかである。
 そして, 前記事実関係によれば,本件自損事故は,夜間,高速道路において,中央分離帯のガードレールへの衝突等により,本件車両が破損して走行不能になり,走行車線と追越車線とにまたがった状態で停止したというものであるから,Aは,本件自損事故により,本件車両内にとどまっていれば後続車の衝突等により身体の損傷を受けかねない切迫した危険にさらされ,その危険を避けるために車外に避難せざるを得ない状況に置かれたものというべきである。さらに,前記事実関係によれば,後続車にれき過されて死亡するまでのAの避難行動は,避難経路も含めて上記危険にさらされた者の行動として極めて自然なものであったと認められ,上記れき過が本件自損事故と時間的にも場所的にも近接して生じていることから判断しても,Aにおいて上記避難行動とは異なる行動を採ることを期待することはできなかったものというべきである。そうすると,運行起因事故である本件自損事故とAのれき過による死亡との間には相当因果関係があると認められ,Aは運行起因事故である本件自損事故により負傷し,死亡したものと解するのが相当である。
 したがって,Aの死亡は,上記死亡保険金の支払事由にいう「被保険者が,運行起因事故により身体に傷害を被り,その直接の結果として死亡した場合」に該当するというべきである。
 たしかに,Aは後続車に接触,衝突されて転倒し,更にその後続車にれき過されて死亡したものであり,そのれき過等の場所は本件車両の外であって,Aが本件車両に搭乗中に重い傷害を被ったものではないことは明らかであるが,それゆえに上記死亡保険金の支払事由に当たらないと解することは,本件自損事故とAの死亡との間に認められる相当因果関係を無視するものであって,相当ではない。このことは,本件自損事故のように,運行起因事故によって車内にいても車外に出ても等しく身体の損傷を受けかねない切迫した危険が発生した場合,車内にいて負傷すれば保険金の支払を受けることができ,車外に出て負傷すれば保険金の支払を受けられないというのが不合理であることからも,肯定することができる。本件搭乗者傷害条項においては,運行起因事故による被保険者の傷害は,運行起因事故と相当因果関係のある限り被保険者が被保険自動車の搭乗中に被ったものに限定されるものではないと解すべきである。」
として、保険会社の死亡保険金支払義務を認め、原判決を破棄した。


2007.10.16

暴力団組長の使用者責任その2(第三者加害事例)

先に紹介した暴力団組長の使用者責任についての判例に関し、つるまきさんからいただいたコメント中でご案内いただいた東京地裁の判例(平成17年(ワ)第3677号損害賠償請求事件)が、裁判所ホームページに掲載されていた。
先の判例が暴力団同士の抗争事例であるのに対し、この東京地裁の判例は、全くの第三者を殺害した事案について、暴力団の組長の使用者責任を認めたものである。

東京地判平成19年9月20日裁判所ホームページhttp://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071015121121.pdf

日本に語学留学のために滞在していた大韓民国国籍の学生が、指定暴力団の下部組織の構成員らに、その組織の構成員を殺害した犯人であると誤信され、報復及びみせしめとして射殺された事案において、同組織の「総裁」や「会長」の使用者性、本件殺人行為の当該組織の事業執行性を認め、「総裁」及び「会長」に使用者責任を認めた。

2007.10.11

代理母出産と母子関係

代理母出産とは、夫婦が、他の女性に受精卵を移植し、出産してもらうこと。
配偶者間体外受精と非配偶者間体外受精とがある。

大阪高判平成17年5月20日判時1919号107頁(最判平成17年11月24日判例集未搭載は、原審を是認し、特別抗告及び許可抗告を棄却)は、
代理母による出産について、分娩の事実により母子関係の有無を決するという従前の基準は、母子関係の法律関係を客観的事情により明確に決することができるという利点がある等として、生殖補助医療の発展を考慮に入れてもなお維持されるのが相当であるなどとして、卵子を提供した女性とこの卵子とこの女性の夫の精子の提供を受けた代理母から出産した子との母子関係を否定している。

また最決平成19年3月23日裁判所時報1432号4頁は、
民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は,民訴法118条3号にいう公の秩序に反するものとして,我が国において効力を有しないとし、また、女性が自己以外の女性の卵子を用いた生殖補助医療により子を懐胎し出産した場合における出生した子の母は,現行民法の解釈としては,その子を懐胎し出産した女性と解さざるを得ず,卵子を提供した女性との間で母子関係の成立を認めることはできないとしている(タレントの向井亜紀さんとプロレスラー高田延彦さんの事案。)。

(参考)
「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」について
(厚生科学審議会生殖補助医療部会の最終報告書)

2007.10.10

建築の瑕疵と不法行為

建築物の瑕疵に対して、注文主が請負人に対し損害賠償を請求する場合、通常は、瑕疵担保責任の規定による。
しかし、注文主が転売した場合、買主は、請負人とは直接の契約関係には立たないことから、不法行為責任による損害賠償請求を検討せざるを得ないであろう。従来、請負人が不法行為責任を負うのは、加害性が強い場合に限定されていたと解されるが、下記は、居住者の生命・身体・財産の侵害がなされた場合の注意義務違反を認めた例として、重要な判例と理解する。

最判平成19年7月6日裁判所時報1439号2頁・民集61巻5号1769頁
建物を、建築主から購入した者が、当該建物にはひび割れ等の瑕疵があると主張して、建築の設計及び工事監理をした建築士及び施行をした建設工事請負人に対し、損害賠償ないし瑕疵修補償費用の請求をしたところ、設計・施行者等は、契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負うと解するのが相当であり、瑕疵により、居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、不法行為による賠償責任を負うとした例

2007.10.09

内縁関係と被害者側の過失

本年 被害者側の過失に関する新判例が出ているので、紹介する。

「被害者側の過失論」は、古典的には、過失相殺能力のない幼児等が被害者の損害賠償請求案件において、幼児に対する監督義務者の過失(例 目を離した。手をつないでいなかった等。)を被害者側の過失として過失相殺するための技法として論じられていたところと思う(最判昭和34年11月26日民集 13巻12号1573頁参照)。
判例理論は、幼児等に留まらず、「被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にある者の過失、すなわちいわゆる被害者側の過失をも包含するものと解される。」として、身分上、生活関係上、一体をなすとみられる関係にある者の過失をも被害者側の過失として過失相殺を認め、夫婦で同乗中の運転者夫の過失を、相手方と被害者妻との関係で、被害者側の過失として、過失相殺の対象とした(最判昭和51年3月25日民集 30巻2号160頁参照)。
これに対し、「自動車同士の衝突事故による損害賠償額を算定するに当たり、被害者と恋愛関係にある被害自動車運転者の過失を被害者側の過失として斟酌することは、許されないとしていた(最判平成9年9月9日判時 1618号63頁)。
また、職場の同僚の運転について、被害者側の過失とみることについては、これも否定した例がある(最判昭和56年 2月17日判時 996号65頁)。


最判平成19年4月24日判タ1240号118頁は、内縁関係の場合について、被害者側の過失論を適用した。すなわち、「内縁の夫の運転する自動者に同乗中に、第三者の運転する自動車との衝突により、傷害を負った内縁の妻が、第三者に対して損害賠償請求をする場合に、その賠償額を定めるに当たり、内縁の夫の過失を被害者側の過失として考慮することができる。」としたものである。

2007.10.01

超過利息と貸金業法

利息制限法の制限利息を超過する利息について、その元本充当の可否をめぐり、同法制定以来、判例の進化発展がみられた。
近時は、貸金業法によるみなし弁済規定と、利息制限法超出資法未満の高金利(いわゆるグレーゾーン金利)を合意した場合における、元本充当が主要な争点となってきていた。
この点に関し、下記⑤にみるような、画期的な最高裁判所判決があり、これをうけて、貸金業法は改正されて、グレーゾーン金利は撤廃されることとなった。そこで、貸金業法改正に至るまでの、利息制限法の制限利息に反する金利での貸付について、判例・法律の考え方を以下概観する。

①旧判例(後に②で変更される。)
超過利息を残存元本へ充当することは結果においてその返還を受けたと同一の経済的利益を生ずることになるから、利息制限法1条2項、4条2項に照らして許されない(最判昭和37年6月13日民集16巻7号1340頁)。

②判例変更
制限超過の利息、損害金は、利息制限法1条1項、4条1項により無効とされ、その部分の債務は存在しないのであるから、その部分に対する支払は弁済の効力を生じず、債務者が利息、損害金と指定して支払っても、制限超過部分に対する指定は無意味であり、結局制限超過部分は、元本が存在するときは、民法491条によりこれに充当される(最判昭和39年11月18日民集18巻9号1868頁)。

③元本充当の結果過払が生じた場合の処理
利息制限法1条2項、4条2項の規定は元本債権の存在することを当然の前提とするものであり、元本債権が既に弁済によって消滅した場合には、もはや利息、損害金の超過支払ということはあり得ないから、計算上元本が完済となった後に支払われた金額は、債権者の不当利得となる(最判昭43年11月13日民集22巻12号2526頁、最判昭和44年11月25日民集23巻11号2137頁)。

④みなし弁済
  貸金業法43条1項により、利息制限法の制限利率を超過して無効となる弁済であっても、同法17条書面(契約書面)と18条書面(受取書)の交付がなされ、任意になした弁済については、例外的に有効とした。

⑤ 期限の利益喪失条項とみなし弁済
最判平成18年1月13日民集60巻1号1頁 判時1926号17頁ⅰ 貸金業法18条1項により貸金業者が弁済を受けたときに交付すべき書面の記載事項についての内閣府令(貸金業法施行規則15条2項)は、法の委任の範囲を逸脱しており、無効である。
ⅱ 債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の支払を遅滞したときに、当然に期限の利益を失する旨の約定は、利息制限法1条1項の趣旨に反し、無効である。
ⅲ ⅱの約定の下でなされた制限超過部分の支払は、特段の事情がない限り、任意性がない。


⑥貸金業法の改正によるグレーゾーン金利の廃止へ(平成18年12月)。
具体的には、
ⅰ みなし弁済制度の廃止(施行から2年半以内)
ⅱ利息制限法所定の制限利率(15%~20%)と出資法所定の上限利率(20%)の間の金利での貸付けについては、行政処分の対象とする。
ⅲ 日賦貸金業者及び電話担保金融の特例の廃止
など。
金融庁のサイトに改正の概要が掲載されている。


⑦超過利息分の元本充当による不当利得返還請求と悪意の受益者
最判平成19年2月13日判時1926号67頁)貸金業者に対する過払金返還請求の事案で、商行為である貸付に係る債務の弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において、悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は、民法所定の年5分と解するのが相当であるとされた。

2007.09.22

甲乙二つの抵当権が順次設定されていた場合の先順位甲抵当権の消滅と法定地上権成立要件

土地建物が同一人所有者の場合に、その一方にのみ抵当権を設定し、競売によって土地建物の所有者が別人に帰するに至った場合、法定地上権が成立するが、甲抵当権設定時には、土地建物は別人の所有にあり、その後に、同一人に帰した後、乙抵当権が設定された場合で、甲抵当権が消滅後に乙抵当権が実行された場合に、法定地上権が成立するか。

この点につき最高裁判所は、法定地上権の成立を認めた(最判平成19年7月6日金融・商事判例1271号33頁

 民法388条は,土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において,その土地又は建物につき抵当権が設定され,その抵当権の実行により所有者を異にするに至ったときに法定地上権が設定されたものとみなす旨定めており,競売前に消滅していた甲抵当権ではなく,競売により消滅する最先順位の抵当権である乙抵当権の設定時において同一所有者要件が充足していることを法定地上権の成立要件としているものと理解することができる。原判決が引用する前掲平成2年1月22日第二小法廷判決は,競売により消滅する抵当権が複数存在する場合に,その中の最先順位の抵当権の設定時を基準として同一所有者要件の充足性を判断すべきことをいうものであり,競売前に消滅した抵当権をこれと同列に考えることはできない。

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